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[雨P♀]水も滴る

全体公開 1 1928文字
2018-07-06 22:47:31

「お前さん、見過ぎだ」

ずぶ濡れ帰宅彦さんが妖艶に脱ぎながら目線を合わせてきた上に、玄関でタオルに覆われて壁ドンちゅーとかいう性癖の全部盛りみたいなお話です。

Posted by @toasdm

 局地的に豪雨になるでしょう、のニュースを聞きながら、もうなってるよ、と私は笑う。お迎えに行きますか?と連絡はしてみたけれど、もう既に濡れちまったよ、と苦笑いする声は全てを諦めているようで、風呂さえ用意しといてくれりゃいいさ、の言葉を最後に通話は切れた。あれから五分、お風呂を沸かして着替えとタオルを用意して待っていた私の耳に、ガチャ、とドアの開く音が聞こえた。
 「ああ、酷いな」
 「ほんとに酷いことになってる!」
 小走りで玄関に向かった私の目の前で、全身ずぶ濡れの雨彦さんは玄関をあっという間に水たまりへと変えてしまう。ぽたぽたなんてかわいいものじゃない、だばだばと雨の雫を垂らして、すぐお風呂に入らなければ風邪を引かせてしまいそうだ。玄関脇の脱衣所からタオルを持ち出して、私はそれを雨彦さんに手渡そうと、した、んだけど……
 「はぁ……脱ぐのも一苦労だな、こりゃ……
 すっかり濡れてワックスの落ちた前髪をざっとかきあげて後ろへ撫で付ける仕草。そこから伝い落ちる雫を拭おうともせず、つなぎのジッパーを下げる音と、ベルトを外すカチャカチャという音。うまく外れずにチッと舌打ちをしてまずはブーツかい、と、片足を上げて膝につけて、壁に手をついて支えながら身を屈めて紐を解く指先。屈めた時に濡れた重みで下がるインナーから覗く逞しい胸板。
 水も滴るいい男、なんて言葉もあるけれど、そうでなくてもいい男な雨彦さんが水を滴らせている目の前の光景は、正直、こう……目のやり場に、困りすぎて。右足のブーツの紐を解いた雨彦さんが、ん?と顔を上げてこちらを見るまで私は、多分、ものすごい顔でガン見してしまっていたんだと思う。目が合った雨彦さんはフッと笑って、垂れてきた前髪をまた無造作にかきあげて言う。
 「お前さん、見過ぎだ」
 左足も同じように曲げて膝の上に乗せて安定させながらブーツの紐を解いて、今度は多分わざと、胸板を見せ付けるようにさっきよりも深く身を屈めて、雨彦さんはブーツを脱いだ。靴下も濡れちまった、と無造作にそれを脱ぎ捨てて、雨彦さんは身を起こす。にやり、口元を歪めた雨彦さんはわかりきったような口調でにやついている。
 「そんなに俺が好きかい?」
 「う……
 好き、だけど。好きに決まっているけれど。色気の塊が目の前でつなぎの上をはだけている。目を逸らすなよ、と合わせたままの視線が無言で私を絡めとりそのままゆっくりと、インナーシャツの裾を掴んで、クロスした腕で見せ付けるように脱いでいる。シャツの鮮やかな赤の下、白くしっかりとバランスよくついた筋肉で引き締まったその胸板の感触を、私は知っている。よく、知っている。好き。雨彦さんが好き。雨彦さんの体つきが好き。なんて正直に言ったら、きっとものすごく笑われるんだと思う。
 「お前さん、そんなに俺の体が好きなのかい?」
 「う、あぅ……
 思いっきり、バレている。にやついたまま雨彦さんは脱いだシャツをその場で絞り、玄関に水たまりを追加する。洗濯機、入れといてくれよ、と放り投げられた絞ったシャツを慌てて受け止めた私に手を差し出して、タオルくれよ、と雨彦さんは笑っている。風邪ひかないでくださいね、とタオルを渡した私の手首が急に強く掴まれて引っ張られて、気がつけば、私の体は雨彦さんの冷えた腕の中に閉じ込められる。
 「うわ冷た……っ」
 「あぁ、お前さんは温いな」
 ぎゅう、と私を抱きしめながら温もりを略奪していく雨彦さんは、ふかふかのタオルをばさっとふるって広げて、濡れた髪の毛と私の体を包むようにして被る。バランスを崩して壁に背中をつけた私の頭の上で壁に肘から先をついて、雨彦さんの顔はタオルの中で私を見下ろして、迫る。剥き出しの上半身、はら、と崩れて垂れてきた前髪からぽたりと雫を一滴落として、雨彦さんはとんでもなく妖艶に微笑んでいる。

 「あんまりじっと見られると、照れちまうんだがな」

 そんなの絶対に嘘だ!だって見せ付けてたじゃないですか!と、本当は、言いたかったのに。
 視線と温もりを奪うだけでは足りなかったんだろうか、雨彦さんはそのまま、冷えた唇で真上から、私の唇を塞いでキスを落としてくる。唇と呼吸と言葉まで奪われて、心は最初から、雨彦さんだけのもので私は、もうこれ以上ないくらいに全てを、雨彦さんに奪われる。角度を変えて幾度となく降ってくるキスの雨を全身に浴びながら、私はぼんやりと、ドアの向こうの激しい雨音を聞いていた。
 耳だけはまだ、雨彦さんに奪われてはいなかった。……きっと、時間の問題だろうけど。私は諦めて目を閉じて、激しいキスを受け止め続けた。


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