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[雨P♀]あーん

全体公開 1530文字
2018-08-19 17:05:52

「お疲れさん。さて、お前さんを最大限に甘やかす準備ができたぜ?」

お疲れ帰宅のPさんを雨彦さんが優しく最大限にニヤニヤしながら甘やかしてくれるお話です。

Posted by @toasdm

 雨彦さんは私を甘やかすのが本当に上手だ。今から帰ります、の電話の声が疲れてたみたいだったからな、と冷蔵庫からプリンを取り出したときのニッと笑った顔を見て、私はそう再認識した。シックな黒い陶器の器に入ったプリンはよく冷えていて、それを私の頬にちょん、とくっつけると、雨彦さんは床に胡坐をかいて座った。
「お疲れさん。さて、お前さんを最大限に甘やかす準備ができたぜ?」
「最大限に、甘やかす……?」
 なんのことだろう?と首を傾げる私を見上げて、雨彦さんはぽんぽん、と膝を軽く叩いて私を誘う。要するに、そこに座れと、言うこと……かな?雨彦さんによる最大限の甘やかしは、雨彦さんのお膝からスタートした。
「お前さんの座椅子になってやろう」
「硬い座椅子ですね……
「かたいこと言うなよ」
「うまいこと言わないでください」
「はは」
「ふふふ……
 軽口の応酬が、がちがちに固まってあちこちにこびりついてしまったような疲れをじゅわっと溶かしていくような感覚に、私は目を細めた。落ち着くなぁ、と漏れた本音と溜め息に、背中の雨彦さんがぎゅうっと私を抱きしめて笑ってくれて、その温かさが本当に嬉しくて、たまらなくなる。
「今日も一日、本当にお疲れさん」
「ん……ありがとうございます」
 肩から前にぐるりと回された、筋肉質で逞しい腕にそっと手を添えると、触れたそこから感じられる雨彦さんの存在感が愛おしくなる。目を閉じて、二の腕に頬ずりをして、私は漸く私に戻って、雨彦さんに甘え始めた。
「お前さん、プリンは好きかい?」
「プリン! 大好きです!」
「えらい食いつきだな。疲れた時にはこういう甘やかしも必要かと思ってな」
 言って雨彦さんはテーブルの上においてあった、さっき冷蔵庫から取り出したばかりのプリンの容器を開ける。
「最大限に甘やかすんだったら、な?」
「?!」
 そしてそのまま、スプーンでプリンを掬うと私の口元に、持ってくる。いわゆるその、あーん、ってやつで。
「ほら、あーん」
「!!」
 二人羽織モードでは口元が見えなかったのか、左側からぐるりと顔を回りこませるようにして、雨彦さんは私の方をじっとみつめて、あーん、とプリンを差し出している。これは、これは本気で、本気で恥ずかしいけど!!
「食わないのかい?」
「あ、あぅっ」
「しょうがないな、お前さんは」
「あ」
 にやり、ちょっとだけ悪そうな微笑を浮かべた雨彦さんはスプーンをそのまま自分の口に放り込むと、覗き込んできた顔をそのまま、私の唇に、押し付けて――
「んっ……
「んんっっ!!」
 すぐに、だったから。プリンはまだ、冷たくて。急に、だったから。目を閉じる暇も、全然なくて。目の前で、睫を伏せてちらりと流し目気味にこっちの様子を窺う雨彦さんが、すごくセクシーで、綺麗で。体が一気に熱くなった気がして。
 口の中で、プリンが、とろけた。
……結構、うまいな」
「うぅ……
 恥ずかしさにうつむく私の口元に、またプリンが運ばれてくる。また悪そうな顔をして笑っているから、これ食べないとまた、くっ……口移し、っていうことに、なる、んだよね……?さっきの恥ずかしさを思い出して私は大人しく、口を開いた。
「はは、懲りたかい?」
「んっ……
 わかっててやってる雨彦さんの腕の中、プリンの容器が空になる。本当に全部、あーん、で食べさせてもらった気恥ずかしさで赤面し通しの私を背中から抱きしめて、雨彦さんは満足そうに笑っている。
 また甘やかしてやるからな、と頭を撫でる大きな手が最後にポンと弾んで、それで疲れが全部抜けたような気持ちになって、私はふにゃふにゃになって雨彦さんに沈んだ。


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