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69.深夜/城海

@kaiba_chiri
散【12/29東キ-31b】
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2018-09-02 20:56:06

海馬くんを優しい人にしようキャンペー第二弾(いつの間に)。何時にもまして余りに意味のないシーン切り取り型のお話。元気な城之内くんでもちょっとした闇を抱えてるのが好きです。

 耳を劈くような雷鳴と、要塞の様なこの屋敷をも揺るがすような地響きと共に雷が落ちる。少し前から不穏な音が聞こえてはいたけれど、気のせいだ、まだ遠いから、と思いつつ早く眠ってしまおうと頑張っていた。だけどその願いも空しく『奴』はこんなに至近距離でオレを脅かす。これが一人だったら頭から布団を被って震える事も出来たのに、隣に海馬がいるからそれも出来なくて、ただ歯を強く噛み締めて体が震えないように我慢するので精一杯だった。

 ……雷が苦手な事を知られたら馬鹿にされるに決まっている。そんな思い込みから無様な姿は見せられないと思っていた。現にその昔幽霊が怖いと真顔で言ったら散々笑われた事があるからだ。

 厳密に言えばオレが怖いのは雷というより『デカい音』全てだった。本音を言えば海馬の怒鳴り声だって余り好きじゃない。小さい頃に親父の怒鳴り声に散々脅かされた事がトラウマになっていた。

 勿論この事は誰も知らない。知られないようにしていたから気づいた奴もいないだろう。そんな訳でオレは一人真夜中の雷に心底怯えていた。

 また、大きな音が響き渡る。
 無意識に震える体を気取られない様にこんな煩い雷雨の中でも平気で熟睡している海馬から距離を取った。



 それからどれ位の時間が経ったのか。そんなに長くもない筈だけど、もうそろそろ夜が明けてもおかしくないように感じられた。大分遠くに行った雷の音にほっと胸を撫で下ろしながら縮こまっていた身体を伸ばし、少し離れた場所に放置していたスマホで時間を確認すると、おやすみと言ってからまだ一時間しか経っていなかった。予想外の事に唖然としていると、また少しだけゴロゴロと音がした。

 ……さっきよりも若干近い気がする。嘘だろ折角やり過ごしたのに。こんなんじゃまともに眠れねぇよ、と思ったその時だった。いつの間にか伸びてきた暖かい手が力任せにオレを引っ張った。それに驚く間もなくぎゅっと抱き締めて来たのは勿論海馬以外あり得ない。えっ、とオレが声を上げるより早くまたあの雷鳴が聞こえてきた。

 近い。今度はこの家に落ちるんじゃないか、そう一瞬不安に思ったけれどそれ以上に抱き締められている事が気になって集中出来ない。その落ち着かない気持ちが態度にも表れたのか居心地悪くもぞもぞしていると、耳元で海馬が小さく口を開いた。

「雷が凄いな」
「へっ?……ああ、うん。つか、お前起き……」
「……起きていた」
「すげぇ雷煩いもんな」
「雷よりも隣で寝ていた貴様の方が煩かったがな」
「嘘?!」

 そんな海馬の爆弾発言にオレは思わず「ちょっと震えてはいたけど声を上げたりはしてねーよ!」と叫びそうになってぐっと堪えた。ここで白状したら今までのガマンが水の泡だ。あくまで普通に振る舞わないと。そう、普通に。

「……オレ、何も言ってねーけど。夢でも見たんじゃね?」

 そのタイミングで響く雷鳴。結構な音がした筈なのに、言い訳に集中した所為か、不思議と余り怖くなかった。が、身体だけは素直に反応して、肩がちょっとだけ跳ね上がる。未だ海馬に拘束されたままだから、びくついたのがバレたかもしれない。今の変な言い訳もアレだし、オレはもう馬鹿にされる事を覚悟した。けれど。

「そうかもしれないな」

 海馬はたった一言そう呟いただけで、それ以上何も言わなかった。抱き締めてくる腕はそのままに、穏やかな呼吸だけが繰り返される。

 ……きっと、海馬は気づいていたのかもしれない。オレに興味がない振りをして、本当は良く見ている事を知っている。オレも同じようにこいつを見ているからなんとなく分かるんだ。でも、敢えてそれを口にしない。いつもは容赦なく攻撃してくるその口もオレの背に押し当てて、動く気配がなかった。オレの小さな小さなプライドは無事に守る事が出来たんだ。

 いつの間にか外は凄く静かだった。これなら朝までぐっすりと眠れそうだと、未だに少し強張っていた身体の力を抜いてしまう。触れ合った場所は凄く暖かくて、気持ちが良かった。

 明日の朝、目が覚めたら一番に何を言おう。

 そう思いながらオレは漸く眠りの世界に足を踏み入れた。


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