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[雨P♀]俺色に染まるな

全体公開 3 2118文字
2018-07-19 12:28:42

「俺色に染まれよ、とか、言った方がいいのかい?」

雨彦さん好みになりたいPさんと、Pさんが可愛過ぎてガチ照れして轟沈する雨彦さんのお話です。

Posted by @toasdm

 今日はタイトのミニスカートか……。玄関の壁に手をついてブーツの紐を解きながら雨彦は、出迎えにきた彼女の姿をちらりと見て、内心そう呟いた。確か昨日はワンピースで、その前は足首まであるエキゾチックな印象のスカートだったか。雨彦の覚えている限り、今日でちょうど一週間になるだろうか。彼女の『おかえりなさい』の出で立ちが、普段と違うようになったのは。
 そもそも、そのままなら別に雨彦も、思うところは特になかったのだ。ああ、女の服ってのはいいもんだな、種類が豊富だ、としか、思わなかったはずなのだ。雨彦の頭に疑問符が浮かぶことになった理由は、『おかえりなさい』の後で彼女が、少し複雑な顔をして、またいつものラフでシンプルな格好に着替えてしまうからに他ならない。つまり、今日の、雨彦好みのタイトミニも、玄関でしか拝めないということになってしまう。晒された太ももをちらちらと見ながら、雨彦はブーツの紐を解いて彼女に聞いてみることにした。
「お前さんはファッションモデルにでもなるつもりなのかい?」
「なんですか藪から棒に」
 ヒールを器用に引っ掛けて片足を脱いだ雨彦は、もう片方のブーツの紐も解きにかかる。怪訝そうな顔の彼女に、雨彦は続けた。
「ここんとこずっと、色んな服着てたろう?」
……やっぱり気付きますよね」
「そりゃあな」
 当然だろうと苦笑しながらブーツを脱いで、上がる。上から包み込むように抱きしめて、ただいま、と改めて雨彦は彼女に言う。お前さんの匂いは落ち着くな、と溜め息をついて、その時耳元で小さく漏れて聞こえる、ん、という雨彦の音が、彼女はたまらなく好きだ。おかえりなさい、とそれに応えて抱きついた彼女の充実した尻を、雨彦は一度だけさわりと撫でた。
「んぁあっ!? あ、雨彦さんのえっち!」
「男なんてみんなこんなもんだぜ」
 いい尻だ、と笑う雨彦は改めて彼女に問う。なんだってお前さんはそんなにお色直しをしてたんだい?と。はぁ、とため息をついて、彼女は雨彦から離れて一歩引いた。
「きょ、今日の格好は、どうですか……?」
「うん? どう、ってのは、どういうことだい?」
 もじもじと、視線は泳ぐ。質問の意図がつかみきれない雨彦は、そんな彼女の様子に首をひねりながら、またまじまじと彼女を見つめた。雨彦は、彼女の丸い尻が好きだ。
「その……今日は、セクシーめでいってみたんですけど……
「ああ、たまらんな。いい。全体的にいい、最高だ」
……うぅ」
 恥ずかしがるなら何故そんな格好をしたんだ、と苦笑して、雨彦は壁にもたれて腕を組みながら彼女の話を聞いていた。
「き、昨日のお嬢様系ワンピは」
「あれもよかったな、お前さん、何を着ても似合うんだな」
「むぅぅー……
 そしてまた、複雑そうな表情をみせる彼女の意図は、雨彦にはまだ掴めない。訝しげな雨彦の視線に、意を決したように彼女は尋ねた。
「雨彦さんの好みを教えてください!」
……は?」
「雨彦さん、何が好きなんですか? どういうのが好きなんですか、私」
 恥ずかしさに伏せていた顔をおずおずと上げ、彼女は雨彦を上目遣いに見上げて顔を赤らめてぽつりと呟いた。

「私、雨彦さん好みに、なりたい…………

 壁にもたれた背中をつけたまま、雨彦はずるずるとその場に沈んだ。あーー、と天を仰いで額に手を当てて呻きながら沈んだ雨彦は、床に体育座りの状態で軟着陸して、そのまま膝を抱えて顔を埋めた。何が起こっているのかわけもわからず立ち尽くした彼女が、あの、と声をかけるも、雨彦はただただ唸りながら、少し待て、待ってくれ頼む、と言うばかりだ。仕方なく彼女は、うずくまる雨彦の隣にちょこんと座って、言われたとおりにじっと待った。お前さんなあ、とくぐもった声、ちら、と彼女の方へ顔を向けた雨彦は未だ、額を膝につけたままだ。
「お前さん、それは、あれかい? ……俺色に染めてくれ、ってことかい?」
 影になってはっきりとはわからないが、恐らく顔は赤いのだろう。その証拠に雨彦の耳は、ぽっと鮮やかに朱に染まっている。真っ赤になった雨彦の口から飛び出した言葉は、そのまま赤さを彼女に移した。顔から火が出そうなほど真っ赤になってしまった彼女の返事も待たずに雨彦は、無理だ、可愛い、とまた膝に顔を埋めて呻いている。
「俺色に染まれよ、とか、言った方がいいのかい?」
「う、ぁ、そういうのじゃなく……
 絶対に言ってやらん、とそこだけは力強く言ったものの、雨彦は彼女に、聞こえるか聞こえないかほどに小さな声でぼそぼそと言った。
――俺はお前さんがお前さんだから好きになったんだぜ……? 今更俺色に染まる必要なんてないだろう……そのままでいてくれよ、なぁ……
 なんですか?と聞き返した彼女にもう一度、今度は力強くというよりは、照れ笑いで誤魔化しながら、雨彦はニッと笑って言った。

 「絶対に、言ってやらん」

 俺はそういうのに弱いらしい、と腹に恥じらいを押し込めて、雨彦はそのまま、しばらくの間玄関でうずくまっていた。次の日から彼女の出迎えは、普段どおりのシンプルな服に戻った。


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