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ラケルタその4

全体公開 3572文字
2018-09-04 21:26:31

竜鎧さんのとても長い一日の話

Posted by @izumiya_

ラケルタその4

ーーーー今日も暖かい太陽が山々を、竜鎧の国を照らす。1日の始まりだ。
そんな朝、王宮魔術師と警備隊長が話し合っていた。
「トカゲの事ですがどうもきな臭いですね、魔術とは恐ろしいものです」「でも王宮魔術師の貴方なら解明できると?」「100%そうとは言えませんが、このトカゲは皮を住処にしているようですね」「皮ですか
コンコンコン、とドアをノックする音が聞こえる。
「入りなさい」ドアを開けたのは、大臣だ。
「何か進展は御座いますか?王が計画は最優先にと仰っています。」「それが大臣殿〔トカゲは皮に住む〕ほどの進展しか」「そうか、そうか。難しい問題ですねぇ」大臣はヒゲを少し撫でる。
「国民の安全の為、努めるように」そう言って部屋から出ていった。
大臣はまた静かにニヤリと笑うと首辺りに大トカゲの模様が動いてその大トカゲの上を手でなぞると、服の中へモゾモゾ肌の上の滑るように消えていった。
その様子は、誰もが気付かなかった。

ーーーー竜鎧の勇者は部屋の中で目が覚めた。
『やっと起きたか、暇で暇で市場でも荒らしに行こうかと思っていたところじゃわい』「起きてよかった……」ガチャンと伸びをするとドア(入り口?)の所に手紙が挟まっていた。
パッと取ると、王宮の紋章が描かれたキラキラと光る素材の手紙だった。
宛名は {竜鎧の勇者殿}。名前ではなかった。
中身を開けると、すらすらと流れた綺麗な文字でこう書かれていた。
[《ラケルタ》の呪いは今も続いているようです。事件数こそ減ったものの、まだ謎だらけです。どうぞ、王宮までお越しください。王宮魔術師]
「うーんまだ続いてるのか」『闇の魔術とは貴様が思った以上に根深い、そうそう無くなるものではないんじゃよ』「トカゲ……
竜鎧の勇者は何か思いつきそうになったが、特に何も浮かばなかった。
『とにかく“国の為”とやらに行こうぞ』「うん」
王宮前は随分と混雑していた。が、竜鎧の勇者がいると気付くと少しづつ周りに輪ができて「本当に《ラケルタ》を倒したのか!?ちゃんとやれ!「勇者なんでしょ!?国民を救ってよ!」他にも汚いヤジが飛んで来たりしたが、竜鎧の勇者は無視をして王宮へ入っていく。
「おぉ竜鎧の勇者殿、ささ、こちらへどうぞ」と一人の警備兵が作戦室に連れて来てくれた。「王宮魔術師殿!警備隊長殿!竜鎧の勇者殿がお見えです!」「ご苦労、ご苦労さ、竜鎧の勇者殿、お座りください」
そう言われ、王宮魔術師の対面側に座ると、難しい顔をして話をし始めた。
「トカゲの事なんですがね……あんなまじないは初めてで、手を焼いているんですよ」「はぁ」「今、そのトカゲを炙り出す魔法を構築しているのですがどうもうまく行かなくて」「手伝って欲しいと?」「え、えぇその通りです。」
魔法は扱える竜鎧の勇者ではあったが、索敵魔法等には知識がないのでお手伝いはできない、と話すとがっくりと肩を落とし、「では、私はこれで警備隊長、どうぞお話しください」そう話していると、コンコンコン、とドアをノックする音がした。
入って来たのは大臣だ。「これはどうも竜鎧の勇者殿、先日の《ラケルタ》を仕留めたのは本当に素晴らしい功績でしたよ。」とヒゲを撫でる。
(褒められると言葉が出ない)」「今後もよろしくお願いしますよ、竜鎧の勇者殿」そう言うと背中を向けた瞬間、竜鎧の勇者は何かを見た。
襟の隙間からトカゲの尻尾のようなものが出ている事に気が付き、「大臣さん」そう声をかけると肌から服に向かって尻尾を仕舞ってしまった。
「何ですかな?竜鎧の勇者殿」「い、いえ何でもありません」「それでは」大臣は部屋を出ていった。
『今の奴……恐らく《ラケルタ》じゃ』「(でも大臣がそんな事をしても)」『あれの強力な魔力があれば、また儂が起こしたような騒ぎが起きるぞ』「!」
「ごほん、竜鎧の勇者殿」警備隊長が声をあげた。
その後はつまらない警備の話とちょっとしたお世辞を聞かされ、竜鎧の勇者は飽きがきていた。
話をしている間、『《ラケルタ》なら早く仕留めないと大変なことになるぞ』「(大臣を一人にする方法があれば)」『跡をつけてみようじゃないか、大丈夫、消音の魔法は儂がかけてやる』「(ありがとう)」
