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[神谷P♀]君と二度寝の休日は

全体公開 2 1525文字
2018-08-21 16:09:33

「ははは……くすぐったいな……

Pさんと神谷さんが休みの日の朝に二度寝するお話です。

Posted by @toasdm

 くすぐったい。どうしてだろう、と思うより早く答えを見つけて、神谷はぱち、と目を開けた。期待したものが、そこにある幸せ。それはまるで、サプライズで手渡されたプレゼントが前からずっと欲しかったものであるかのような、約束されていなかったはずの喜びの、洪水だ。すやすやと穏やかな寝息を立てる腕の中の彼女の寝顔が、神谷の期待した、幸せだ。
 普段なら先に起きて朝食を用意してくれたりするのだが、今朝に限ってはまだ眠ったままで、彼女は神谷の腕の中にいる。温もりがそのまま、胸板越しに神谷を満たして、朝は陽だまりの色に染め上げられる。あったかいね、と誰に言うでもなく呟いて、神谷は腕の中の彼女に頬を擦り付けた。あったかい。いい匂いもする。シャンプーの香りだろうか。プロデューサーさんはいい匂いだ、と、事実を口にしてみれば、それだけで、神谷の胸は躍った。
 一緒に暮らしているわけではないから、こうして朝を共に迎えることは日常ではない。休みやその他の条件が重なった時に神谷が彼女の部屋を訪れて、夜を越えて朝を迎える。特別な事が幸せで、少しずつ当たり前になってきていることも幸せで、神谷の幸せは段々と、特別が日常になってきている。それが何よりも嬉しかった。今既に、宝物は日常にある。
「ん…………
「お、っと……
 ごめんね、起こすつもりはなかったんだ、と心の中で謝罪して、身じろぐ彼女の額にそっと、神谷は口付けを優しく落とした。一瞬しわの寄りかけた眉間を指先でくすぐると、そこからフッと力が抜けて、寝顔は再び穏やかな、神谷の宝物に戻る。
「ふふふ……可愛いなぁ……
 きっと、今彼女を見つめている自分の顔は、とんでもなく蕩けてしまっているだろう、と神谷は一人自嘲する。でもいいんだ、と優しく頭を撫で、頬に手を添えて、彼女の寝顔を堪能しながら神谷はほぅ、と幸せの吐息を漏らす。でもいいんだ。この幸せは、俺だけのものだから。思う存分蕩けながら、神谷は彼女の寝顔にまた口付けを落とした。
「今日は……どこに行こうか」
 朝の光差すカーテンに守られて、規則正しい寝息を立てる彼女の寝顔に神谷は語りかける。返事は期待していない。受け止めてくれなくたっていい。幸福感に満ちた空間でただ一緒にいるだけで嬉しい。今日はどこに行こうか。そう考える相手がいるだけで嬉しかった。
「この前言ってたお店……今日やってるかな?」
 すぅすぅと、呼吸に合わせてゆっくり上下する胸に手を置いて、子供を寝かしつけるようにして神谷はとんとんと、そっと優しく叩く。叩かれているのは彼女の方なのに、胸が緩んで眠気が差してきたのは神谷の方だ。とん、とん。心地よさの律動は、規則正しく朝を刻んだ。
「ランチは、並ばないような場所がいいよね……
 とん……とん……とん……。間隔が徐々に開いてきて、肘枕をして彼女を見守る神谷のまぶたが、時折ふっ、と閉じられる。
「ふふ……俺も、眠くなってきたよ……
 とうとう抵抗することを諦めて、神谷はまぶたをそっと閉じた。目を覚ましたときと同じく、自分にすりすりと身を寄せてくる彼女の髪の毛が、神谷の頬をくすぐった。
「ははは……くすぐったいな……
 とん…………とん…………
 起きたらあれをしよう、これがしたい、こうしようああしよう。
 思い描く楽しい時間に飛び込むようにして、神谷の意識はグラデーションで眠りに落ちていく。
 おはようとおやすみを短時間で繰り返して、そこで神谷の手が止まる。君と二度寝の休日は、すごく有意義だ。眠りの淵でそんなことを考えて、神谷は彼女を抱きしめてまた、眠った。

 あとはただ、二人分の寝息が、穏やかなまま続いていた。


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