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ラケルタその3

全体公開 2478文字
2018-09-03 21:15:32

竜鎧さんの長い一日の話

Posted by @izumiya_

ラケルタその3

ーーーー今日の竜鎧の国は朝日が雲で隠れ、ぼんやりと朝を迎える。
竜鎧の勇者は、ショックを受けたようにビクッと跳ね起きる。『なんじゃ、もう起きたのか。つまらんのう』「ここまで連れてきたわけ?」そう、丁度王宮の目の前。
ついさっきまで「不気味な鎧がいる」「幽霊が出た」と散々に言われていたが竜鎧の勇者は気付かなかった。
中に入ると昨日の警備兵がいて話しかけてきた。「警備隊長がお呼びです、どうぞな、なるべく急いで」そういってそそくさと行ってしまった。
作戦室へ向かう、部屋の外まで相変わらず怒号が飛び交っていうのを聞いてると、とてもじゃないけど入る気にはならない。
ノックするとぴたりと声は止んで入るのにより緊張感が走る。
思い切ってドアを開け、「僕です。《ラケルタ》の弱点といいますか、見つけてきました。」
そう聞くとまた怒りで真っ赤になっていた警備隊長の顔も緩み、「それで!?進展は!?」「奴らのどこかにある皮細工のトカゲを仕留めれば、後はちょっと悲惨な目にあいます」「悲惨な目にあったほうがいい!そこのウスノロ!今すぐ兵隊に伝えろ![トカゲを殺せ]と!」
またバタバタし始めた。「竜鎧の勇者様、早速参りましょうか!」「僕も?」「もちろんです、貴方が対処法を見つけていただきましたし、それにお強いから!」なんだこいつと言わんばかりの顔をしているのをマスクが隠してくれた。
「そもそも夕方からじゃないと姿見せないんじゃ」「それもそうですね!訓練して待ってます!」「はぁ(初めて筋肉バカとはこう言うものかと思っている)」
昼間は市場に出て、たまにはたまいもパンを食べたいと思い歩を進めた。
突然太陽のように明るいフラッシュを見たかと思うといつの間にか転ばされていた。
「(何!?)」『上じゃあ!上!屋根じゃ!』
慌てて顔を上げるとあの赤いマントを着けた《ラケルタ》が居た。このラケルタは他のメンバーとは違うところがあった。
赤水晶の目に、赤い墨がトカゲに彫り込まれてなんとも不気味であった。
だが一つ不思議なことがあった。
こんなに賑わってるのに一人も彼を見つけることができない事だ。
次の瞬間、再び目が眩んだと思うと一通の手紙が頭に乗っていた。取って見てみると赤い不気味なトカゲの蝋封がされてて、中身を見ると流れるような文字で〔決闘 今日夜一時半〕とだけ書かれていた。
あの装飾、この手紙竜鎧の勇者は少し寒気がした。


ーーーー夜、市場の真ん中で彼を待った。
竜鎧の勇者は時計を持っていなかったので高台の大時計で時間を見た。
一時二十三分冷や汗が出て来るのを感じてきた。
一時二十四分気を落ち着かせ、深呼吸をしながら武器を握る。

一時二十八分静けさと闇に身を置き、何処からでもやってこれるようにまだ未熟な精神を集中させた。
一時二十九分木がざわざわと揺れ出し「あいつかやって来るぞ」と言わんばかりにガサガサと揺れ出した。
一時三十分!時計の音がコツリとなる瞬間、闇から魔法のような弾丸が飛んで来た!
鎧のギリギリを掠めて行ったのに、鎧はほんの少し凹んでいた。
『あやつ簡単にかかると死ぬぞ』
「(分かってる分かってるさ)」
常人なら逃げ出して背後から額の中心を撃ち抜かれていただろう。
竜鎧の勇者はずん、と落ち着きを払って長い魔法の詠唱をした。
《ラケルタ》がほんの少し動いた瞬間無数の火球が《ラケルタ》目掛けて飛んで行った。
空が少し明るくなるほどの火球に《ラケルタ》はマントを焦がしながらトカゲと同じ、赤水晶のような目でこちらに睨みつけて、ボロボロに焦げたマントをなびかせながら竜鎧の勇者の前に降りて来た。
懐から湾曲し、鋭く研かれた剣を取り出し、竜鎧の勇者に最初はゆっくり、だんだんと足を早めて、かなり勢いをつけて剣を思い切り振り下ろした。
剣技が苦手な竜鎧の勇者は、しまった、と思いつつ持っている新品でまだ血のつけたことの無い剣で応戦した。
ガチャン!と剣同士がぶつかる音が静まり返った街へ響いていった。
その巨体ではあったが、その十分な力を使いこなせないでいる竜鎧の勇者は内心焦っていた。
力で押し負けているが、隙を見つけて思い切り大きな火炎魔法を剣越しに出してみせた。
自分の持っている剣すらとてもじゃないが持てない温度になっているにもかかわらず(愚の魔王は火炎を宿していたので熱には強い)、相手の小さなアチッと言いながら少し仰け反るのを竜鎧の勇者は見逃さなかった。
赤くよく焼けた剣で《ラケルタ》のトカゲ部分である左肩を貫いた。
ジュゥゥウウ、といった内側から肉が焼けていき、剣の温度が下がっていく音と男の叫び声が街中にこだました。
貫かれたトカゲは皮から鱗を持ったものへと変化し、《ラケルタ》の魂を吸い取った。
ただ、今回はそれだけではなかった。
橙色と紫が入り混じった不思議な色の竜で、口からは灰のような煙をもらし、何重にも重なった怒鳴り声のような声で「やがて此の地に竜が復活するだろう!此の地に災いあれ!」そう言うと大きな赤水晶の様な目を持った竜は天へ登って次第に消えていった。
少し凹んだ鎧を撫でて『あの魔弾はなんじゃったんだ?とてつもなく強力じゃったが』自身の魔力で回復していく鎧を感じながら「分からない……」『朝こんな場所に死体が寝てたらさぞ驚くじゃろうな。ゴミ箱にでも突っ込んでおけい』「そうだね少しはマシになるかな」近くの脇道の大きなゴミ箱に武器ごと頭っから突っ込ませた。
大時計を見ると、既に三時を回っていた。
慌てて家路につこうと魔法ランタンで照らされた路地を小走りして帰った。
帰る途中、皮を切ることはあっても、人を刺したりした事がなかった為、歩いていたので気付かなかったが、手がふるふると震えていた。
初めて狂気に足を踏み入れた感触がした。
家に着くと真っ暗だったが、少し家具にぶつかりながらいつもの眠る場所につく。
明日はいいことありますように
「おやすみなさい」


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