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[次郎P♀]浮気

全体公開 1808文字
2018-09-15 19:26:08

「お楽しみ中のところごめんねぇー、ちょっとい……い?」

Pさんが浮気してるっぽいぞ、と気付いてしまったじろちゃんのお話です。

Posted by @toasdm

「ふふ、もう……ナイショですよ?」
 ドアの向こうから聞こえてくる声の調子に、次郎は思わず耳をそばだてた。一瞬山村がいるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。聞こえてくるのはプロデューサーの――彼女の声だけで、それは、なんともいえない親密な、逢瀬のような、そんな雰囲気を漂わせていた。
 俺というものがありながら、白昼堂々浮気ですかねー?苦々しさを隠そうともせず、次郎はドアに張り付いて息を潜める。さてどうしようか、と思考を巡らせようとして、はた、と次郎は思い至る。
 もし、彼女が浮気をしていたら。自分は恋人として、どうするべきなのだろうか?と。問い詰めちゃう?いやいや、浮気させるようなことした自分の非を棚に上げてそれはオトナとしてないでしょうよ。じゃあ気付かなかったことにしちゃおうか。一番簡単だし誰も傷つかないけどねぇ、あー嘘、おじさんめっちゃくちゃ傷ついちゃう。っていうか今すっごく傷ついてる、傷つきかけてる。いや、そもそもこれって浮気?相手が誰かもわからないし、プロデューサーちゃんが浮気とかするの、ちょーっと信じらんないよねぇ。でも雰囲気的にすっごく仲良し、っていうか……
「ダメー、そんなにぐりぐりしないで」
 ぐりぐりって何?!何をどこにぐりぐりされちゃってるのプロデューサーちゃん!?
「あ、んもぅ、落ち着いてってば、ねぇ……誰か来たらどうするの?」
 たはー、既にここに来てるんだけどねぇ、約一名。
「ふふふ、ピクピクして、可愛い」
 うわもうこれ絶対浮気でしょ、おじさんわかっちゃったもん。
「ちょ、ちょっとそんなとこ、ダメ」
 そんなとこもあんなとこも、彼氏がいるならそういうことしちゃダメでしょー。
「こら、あ、中、中はダメだってば!」
 っていうか俺の女好きにしておいて一言もしゃべらない相手ってどんなヤツなの?なんなの?おじさんだんだん腹立ってきちゃったんだけど!
 次郎はとうとう腹に据えかねて、事務所のドアを思いっきり、勢いよくあけた。
「お楽しみ中のところごめんねぇー、ちょっとい……い?」
「あ、次郎さん!」
 お疲れ様です、としゃがみこんでいた彼女が振り返り、床でゴロゴロと転がっていた子猫を抱き上げて次郎に見せた。
「この子、事務所にふらっと迷い込んできたんですけど、飼ってもいいですか!?」
……あーーーー、猫、ねぇー……
 次郎はよろよろとよろめいて、ソファにどかっと身を投げ出した。疲れた、やけに疲れた気疲れした、と溜め息をついてそのままソファに沈む次郎に、彼女は子猫を抱いたまま近付いてくる。
「ちゃんと面倒みるから!」
「子供じゃないんだからさぁ……っていうか、猫だったの……
 可愛いけどね、と子猫の鼻先をツンとつついて、次郎は猫を見上げた。事務所に猫を入れたなどと知られてはいけないからナイショね、と。次郎の指にぐりぐりと頭をこすりつけてくる、なるほどぐりぐりするね、と。せわしなくあちこちをキョロキョロと見てプロデューサーの髪にじゃれつく落ち着きのなさ、ピクピクと耳を動かして音のする方を反射的に見て、子猫は腕から飛び出してデスクの下にもぐりこもうとする。
「あー! だからそんなところ入らないで!」
 ふんふんと引き出しのにおいをかいで、器用にカリカリと引っかいて開けて、子猫は引き出しにおさまろうとする。
「中はダメだってさっきも言ったでしょー!」
「たはは……
 ぜーんぶおじさんの勘違いだったのねぇ、と一気に脱力した次郎の隣に、子猫を抱いた彼女が戻ってくる。
「やっぱり、ダメですよね……?」
「うーん……ちょっと、今、なーんにも考えられなーい……
 そうですか……と気落ちした彼女の腕から再び子猫が飛び出して、開いたままのドアからピャッと外へと逃げていく。
「あ……あーあ……ご縁がなかったのかなぁ……
「プロデューサーちゃんさぁ」
 ぐったりとソファに沈んだままの次郎が、彼女を手招きする。なんですか?と近付いてきた彼女をぎゅっと捕まえると、次郎はそのまま彼女を引き寄せてあっという間に膝枕にしてしまう。
「紛らわしいよ」
 くすくすと笑う次郎がやけに楽しそうに見えて、彼女はわけもわからないままとりあえず、次郎の髪の毛を撫で付けた。
 ぽつぽつと勘違いを白状した次郎の話を、彼女は猫でも撫でるようにゆったりと、聞いていた。


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