@sayu_simensoka
薔薇に隠されしヴェリテ
誰だよ、「ハラハラドキドキ・アバンチュール❤️」とかいうキャッチコピーを考えた奴は。
「地獄のデスロード周回ゲーム」これがこのゲームの正体だ
マリー・アントワネットと入れ替わってフランス革命の有名人たちと恋愛をする序盤のファンタジーパートに対して、後半の何をどう足掻いても処刑or亡命するしかないという離散エンディングはまさしくデスロード。救いは少しはあるけど、初回は史実エンド確定なので、まぁつまりみんな死ぬわな。
しかし恐ろしいほど面白い中毒性があるゲームなのである………。
まず最終的な歴史的人間関係を確認する。
特権階級と平民の対立が話の中心であるが、メンバーのうち2名が平民である。かつ、ラファイエットは革命中期に貴族でありながら民衆の側につく。そんな状況の中フェルゼンはルイ16世の亡命の手助けをするも失敗し、ルイは議会のジャコバン派、ダントン・ロベスピエールらにより処刑される。その二人も最終的に対立し、ロベスピエールらによりダントンも処刑台送りになる。ロベスピエールも最終的に処刑される。
地獄だ。
そう、どう足掻いても地獄である。
しかし誰も誰とてしたくて見捨てたわけでも、したくて殺したわけではないのである。そこがこのゲームの妙でルート選択によって見えてくる事実が少しずつ違い、ああうんなるしかないよねという理解が進み絶望が深まる。
「後悔をするな」
本作のキーワードであり度々出てくる言葉だが、きっとそれでもやりきれなさを抱えていない人はいないし、そこが魅力だ。この五人のうちの一人とともにフランス革命の時代を生き、共に喜び共に哀しみ後悔を抱えて生きる。これが本作の恋愛である。
ではその後悔の重みの何が魅力的なのか。
やはり歴史解釈に裏付けされたキャラクター性ではないだろうか。史実一つ一つに対して取捨選択を行い、時に大いに捻じ曲げ時に捨て去りながらもキャラ付けとして利用していっている。また、今回採用しなかったことやわかりにくい用語についても、作中の「本」や「辞書」「クエスト」でフォローと物凄く丁寧。歴史的事実やその意味づけもサクッとわかるように言及されている。
フランス史専門の人には刺されそうだが、それはそれとしてとにかく作り込みが丁寧で、その土台の上にキャラを描いている。この話は徹底して史実に従う、一周目で攻略した人を二周目で殺す側として眺めることもある。実際かなり精神的にかなりくるが、この裏付けの徹底によりその思考をある程度理解できるし、この人を放っておけないと思わせられる。
そうこれはフランス革命の栄枯盛衰の残虐物語であると同時に、当時を生きた彼らの人生の物語なのだ。
この作品のもう一つの魅力はそんな彼らがリーゼを中心に交流を重ねていくifの世界だ。共通ルートで描かれる物語の半分が主人公とマリーアントワネットの関わりだとしたら、残り半分が彼らが身分を超えた掛け替えのない同志になっていく過程だ。リーゼとの思い、そして彼らとの絆を通じて異なる価値観を知っていく。
そして、本来あり得ない出会いにより、旧世代のようにレールに沿った決められたあり方に自分を当てはめる生き方から、自分で選んだ自分になる生き方へと代わらざるを得なくなる。(という解釈で話が進む)ダントンもロベスピエールも自分の選んだ職業になり、夢を叶えていくが、その道中で本当にこれで良いのか迷っている。一方王になると定められたルイもどのような王になるべきかと苦悩する。ラファイエットも序盤で自分は何を目的にするのかと口にし、アメリカへ旅立つ。フェルゼンもまた自分が嫌いだと告白する。そして、アントーニア様にうっかりついて来てしまったリーゼだ。モラトリアムの無かった時代、決められた道をただ生きていくことはきっと簡単だが、それではいけないと気づいてしまう。
「後悔をするな」
そう言われたって後悔しないではいられない。けれども、その後悔も含め最善の道を選び取ったと信じて生きられるようにと願い歩んでいく自己実現の物語なのだ。
(乙女ゲームである必要がないとも言える)
(でも乙女ゲーム部分も魅力的だよ。うん。ロベピとの恋愛劇キュンキュンしたよ)
(ラファイエット様なんで途中から色ボケるんだろう……)
キャッチコピーの甘いアバンチュールのみならず苦いデスロードを乗り越えることを含んでこそのこのゲームだ。
デスロードを歩む攻略キャラに寄り添い生きる時間は辛いの一言で表せられない何かを心に残してくれるだろう。
(SPエンドもあるしね!)
