@satomi8429
借り物の乳鉢はすっかり抹茶色に染まり、窓辺に干した薬草とともに青い匂いを放っている。首を左右に曲げると、鈍い嫌な音がして軫宿は顔をしかめた。窓の外はいつのまにかすっかり暮れ、半分欠けた月が白い光を投げている。
皆どうしているだろう。鬼宿と美朱はまだ着かないのだろうか。
灯りを手に隣の書庫の扉を開けると、本に埋もれて倒れている少年の姿が目に飛び込んだ。
胸郭の上下が早い。
「張宿」
白い頬を包むように触れる。熱くはない。
「あ、大丈夫です、ちょっとくらっときて…」
四肢の感覚と可動を確認し、ひとまず胸を撫で下ろす。
「根詰めて読みすぎたかもしれません」
「疲れが出たんだろう、もう今日は休め」
「はい、おやすみなさい」
するする入ってくるからついのめりこんじゃって、と小さく言い訳する少年を寝床に押し込み、部屋を出た。
井宿と翼宿は大丈夫だろうか。
食堂のほうへと歩きながら、なんだか今日は視界が揺れるな、とぼんやり思った。