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[想P♀]あ~~~~~

全体公開 1670文字
2018-07-31 12:41:23

「あ~~~~~~~……

扇風機の前で「あ~~~~~~~……」ってする想楽君とPさんの夏のじゃれあい。

Posted by @toasdm

 胡坐をかいて床にべたりと腰を下ろし、両手を前についた前のめりの姿勢のまま、想楽は顎を上げて目を閉じている。
「あ~~~~~~~……
 扇風機の前にいる人間は皆一度はやったことがあるだろう、奇妙なビブラートのかかる声は気だるい調子で、汗で張り付く前髪の束は、扇風機が巻き起こす風と揺れる声を想楽の後ろへと流していった。
「ずっとあたってると疲れちゃいますよ」
「だって~~~~……暑い~~~~~~……
 くすくすと笑う彼女の方を振り向きもせず、想楽は首筋を伝う汗を扇風機で吹き飛ばすようにずっと、へばりついている。実際、疲れはするのだが、このうだるような暑さを少しでも緩和できるなら、と扇風機を独占する想楽に、彼女は麦茶を差し出した。
「ミネラルと水分、補給してくださいね」
「ん~~~~~~~……
 ガラスのコップに注がれた薄茶色の中に、氷がキラキラと浮いている。受け取ってそれを額の上に乗せ、底から結露の雫が伝って汗と混じる。気持ちい~~~……と目を細める想楽の隣にぺたんと座り、彼女も麦茶で涼をとる。
「はぁ……もー暑くてやだなー……
「そうですねぇ……
「プロデューサーさ~~~~~~~~ん」
 扇風機に向かって、想楽は彼女を呼ぶ。ビブラートのかかる声がおかしくてふきだしそうになる彼女は麦茶を床に置くと、想楽に身を寄せて扇風機の前に顔を出す。風がふわふわと髪の毛を揺らし、これは確かに独占したくなる気持ちよさだ、と目を細めながら息を吸い込んだ。
「想楽さ~~~~~~~~~~~~~ん」
「プロデュ~サ~~~さ~~~~~~~ん」
 第一回、扇風機前ベストポジション争奪戦、開始。にまりと笑う想楽が扇風機の首振りスイッチをオンにする。
「あ~~~つ~~~い~~~~~~」
「想楽さんどけて~~~~~~~」
「や~~~だ~~~~~~」
 やがてビブラートが笑いに変わり、とうとう二人は抱き合ったまま、扇風機の前でごろんと床に倒れこむ。くすくすと笑いながら互いの前髪を払いのけて、汗だくの額にそれぞれ優しく、唇を押し当てる。
「どうしてもさー、扇風機の前だと、あーーーってやっちゃうよねー……
「ふふふ、そうですね……夏の風物詩ですから……
 倒れこんだ二人の上を、扇風機がかき回したぬるい風が通り抜けていく。蝉時雨と風鈴と、あとはごうごうと鳴る扇風機の羽の音。凝縮された夏模様が、二人と共に部屋にある。
「そういえば、どうして扇風機の前であーーってやると変な声になるんでしょうね?」
「うんとねー、扇風機の羽に当たってこっちに跳ね返ってくる音と、向こう側に抜けてっちゃう音の二種類が同時に聞こえるからだよー」
「そうなんですか……?!」
 するりと出てきた知識に、彼女ははっとして思わず身を起こす。そんな意外そうな目で見ないでよねー、と床に転がったままの想楽は、身を起こしたばかりの彼女の腕をぐいと引き寄せて、自分の胸の上に彼女の頭を乗せて、抱きしめる。
「僕一応現役の学生なんだけどねー」
「専門外かと思ってました……
「こう見えて知識欲は豊富なんだよー」
 胸板越しに振動として伝わる想楽の声は、いつもより低く彼女を包む。鼓動がシンクロする居心地のよさと、男らしさに高鳴る胸の落ち着かなさに、彼女は自分の顔が熱くなるのを感じて想楽のシャツをぎゅっと掴んだ。
「暑いなー……
「暑いなら、くっつかなくても」
「やーだー」
 僕がこうしてたいのー、とさらに強く抱きしめられて、彼女はますますいたたまれなくなる。ひぇ、と小さな悲鳴が聞こえて、可愛いなーと想楽は胸の上の彼女を撫で付ける。
「うぅぅ……
「恥ずかしくて、余計あつくなっちゃったー?」
 わかってるなら聞かないでください、と真っ赤になって文句を言う彼女をぎゅうと抱きしめて、想楽は足を伸ばして扇風機のスイッチをちょんちょんと突く。強になった扇風機はしばらくの間、二人の熱を黙ってかき回し続けた。
 麦茶がすっかりぬるくなるまで、二人はずっと、そうしていた。


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