あと、ここまで言ったけど基本的にはコミカルで明るい話です。本当だよ!!!
ロベピとルイが仲良くなったりするよ!!!!
仲良くなるからこそ後半の展開がしんどいとか言ってはいけない!!!!!
周回解放されるエピソードも結構あって普通に楽しいよ!
ルート別少しネタバレ
ルイ16世
一回目はこれ。デスロード周回ゲームだと気付かされた。
逃亡から逮捕、投獄から処刑までの想定外の時間の長さが逆に精神的にきた。
ラファイエットの裏切りからやばいやばいとなってからがとにかく長い、もうすぐ死ぬというところで半殺しのまま事態が進んでいく。辛い。
萌えポイントとしては無感情オブ無感情のルイ16世が段々と笑ってくれたり怒ってくれたりする様子が微笑ましい。最後に至る流れの中で王として決意し死んでいくところなど最初と見比べると圧巻。(でも他のルートより主人公にうつつを抜かしているせいで腑抜け感が……w)
ロベピ
本命だったがなぜか一周目がルイになっていたので二周目。
ドチャクソかわいい。ルイルートのヴァレンヌ逃亡事件の頃の地獄を思い出しながらこんな幸せでいいのかな? ってくらい幸せなラブコメを見れたところでルイ16世の処刑、ダントンと三人の最後の酒場での語らいと突然暗転していく。最後の語らいは本当にやばい。ジャックのところにいるのが一番幸せだったのかもな、という下りが辛い。幸せだったかも知れないが、彼らは自分の元にリーゼを留めることを選んでしまったのだ。デスロードの道半ばに来てしまった現実が突きつけられながらも後戻りはできない。ダントンを処刑し、病に倒れ、ついにロベピが処刑される側になったとき、サンジュストの「僕はロベスピエールさんの影で身代わりになるつもりだったのに」という悲痛な叫びを聞く。SPエンドのためにやり直していたら、途中の選択肢で「他人の影になるような生き方はいけない」というロベピのセリフを聞いてしまい余計に辛い。
この甘酸っぱい平民三人組の関係が愛しくて、リーゼちゃんのボイスが欲しい。
ラファイエット様
ラファイエット様、やばいですね。共通ルートで条件解放のシーンが多く、しかも連鎖しているので意図しないと出会えないシーンがたくさんあるのですが、破壊力が。
いや、酔っ払って襲いにくる展開からしておおよそやばい人感はあったんですけど、それに世話焼きと嫉妬深いが足されて暴走し、四年たちフェルゼン様の教育によりすっかり軟派になってしまい笑うしかない。これがフランス男のポテンシャルだというのか。
しかし気づけばロミジュリ状態に。考えてみればこいつ人の話を聞かねぇ。リーゼとの話もほぼ一方的に既成事実を積み重ねて、恋人面をし何と無く結婚の約束をしたが、お前どれだけリーゼの意思を確認した……? 全てを良く見ている人フェルゼン様に突っ込まれまくってて可愛い。
ルイルート以外でのヴァレンヌ逃亡事件のルイの意識がわかったのは貴重。レールから外れてみたくて逃亡し、ルイ・カペーとして処刑されることを喜ぶ。あとレオナール大活躍でしたね。
ラファイエット様軍人のお貴族様だから意外と他人の気持ちを想像できなくて、それだけにしんどいシーンは少なめ。鹿の園にぶち込んできたりして結構感覚がずれてる。ロベピめっちゃ突き放してくるけど、人の気持ちがわかる男だったんだなぁとしみじみ。そこが多分良いのだけれど。
あとジャコバン派が割れた後のロベピとダントンの断絶を見て、リーゼが居なければこうなるのかとしんどくなった……。彼女は何かできる主人公では無いけれど、平民の心を持った貴族である彼女がそばに居ることで視野狭窄から抜け出せるいい薬なのかなぁと思う。
ダントン
