X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです
Xフォロワー限定公開・リスト限定公開の停止について

[古P♀]どんな私も

全体公開 1 1685文字
2018-08-30 12:38:10

「どんな私も、愛してくださるのですか?」

お風呂上がりに丁寧にしっかりお肌ケアとかするクリスさんと髪を乾かしてあげるPさんのお話です。

Posted by @toasdm

 ざっとシャワーで体を流して、お風呂上がりの香りをつれてクリスはリビングへと戻る。お疲れ様でした、と声をかけてくれた彼女にニコリと微笑みかけて、クリスはまだ雫の滴る髪の毛をバスタオルでがしがしと拭いた。
「乾かしましょうか?」
「ええ、是非。お願いいたします、プロデューサーさん」
「ふふふ」
 二人きりでいるときは下の名前を呼び捨てにするクリスが、あえて仕事の時と同じように彼女を「プロデューサーさん」と呼んだのは、髪の毛を乾かすという手入れが、クリスの仕事、特にビジュアル面での価値の維持に貢献してくれると踏んでのことだろう。くすくすと笑いドレッサーの前に腰掛けて、クリスはコットンに化粧水を取って肌にトントンと染みこませた。
「クリスさんはお肌も髪も綺麗ですよね」
「ふふ、アイドルとして活動するようになってから、きちんと手入れをするようにしているので、そういわれると嬉しいですね」
 気合を入れてトリートメントを髪に広げる。化粧水で潤ったクリスの肌は瑞々しさとハリを湛えていて、三十手前の男の肌にしては本当に、驚くほど肌理が整っている。
「人は」
 乳液を手にとって、クリスは続ける。やっていることはどちらかというと女性らしく、中性的な魅力もある容姿をしているクリスだというのに、ばしばしと肌を整えていく仕草は、ワイルドでどこか、男らしい。
「持って生まれた才よりも、努力している部分を褒められる方が嬉しいそうですよ」
「へぇ……
「ですので、アイドルとして容姿を維持するように努力している私としては、こうして」
 最後にパンッ!と頬を叩いて肌の手入れを完了させたクリスが、鏡越しに彼女を見つめて微笑んだ。
「しっかり手入れをしている部分を褒めていただけて、嬉しいですよ」
 本当に嬉しそうに微笑むクリスの笑顔が眩しくて、彼女は逃げるようにしてドライヤーを手にとって、ごうごうと風を当てて髪の毛を乾かし始めた。濡れてくすんでいた髪の色が、水分の蒸発と共に軽い色調に戻っていく。トリートメントの香りを漂わせて、やがて絹糸のように艶めいた、いつものクリスの髪の毛へと戻る。ドライヤーのスイッチを切ると、彼女は改めてクリスの髪にさらりと触れた。
「本当に、綺麗ですよね……
「照れますね……ふふっ、でも」
 わざと顎を引きしわを寄せ、クリスは擬似二重あごを作って言う。
「私もいずれ、中年太りをしたり、ハゲたりするかもしれませんよ?」
「まさか!」
 髪の毛をぎゅっとまとめて額を出して、ハゲを表現しているのだろうか、クリスはできる範囲内で容姿を崩そうとする。元々が整いすぎている美形がそんなことをしたところで、単にそれは、面白い顔を作ろうとしているだけになる。笑い転げそうな勢いでふきだした彼女は、笑いすぎて涙目になりながらクリスと鏡越しに目を合わせて言った。
「クリスさんみたいに整った中年太りのハゲなんていませんよ」
「ふふふ、そうですか」
 つられて笑うクリスを後ろからぎゅっと抱きしめて、彼女は愛おしげに、艶をまとった髪に頬ずりをする。
「それに」
 少し目を伏せて恥ずかしそうに、彼女はそのまま、クリスに小さく囁いた。

「どんなクリスさんでも、私は好きです。かっこいい人が好きなんじゃなくて、クリスさんが好きなんですよ」

 鏡の中のクリスが、つり目がちの瞳を大きく見開く。さらりと髪を払いのけて、フッ、と微笑んで、クリスはそのまま上を向いて彼女を見上げた。
「どんな私も、愛してくださるのですか?」
「ええ、私でよければ」
 照れと恥とで見つめ合い、とろけるような視線とキスを交わして、ドレッサーの前で二人は愛を抱きしめあう。くすくすと笑うクリスは立ち上がり彼女を抱きしめて、ゆらゆらと体を揺らした。

「それでも、できるだけあなたに、素敵だと思っていただけるように頑張りますよ」

 これからもよろしくお願いしますね、とクリスは彼女を抱きしめる。お風呂上がりの決意と誓いをふんわりと、揺れる髪から漂うトリートメントの香りが、幸せそうに包んでいた。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.