Stargazers〜水の恵み Part.7〜

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2018-07-07 13:04:20

煌めく星に願いを託して。
白司書ラブストーリー、第7話。

Posted by @natsu_luv

梅雨がじめじめとした空気と共に去って行った。
うだるような暑さが続き、太陽が満面の笑みで燦々と輝いている。
大学から帰ってきた私は、中庭の泉の水に足をつけて涼んでいた。
暑い日が続くと、身体が渇いてしまうから水に触れる機会を多くしている。
この日も汗ばむような陽気だった。
畑には夏野菜が実り、木々たちの緑が濃くなった。
近いうちに蝉時雨も流れることだろう。
水と戯れていると、図書館の方から耳馴染みのある声が聞こえてきた。

「君も相変わらずだね。食堂にアイスがあるようだから、一緒に食べないかい?」
「あっ、白秋先生! すぐに行くね」
「わかった。早く来たまえよ」

急いでストッキングと靴を履いて、食堂へと足を運んだ。
食堂の扉を開けると、アイスでひと息ついている文豪たちがいた。
クーラーボックスの中を覗くと、様々な種類のアイスが入っているのが見えた。
白桃のアイスを手に取り、私は白秋先生の元へ向かった。
暑い日に食べるアイスは至福の時を運んでくれる。
今年は白秋先生と大好きな時間を共有できる。
そのことが何より嬉しい。

「白秋先生、お待たせ!」
「先に頂いているよ。ところで、君はどのアイスを選んだんだい?」
「白桃のアイスだよ。白秋先生はやっぱり林檎なの?」
「ご名答。僕には林檎が一番さ」

白秋先生は幸せそうな顔でアイスを口にしていた。
私もアイスを口にしてみる。
瑞々しい白桃の甘さが口いっぱいに広がって美味しい。
白秋先生にひと口交換したいと言われた。
私達はアイスを掬って、互いの口に運んだ。
林檎のアイスも優しい甘さがする。

「えへへ、美味しい」
「幸せそうな顔をしているね。その顔を見るだけで安心できるよ」

白秋先生がそっと私の頭を撫でて、甘く優しい声で言った。
食堂に大きな笹が置かれている。
もうすぐ七夕だ。
ふと、七夕当日に開架図書エリアでイベントがあることを思い出した。
当日のイベントは来館者の方に短冊を書いてもらい、子供たちは織姫と彦星と記念撮影ができるという内容だ。
織姫役は決まっていたけれど、彦星役がまだ見つかっていない。
そのことを話していると、近くで苺のアイスを食べていた啄木くんが食いついてきた。

「なんだ、金になる仕事か⁉︎」
「うん、ちゃんと手当は出るよ」
「その仕事、俺様に任せてくれよ! こう見えても、子供たちの相手は得意だぜ」
「じゃあ、お任せしちゃおうかな」
「ありがとな! 俺様だけで心配なら、そこにいる高村大先生も呼んでいいぜ」
「えっ、僕もかい⁉︎ わかったよ」

啄木くんに名指しされて、キャラメルリボンのアイスを食べていた高村先生が驚きの声を上げた。
無事に彦星役も決まり、イベントの準備もほとんど整いそうだ。
そろそろ、開架図書エリアに行かないといけない時間だ。
啄木くんと高村先生に当日の流れを書いた資料を手渡し、私はイベントの準備を手伝いに行った。

七夕当日になった。
天気も快晴、青空を背景に太陽がにっこりと笑っている。
開架図書エリアは家族連れの来館者たちで大盛況だ。
私は笹に短冊を飾り付ける仕事をしている。
啄木くんも高村先生も子供たちに大人気だ。
女の子たちがみんな夢中になっていた。
ふたりの様子を眺めながら、私は短冊をひたすら飾っていた。
すると、父が図書館にやって来た。

「歩美、お疲れ様。大盛況だね」
「お父さん、資料探しに来たの?」
「そうだよ。ついでに、七夕の催し物も見に行こうかと思ったんだ」
「そうなんだ。楽しんで行ってね」
「わかった。歩美も身体には気をつけるんだよ」

そう言って、父は専門書フロアへ続く階段を昇っていった。
私は他の職員と交替して、食堂へ休憩に行った。
食堂に置かれていた笹にも、短冊が綺麗に飾り付けられていた。
笹の葉の近くに白秋先生がいた。
いつもの衣装とは違う、白い着物と青い袴を身にまとっていた。
昼食を済ませ、私は白秋先生の近くへ行った。

「お疲れ様。開架図書エリアは大盛況のようだね」
「そうだね。大変だけど、来館者さんも楽しんでくれてて良かったよ」
「そうだ。催し物が終わったら、中庭に来たまえ。一緒に星を眺めようじゃないか」
「うん、そうする! またね、白秋先生」

白秋先生と約束を交わして、私は開架図書エリアへ戻った。
午後も来館者たちで賑わっている。
啄木くんと高村先生に集まっている女の子たちも後を絶たない。
気付けば、時計の針が十九時を指していた。
最後の来館者を見送り、私達は片付けに取り掛かった。
片付けを終わらせた私は、白秋先生が待つ中庭へと向かった。

中庭にたどり着くと、短冊で飾り付けられた笹が立っていた。
この前見た時と違って、短冊以外の飾りも取り付けられている。
笹の近くで白秋先生が星空を眺めていた。
宝石のような星々が、真っ黒なキャンバスに散りばめられている。
慈愛に満ちた瞳で空を眺める白秋先生。
その姿は星をも撃ち落とすかのような美しさを魅せていた。

「満天の星空だね。短冊が星々に呼応しているようだ」
「綺麗……。白秋先生と一緒に見られて良かったよ」
「おや、君の短冊だね。ふむ、僕らと幸せな日々を過ごしたい……か」
「白秋先生……?」
「君の願いはすぐに叶うよ」

私の短冊を見た白秋先生が微笑んだ。
少年のような屈託のない笑みが、私の心を和ませてくれる。
先生はそっと私を抱き寄せ、口付けを落とした。
星空に託した私の願いは叶う。
星たちが私達を祝うかのように瞬いているから。
そして、白秋先生がそばにいるから。


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