序盤はずっと笑ってました。もう、この可愛い奴め!!!! 優しさの延長のように結婚と口走り断られ、断られ続けながら考えて、仕事を見つけてまた求婚するもオーストリアに追い返してしまったり。こいつ本当にダメンズだ。爽やかに見せかけて実はロベピッピにコンプレックスを抱え続けていて、多分絶対ついてっちゃダメなやつやんと思いながら進んでいきました。主人公の選択肢が割りと強気なのでバランスが取れていた気が。多分リーゼちゃんこのルートが一番思いっきりいいのでは。
キーワードは行動しないと後悔できない。こいつは本当に想像力がなくて、いつも訳のわからん方向へ飛躍して行く。自分の意志と力で、望んでないような結果へと転がり続ける。中途半端。
読みながらなるほど評判が悪いルートなわけだと思い、けれどロベスピエールのことを殺さないために最後の展開なのかなぁと裏読みを頑張る。ジャコバン派内での孤立を恐れジャックを処刑しながらも色んな意見があっていいと思うんだよと言うダントン。いろんな意見があるというのは、つまり一人に責任を押し付けない防波堤になるということ。目立つリーダーが一人いて、他派閥の意見との調整を欠いて行動した場合、政権打倒の手段がリーダーの処刑に集約されてしまうことがジャックの件で示されている。当時ロベスピエールへの反発は若干だが存在していたし、その中で今の恐怖政治を続ければ破滅するしかない。サンジュストは「今更生き残りたいんですか?」と聞くが、多分ダントンは罪を抱えてでも生き残りたかったし、ロベピもジャックも生き残らせたかった。せめて、ロベピだけでも生き残らせたかった。それがロベピに「彼を殺してしまえば自分も破滅することになる」と言わせしめた処刑につながる。次はお前の番だがマイルドになってたね。
それが最後の博打に繋がると、いや深読みなんですけどそう理解することにします。
でもいざ死ぬ直前になると無になるのもダントン。諦めがいい。馬鹿め。
史実からして彼、乙ゲーに落とし込むのは難しくて、いやだって職を転々とするし最後汚職で処刑だし。それでも彼を攻略キャラに入れたバランス感覚が歴史ゲーとしては好きです。平民の成り上がり貴族についてはマップでも言及されてますし、ルイを中心に亡命の手助けをする王党派貴族フェルゼン、途中で民衆側にいく貴族ラファイエット、一方途中まで貴族と共に仕事をしていたダントン、最後まで孤高の人を貫くロベスピエール。乙女ゲームとしてだけじゃなく、フランス革命を色んな視点に立って描きたいという意志を感じます。いや、これ乙女ゲームなんですけど。
フェルゼン
「私は花瓶に飾ってある花のような男ですから」「(自分のことが)嫌いです」とかドキッとしましたよね。共通で聞いた「スウェーデンではモテないんですけど」の時点で、こいつは花のような鑑賞用ボーイとして自他共に認識しているのかなと薄々思っていて、そしたら本人から告白され、さらに自分のことが嫌いだと言われ、変えていきたいと伝えられる。独立戦争への参戦、時代の変化など様々なことに背中を押され、変わっていく。意外とくどくど悩むタイプなのが可愛い。
しかし、史実の彼について詳しくなかったため、ラストはおやこれはハッピーエンドか? って思ったところで心が無になりました。そのあとwikiって、作中で民は本当に弱いかと問い続けるキャラになった真意が、史実でマリーアントワネットへの思いとそれを殺した民への憎しみから心を閉ざし強圧的な行動を度々とり結果暴徒と化した民衆に殺されたということに由来すると知り呆然としました。多分フランス時代のフェルゼンって誰が描いてもこういうキャラになるんですけど、もし作中でリーゼを失ってたら史実の弾圧者貴族様ルートだよね……と思い……あのフェルゼンが……え………なんで………と。でも確かにリーゼを失ったら精神壊れそう。他の4人はきっとなんとかするんだけど、フェルゼン……愛に生きた男……。SPの方で平民のことを知れてよかった的な発言をするんですけど、彼の史実とのターニングポイントってそこなのかぁとしみじみと思いました。「目を逸らしてはいけない」と囁く姿、誰だってしたくてやったわけではない、というセリフにこの作品独自の成長を遂げたフェルゼンが凝縮されていると思います。