長ったらしい話もようやく終わり、警備隊長は満足した顔でそれでは竜鎧の勇者殿、ご武運を」「そちらも」と言い、竜鎧の勇者は早々と外へ出ていった。
大臣の後を追い、竜鎧の勇者は走った。もちろん消音が効いているのでガシャンガシャンと鎧の音はしない。
追いつくと、大臣は一人でヒゲを撫でながら庭園を眺めていた。
「大臣さん!」思い切って声をかけてみた。
大臣はこちらを向き「これはこれは、何の御用で?」と返す。
「大臣さんは《ラケルタ》ですね?」「はぁ?」『こら!もうちょっと考えて喋れ!』
呆れた顔で「私の何処が《ラケルタ》だと?」「その首元のいや、大臣さんの体の“皮”に宿った《ラケルタ》を見ました」
大臣は渋い顔をして「……竜鎧の勇者殿は随分と鼻が効くようで」ふと振り返ったと思うと、昨日の“あの”無音の弾が飛んで来た。
こちらも警戒していた為、避けることは出来たものの、右肩をかすめていき、また小さな弾痕が鎧についた。
背負ったまだ新しい剣を抜き、大臣の服を思い切り切り上げ、肌が露出するようにすると、今までの《ラケルタ》とは違う、昨晩見た“あの”橙色と紫が入り混じった不思議な色のトカゲが、隠れ場所を求めて肌の上を這い回っていた。
「ぎゃあぁあぁぁー!!」服を斬られた大臣はズタズタになった服で逃げ出そうとしたが、勝手に石につまづいて転んでいた。
叫び声を聞いた警備兵が集まってくると、誰もが大臣の肌の上を這い回る橙色と紫色のトカゲを見た!
「大臣が《ラケルタ》!?」「そんな」「俺はずっと大臣のこと気に食わなかったんだ」
様々な感情がこもったざわつきが収まらないうちに、橙色と紫のトカゲが“皮”から空へすぅ、と出て来て大臣の魂を吸い取った。
それから悲鳴のような恐ろしい声で「まだ力が十分じゃないが……お前たち位なら簡単に魂をいただけそうだ」大トカゲの姿は三メートル程に膨張し、赤水晶の鋭い目をこちらに向け、襲いかかって来た。
警備兵達も魔法銃で応戦してくれてはいるが、傷になるには至らなかった。
口から瘴気を溢れさせながら、竜鎧の勇者に向かって走り寄って来た。
魔法で火球作り出し三発打ち込むと嫌がるように火の粉を払って何かを飛ばして来た。
避けきれずそれを左腕で受け止めると、シュゥゥと音を立てながら左腕の一部が溶けていた。
『くぅこの未熟さでこの強さとは、恐れ入った』「(何か作戦は!?)」『ああいう類の儂のような類の奴はとにかく目が良く効く、それにあやつは炎に弱いらしい』
顔を上げて火球を飛ばした箇所を見ると、爛れていた。これならこちらのもんだ、と手の中でとびきり強い火球を作り上げて、目をめがけて飛ばした。
身動きが取れなかった最後の《ラケルタ》は、受け入れるしかなかった。
右目が大きく爛れ、じゅぅじゅぅと嫌な溶ける音が耳につくが、すっかり力を失った《ラケルタ》はもう意識は無かった。
「竜鎧の勇者が倒したぞ!」「本物の勇者だったんだな」「でもこの竜はどうすれば」警備兵達がざわつく。
竜鎧の勇者が近付いて《ラケルタ》の死体のおでこのあたりに触れると、すぅー、と空気の溶けるように竜の体は溶けていき、何十もの魂が空に昇っていき、消えていった。
『ふぅあれが“本物”の《ラケルタ》の正体じゃったんか』「(でも大臣さんが死んじゃった)」『あんな魔術使う方が悪いんじゃよ』
いつのまにか竜鎧の勇者の周りには警備兵達が集まり、讃頌した。この騒ぎをバルコニーから見ていた王はさぞ驚いたが、とても喜んだ。
とにかく休みたかった竜鎧の勇者はその場を去っていった。だが、あの赤水晶の目は二度と見たくない、と思った。
家路に着くまでもう話が広がっていたのか、いつもより竜鎧の勇者の周りはざわついていた。
一人の男が「お前さんも先祖みたいな心を持っていたんだな!」と肩をガンガン叩きつけて励ました。「これ持っていけよ」と焼きたてのたまいもパンが入った袋を渡してくれた。
ありがとう」『この時期にたまいもパンなんて珍しいの〜早採りのやつじゃろうか』
家にたどり着くと、早速たまいもパンを口にした。
魔力はそんなに入っていなかったが、もちもちした十分な美味しさをパンだった。
満足して疲れた体を愚の魔王鎧に預けて、ゆっくりと瞼を閉じた。
「おやすみなさい」


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