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59.仲が良すぎる人達(遊城海)

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2018-07-30 12:01:32

※幼馴染パラレル

・遊戯、城之内、海馬の三人は幼馴染。
・恋愛感情は微塵もないが、物凄く仲良し。
・海馬は最初から海馬で剛三郎の実子。兄乃亜がいる。

以上の設定を頭に入れてどうぞ。

「えっ、海馬くん童実野高校に入るの?!そのまま高等部に行くんじゃないの?!」
「っつーか大学までエスカレーター式じゃねぇのあそこ。なんでわざわざ横道逸れるかな」
「煩いな。オレの進路をオレがどうしようと勝手だろうが」

 そう言って、海馬は遊戯の持っていたペットボトルを勝手に奪い取り、一口飲んだ。夏休みの初日。三人は示し合わせてカードを買いに行き、その帰りにそれぞれの家の丁度中間に位置する公園に立ち寄っていた。今年は連日の猛暑で朝でも気温が下がらずに早い時間にも関わらず蒸し暑い。

「あーーー!!今日も全滅だー!!クソカードしかねぇ!オレの運の良さはどこに行っちまったんだ?!」
「期末テストで赤点を回避して使い果たしたのではないか?」
「ボクも駄目だった。海馬くんはどうだった?」
「可もなく不可もなく、と言ったところか。レアリティが高くはないが欲しかったカードが入っていた」
「いらないカードくれよ」
「断る。どうでもいいがゴミを捨ててこい」
「へいへい。傷心の克也くんにガリガリ君奢ってくれる気ない?」
「まぁいいだろう。三人分買って来い」

 涼しい木陰の下にあるベンチに陣取って購入したパックを早速開封し悲喜交交の悲鳴を上げていた三人は、結果が良くなくやや不貞腐れ気味の城之内の離脱をきっかけに途端に静かになる。だが、近くの木の上で煩いほどの蝉の鳴き声が響いていて、少しの沈黙は気にならなかった。遊戯はいつの間にか底にしかなくなったミネラルウォーターを飲み干すとゴミ箱に放り、隣に座る海馬に改めて先程の話を持ち出した。

「ね、さっきの話。学校変えるって本当?」
「ああ。先日の面談で話しておいた」
「……お父さんに怒られなかったの?だって海馬くんの家は皆尾瀬呂学院なんでしょ?乃亜だって行ってるじゃない」
「色々言われたが別にどうって事はない。オレは強制されると余計に行きたくなくなる性分でな」
「うーん……でもどうして童実野校なの?海馬くんならもっと頭のいい高校行けるじゃない」
「知り合いがいた方が面白いだろうが」
「え?知り合い?」
「貴様らの頭ではどうせ童実野ぐらいしか行くところがないだろうが。だからオレが合わせてやろうというのだ。感謝するのだな」
「えぇ?!……もしかして、海馬くんはボク達と同じ高校に行きたかったから尾瀬呂をやめちゃうの?!」
「順番が逆だ。尾瀬呂に通いたくないから別の高校を選び、どうせなら貴様らが行くところに行こうと思っただけだ」

 ふふん、と得意そうな笑みを見せながらそう言い切った海馬に、遊戯は驚きと同時に例えようもない嬉しさを感じていた。城之内も入れて幼い頃から近所のよしみで共に行動してきた三人だったが、海馬だけは家の方針から幼稚舎から尾瀬呂学院という幼稚舎から大学までの一貫教育を売りとしている有名私立に通っていたので学校生活では共にいられなかったのだ。

 その事に海馬の方も思う事があったのだろう。城之内と遊戯が連れ立って登下校する様をどこか恨めしそうに送迎の車の中から見つめていたのを遊戯は知っていた。城之内も多分気づいていただろう。『あいつも同じ学校に通えたら楽しいのにな』という台詞をもう何度聞いたか分からない。

 家庭環境も性格も頭のレベルも全く違う三人だったが何故か不思議なバランスで調和していて、この年まで離れる事なく共に過ごしてきた。高校生になれば少しは関係に変化が出てくるだろうと思っていたが、どうやらこれまでよりも親密になりそうな気配だ。尤も、それは遊戯にとって嬉しいばかりで憂う事など全くなかったのだが。

「そっかぁ。嬉しいなぁ。やっと海馬くんとも一緒に学校に行けるようになるんだね」
「しかし、貴様らはちゃんと童実野に入れるんだろうな。目下の心配どころはそこなのだが」
「えっ」
「貴様はまぁいいとして、城之内はどうなのだ。大丈夫なのか?」
「……うーん、微妙かも」
「奴の事だから勿論塾にも行かないのだろうな」
「今塾ってすっごく高いからね……ボクも夏季講習だけだよ。ついていけるか心配だなぁ」

 今日もこれから塾なんだ、と余り気乗りしない顔で呟く遊戯に、海馬は少しだけ呆れた溜息を吐くと「仕方がない」と重々しく首を振った。

「オレがフォローしてやろう。二人纏めて面倒をみてやる」
「えっ、ほんと?!宿題も教えてくれる?!」
「それは毎年の事だろうが。まぁ、時間がある限りは付き合ってやらんでもない」
「ありがとう~すっごく助かる!海馬くんが教えてくれたら受験もバッチリだよ!城之内くんも喜ぶよ!」
「どうでもいいが、奴はたかだかアイスを買うのに何時間かかっているのだ」
「城之内くんは凄い慎重なんだよ。多分ソーダ味とコーラ味で迷ってると思う」
「……下らない事この上ないな」
「様子見にいこっか。ここよりお店の中の方が涼しいし」

 今年はずっと受験勉強で嫌だなぁと思ってたけど、海馬くんが付き合ってくれるなら凄く楽しくなりそう!屈託のない笑顔と共にそう声を上げた幼馴染の顔を眺めながら、海馬はほんのわずかに微笑んで、汗ばんだその手を掴んで先に立って歩き出した。道路を挟んで向かいにあるコンビニの中には真剣な顔をしてアイスケースの中を覗き込んでいる城之内がいる。

「海馬くん、日焼け止め何使ってる?凄い良い匂いがする」

 一瞬立ち止まりそんな事を言った遊戯に海馬は「コンビニでも売っている」と言いながら自動ドアを潜り抜けた。

 今年もまた長い夏休みが始まるのだ。


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ちり
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