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番犬の一年前の話

全体公開 1732文字
2018-09-18 10:08:46

一年前の事件の話を書こう書こうと思っていたのに設定だけあって文章にする気力と体力が二ヶ月以上なかったけどメインシナリオで暴動起きるならいよいよ書かないなと思いましたまこ

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2024/■■/■■
イツビ組 青龍隊管轄事件報告書
事件概要:住民同士の闘争(後に小規模の精神汚染と判明)
発生箇所:メガフロート3『ジェミニ』
死者:主犯である40代中年男性、青龍隊隊員1名
負傷者:八十葉凍羽副隊長、クロイツ・クオルタナート=オルトルート、その他十数名
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ひとつ、はっきりと言えることがあるのなら。
あの日の光景は、間違いなく地獄と言い切れるような有り様だったということだ。



始まりはなんの変哲もない、ある意味いつも通りとも言える一報だった。
住民たちのちょっとしたいざこざ。
ガンを付けられただとか、肩がぶつかったぶつかってない、あいつが俺の邪魔をした。
よくある話だと、仲裁向けの人員が欠伸を噛み殺しながら向かう。
八十葉凍羽がそれは間違いだと気付いたのは、小さな煙が嘲るように立ち上ってからだった。


ああ、許せない許せない許せない!
ちょっとあの子に微笑みかけてもらえるあいつが許せない、自分よりもいい暮らしをしているのが許せない、
私よりもかわいいなんて許せない、定職に就いてるなんて、母親がいるなんて、怖いものが何もないなんて、
全部、全部、全部全部許せない!!
――ああ。だから、誰かは知らないが悪いけど死んでくれ。
街を埋め尽くしていたのは、誰も彼もが感情のタガを外され、理不尽な怒りを振り回すことで生じた嘆きと狂気だ。


酷い有り様だった。誰も彼もが何者かの悪意――否、むしろ誰のものでもないのかもしれない、純粋な悪意に扇動され暴力を投げつけ合う。

一般市民だけならば鎮圧も苦ではなかったのだろうが、被害の大半は偶然巻き込まれた外来の魔法使いたちと先行したイツビ組隊員の暴走に寄るものだった。
相棒のバイクに跨がり、前線を駆けずり回って指揮と魔法を飛ばす。
しかし、どれだけ叩けど何処から汲み上げて来ているのか、悪意は留まることを知らない。
機体を潰される、脚を潰される、目を潰される。意地と根性だけで立つ頃になってようやく、発信源が郊外の研究基地で一人ほくそ笑んでいるのを特定した。


『っし。それじゃ副隊長、そのソイツのお高く止まったツラぶっ飛ばしてくればいいんだな』
情報を共有してから幾らか後。
自慢の機動兵器である蒼銀の巨人を駆り、前線の砲撃をただただ受け続けていた新人隊員が通信を入れてきた。
「出来るのか」
『出来るか出来ないかじゃなくてやるしかない、っていつも言ってるのは副隊長っしょ?』
……ああ、そうだな。なら任せ――
『りょーかい』
酷く自分の命を顧みない男だった。それこそ、自分の身一つで誰かが救えるならそれはアドだ、なんて平気な顔して笑う奴だ。
返事を返してから、何を考えているのかを察する。察してしまった。
馬鹿、やめろと口にする前に、砲撃が此方へと向かってくる。そのすべてを蒼銀の巨人は受け止めた。
受け止め、コクピットも腕も派手に砕けながらも変形し、一機の飛行機へと形を収めていく。
剥き出しになったコクピットから、男は申し訳なさそうな笑顔を向けた。
ああ、違う。私は、そのようなことを教えたつもりも命じたつもりも、なかったのに。
返す言葉を投げ掛ける前に一条の疾風は何もかもを置き去りにして、男の座標目掛けて吹き抜けやがて爆発した。



……おい、来たぞ。しっかり、し……おい、おい!?」
悪意の発信源が絶たれ尚、暴走する市民の残りを鎮圧して回る折。
駆けつけてきた見慣れた黒い影の気配と声にゆるりと振り返った。
右足も、右目も真っ赤に染まって動きやしない。
体の動きについてこれず、或いはいよいよ気が抜けたのか。そのまま崩れ落ちる。
意識が飛ぶ前に左目が最後に映したものは、己の無様な姿を見て珍しく減らない口を絶句させた男の姿だった。



全て終わり、長い眠りから目覚めて白い壁に囲まれながら聞いた顛末は忘れることなどできない。
その日の残影と後悔は、眠りから覚めても、受け止め、ようやく少し前へと歩もうとしても尚、悪夢として己を責め続けるのだ。
お前一人だけ幸せになるなど許さない、と。


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