@acbh_dmc4
「エツィオ、マキャベリから便りが来た。3日後こちらに来てくれるらしい」
「マキャベリ様が」
「ああ、これで協力を仰げれば、向こうの世界にも戻れる」
「……あの、もしここのマキャベリ様が俺たちの世界の彼と違ったらどうするのです?」
「……その時は、もう私達はここの世界で生きるしかないだろうな」
几帳面なマキャベリの文字を目で辿りながら、不安そうにする妻に告げる。
気休めを言ったところで、仕方がない。
だが希望はあった。
このマキャベリから届いた便りは、私達の世界の彼とそう離れてはいない。
もし彼が協力してくれるのならば、向こうのヴァンピーロが改心しているか確認する事が出来る。
マキャベリには苦労ばかりかけるなと苦笑すれば、エツィオはそんな私を見て、朗らかに笑った。
「でも、貴方もエツィオもここに居るのです。それなら俺はどの世界に居ようと構いません」
「エツィオ…お前にも苦労ばかりかける…」
「いいえ、苦労だなんて。貴方が居れば何も要らないのです」
妻の言葉に胸が熱くなり抱きしめれば、彼は美しく笑った。
嗚呼…彼と共に在れるなら、どんな世界だって楽園となる。
「私達のエツィオには、寂しい思いをさせてしまうな…レオナルドと、とても仲が良かったし…
あの子の初めての友達だ…」
「この世界にもレオナルドは居ないのでしょうか?」
「うむ…ユリウスに聞いてみるかな」
エツィオが彼の膝で大人しく寝息を立てている息子の頭を撫でながら微笑む。
こうして親子3人で居られる事が幸せだ。
とても裕福とはいえないここでの生活も、家族が居れば乗り越えられる。
息子のふっくらとした柔らかな頬を撫でる。
***
「ご足労頂きすまない。こちらからはなかなか動けなかったのでな」
「いいえ。貴方の噂は流れてきていましたし、この手紙に書いている事も…私が管理する書簡に件のものが確かにありました。数年前に夜盗にあいまして。行方が分からなくなっていたのです。得体の知れない魔力を発していたため探していました」
「お前の協力を得たい。こちらへ。暫し寛いでくれ」
マキャベリを迎え、妻と子を呼んで話をする。
息子が人懐っこく駆け寄り、いつものようにマキャベリの足に抱き付いた。
慌てて息子を下がらせてから自己紹介をさせる。
「息子だ。エツィオ、こちらのマキャベリはお前に初めて会うのだ。ご挨拶をしなさい」
「そうなの?わかりました!はじめまして、おれはエツィオ・アウディトーレともうします。いごおみしりおきを」
最近覚えたばかりの挨拶は、息子のお気に入りだった。
お行儀良く一礼し自己紹介をする。
その姿にマキャベリは感心して笑顔を見せた。
「私はベルナルド・ディ・ニッコロ・マキャベリです宜しく。随分としっかりされているのですね」
「おれね、ちちうえのおしごとのお手伝いもしてるんだよ!ははうえもいっしょにがんばってるの!」
「そうですか。偉いのですね。…しかしヴァンピーロの子供とは…話には聞いた事がありましたが」
「ああ、運よく子を儲ける事が出来た」
マキャベリが興味深く私や家族を観察する。
ヴァンピーロの家族というのは非常に珍しいため無理も無い。
一先ずは手紙でも彼には説明していたが、私の素性を話す。
それと一緒に小瓶につめておいた私の血をテーブルに置き、マキャベリに渡す。
「それは私の血だ。それを飲めば私の言っている事の裏づけとなるだろう」
「良いのですか。血を飲まれるということは繋がりを持つということです。貴方の弱点を知ることになる」
「構わん。私はお前を信用しているし、そもそも弱点を知られたところで、私は最強のヴァンピーロなのでな。実際敵うものは居ないだろう」
「…では」
マキャベリは一息に血を煽ると、目を瞑り血の記憶に集中して、一拍を置いて私に視線を戻した。
「……私としては貴方にずっとここに居てもらいたい」
「幸いにもこの世界の他の者達にも同じことを言ってもらえた。有難い事だが、私も向こうでの立場がある」
「正直に申しますと、私はあの男がまたこの世界に戻る事には反対です。どうしたってあの男が矯正されるとは思えません」
「しかし、向こうで手を尽くしている筈だ。何かしら変化があれば、連絡を取ることになっている」
「ほう?どう連絡を取るのですか?」
マキャベリがきつく問いただす。
少々不安を感じたが、彼の前に時空を超える本を差し出した。
「この本を通じて話が出来る」
「……私がこの本を、今すぐ破り捨てるとは思わないのですか」
「君は聡明で思慮深い男だ。確認もせず、安易な行動をとるとは思わない」
マキャベリが一つ溜息をついて目を閉じる。
次いで、本を見下ろすとその本を手に取った。
「どうやって話すのかお聞きしても?」
「ああ。そう難しい事ではない。この本を開き、念じるだけだ。この本を開いた先に、向うのマキャベリが同じように本を開いていれば、それで話が出来る」
パラパラと本を