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作品№02「彼女らの前線」

全体公開 734文字
2018-10-06 11:26:28

長月が夢で見た世界の話を、皐月と語る。

Posted by @myon34

「昨日、夢を見た――

強い日差しが洋上に照り付ける午後、隣を進む緑髪の妹が突如そんな風に切り出した。
どちらかと言うと現実的である長月がそんな話題を出すのは珍しい。
ボクはそう思いながら、内容について尋ねてみた。

「その世界は、海が平和だったんだ。
かつての海戦も無かったし、私も普通の少女だった」

「平和かぁ。それはいいね」

まるで天国だ、とわざと明るく言ってみる。
なぜなら長月が言葉とは裏腹に剣呑な顔をしていたから。
続きを促されたと理解している長月は一呼吸ついて続ける。

「だが、そこでは陸で戦いがあった。
艦娘とは違う――私ではない少女たちが、陸の兵器の名で呼ばれ戦っていた。
私はどういうワケか、その娘たちの指揮官をやっていたよ。
舞台が陸になっただけで、そこで起こっている事はこっちと何も変わらなかった」

……そっかぁ。それは――

「ああ、どっちも地獄だな」

ボクが言い淀んだ続きを、長月がさらりと口にする。
どう返していいか分からず、横目で彼女の顔をうかがう。
笑っていた。

「私は、同じ地獄なら自力で足掻けるこちらの世界の方がいいな!」

そう言って歯を見せる。
……まったく、心配して損したよ。そうだ。この妹はそういう前向きなヤツだった。可愛いヤツだ。

とその時、旗艦から通信。どうやら敵艦を発見したみたいだ。

――鬼級の可能性だってさ、長月」

ボクは含みのある目で笑いかける。
彼女もまた笑顔で応えた。

「そうか。それじゃあ、地獄の鬼退治と行こうか!」

「そうだね!」

タービンが回る。振動が全身に伝わる。熱い蒸気が噴き出す。
ボクらがいる平和でない海。その海面に軌跡を刻みながら、ボクらは前へ進んでいった。


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