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81.Honey/城海

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2018-09-15 20:50:33

思いっきりのろけられる被害者杏子(気の毒としか言いようがない)
お題使用⇒あなたは『自分用じゃないリップクリームを常備している』海馬瀬人のことを妄想してみてください。
https://shindanmaker.com/450823

「海馬くん、そんなもの持ってたんだ。だからいつもちゃんとしてるのね」

 彼が制服のポケットに入れていたスマートフォンを取り出そうとして、一緒に入れていたらしい小さい何かを床に落としてしまった。その時、たまたま背後にいた私は足元に転がって来たものをみて少しびっくりしてしまう。

 何故なら『それ』はいつも実用性を優先しているような彼には似合わない、なんだかおしゃれなデザインのリップクリームだったから。一応メンズと書いてあるから男性用には違いないけど、それにしても彼にはとでも似合わない。

「ハチミツ入りかぁ……なんかあんまり似合わないわね。今はメンズ用もこんなの出てるんだ」
「似合わなくて結構だ。返せ」

 拾い上げたそれを親指と人差し指とで抓んでもってまじまじと見ていると、あからさまに嫌な顔をした海馬くんがひったくる様にリップを取ってしまう。

 別に恥ずかしがらなくてもいいのに。今は男の子だって最低限の身だしなみに入ってるよね、唇のケアも。ましてや毎日のようにテレビや雑誌、インターネットを賑わせる有名人ならなおさら。そう笑いながら言ってやると、彼は不機嫌な顔を増々歪めて「違う」と一言吐き捨てた。

「違うって?これ、海馬くんのでしょ」
「これはオレのものだが、使っているのはオレではない」
「?どういう事?」

 ちょっと訳がわからない。自分が使う物じゃないリップクリームをポケットに入れているってどういう意味かしら。本人が使わないのなら、一体誰がこの蜂蜜入りのこれを使う訳?体勢の所為で随分と近くにある目の前の顔を見つめて、凄い柔らかそうな唇をしてるなぁなんて思いながら、私がなんとなく首を傾げたその時だった。

「はーいそこまで。杏子ねーちゃん、オレのハニーを誘惑しないでくれる?」
「はぁ?」

 いきなりにゅっと大きな手が現れたと思った瞬間、至近距離にあった海馬くんの体がぐっと後ろに引かれてしまう。同時頭から降って来た聞き慣れた声。

 慌てて目線をそっちに向けると、そこには笑顔というにはやけに刺々しい表情をした城之内の顔があった。海馬くんを後ろから羽交い締めにするような格好で私から意識的に引き離す。

「何よ、別に誘惑なんかしてないわよ」
「そっかぁ?じーっと顔見てたじゃん。減るからやめてくれる?」
「あんた馬鹿じゃないの?心配しなくても取ったりしないからそういうのやめなさいよね。海馬くん、嫌がってるじゃないの」
「嫌がってるわけない……ぐえっ」

 海馬くんを挟んで私とやり合う城之内に嫌気がさしたのか、海馬くんは無言のまま城之内の鳩尾に肘を強く叩きこむと、さっさとその場所を後にしてしまう。そんな彼を恨めしそうに見送りながら城之内は「お前のせいだぞ」なんて口を尖らせた。

「私の所為じゃないわよ」
「へーへー。で、何話してたんだ?」
「何って事はないんだけど、海馬くんがね……」

 城之内の問いかけにまさに今あった出来事を話そうとして、私ははたと気が付いた。目の前の良く動く唇がやけにつやつやしている事に。

「……あ、なんか分かっちゃった」
「は?何がだよ」
「そういえば、あんた蜂蜜好きだったもんね?」
「だから何が??」
「少しはあんたも気を使いなさいよ。その内見捨てられるわよ。ま、飼い犬のケアも飼い主の役目って言うのならそれまでだけどね」
「全然話が見えねぇって!!」

 一体どんな顔をして海馬くんはコイツの唇にアレを塗ってあげるのかしら。

 想像するだけでなんだかおかしくなって、私は笑いを堪えながら城之内に背を向けた。後ろではまだ何か言ってるけれど、もう何を聞いたところで「ごちそうさま」しか言葉が出ない。

 そう言えば、私のリップもそろそろなくなりそうだったっけ。
 放課後、ドラッグストアに寄って行こう。


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ちり
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