ダントンルートでこいつラファイエットと似てない? とかファンに殺されそうなことを思っていたのですが、フェルルートラストのアントワネット様への発言から、多分1のために100を捨てられるのがフェルとピッピで、それができなくて自壊するのがラとダントン。その決断をくどくど悩むのがフェルとダントンで、決断自体は迷わず迅速に物事を進めるのがラとピッピ。あとは平民と貴族っていう分け方、と美しい対称性を持った四人なんだなぁと思ったり。そしてルイ様異質だよなぁ……。
「民は本当に弱いですか」作中でのこのセリフって独立戦争から得た見識だと思うんですけど、ラは同時に従軍しながら「弱い民を守る」っていうの、一緒にいても最初から最後まで違う世界を見ていた二人で、だからこそ親友のようになっていたんだろう。あとルイ様の「本国に妻子がいる」は笑った。
どネタバレ感想
この作品の一番のネタバレ要素ってエンディングではなくミロワール会の存在だと思っていて、この会のおかげで本来は重ならなかったはずの人生が交差し、本来得られなかった筈の知見を得てそれぞれの人生が変わっていく。そこがこの作品の一番面白く一番苦しいポイントだと思います。結局参加者の五割がどのルートでも死に、リーゼちゃんは最後までこの会の存在を知らずに作品が終わります。ルイ様を、ひいては国を、リーゼちゃんを陰ながら守ろうとした男たちの交流をヒロインは最後まで知らずに終わるのはしめやかで切ないです。
アントワネット様
フェルゼンルートで見た姿が一番印象的です。フェルゼンの「もしかして、アントワネット様に恋をしているんですか」そして、最後の場面の「私あなたのことが嫌いなの」のくだりの愛おしさ。ずっとリーゼちゃんに問われ続ける彼女にしかできないことは何かという問い、その答えは結局アントワネットさまの親友として側にいたいと願い続けることだったのではないかと思います。愛されることは容易いが、愛することは難しい。リーゼは何かをしなければ意味がないと考えますが、最後の展開を見れば必ずしもそうとは言えないと思うのです。何かができるということに関してきっと人が代わりになることは容易いです。この人にしかできないこと、というのは能力ではなく心持ちの問題
隠しキャラ
ルイ様の異質さと対称になるキャラは人間に求められなかった件について。
フェルルートで触れた軸にことごとく当てはまらない、1も100も全てをとるか全てを捨てるかしかなく、そもそも決断権のない男! 序盤では人形と評される彼と対比できる人類はいなかったのだ……!!!
全ての種明かし編、次々と秘された関係が明らかにされていく。あの、すみません本編開始前に会っている設定を後出ししてくるの卑怯では。そして種明かし編のわりにもやっと終わる。
このルートでは独りにならなかったけど、他のルートのロゼーる悲劇では!???どうすんだよこいつ。助けてジョエル。
そして、そう考えると、ピッピルートのロゼールってジョエルが死んで、彼が気にかけてた女の子のために命使って後追い自殺しちゃった人だし、ダントンルートとか割と地獄。そして完全身代わりの薬のせいで、ルイロベの身代わりが誰か分からなくなる副作用。
サンジュストくん
このゲームを買った原因がロベピッピなら、このゲームを知る発端になったのが君だよ!
ヤンデレサイコホモストーカー!!! 後から来た姑。
ピッピルートのサンジュスト本当におもしろすぎて無理だし、正直史実からしてわけわからんラブレターを送りつけて気づいたら側にいたって感じなので、うん、ええ。はい。
勘違いかも知れませんが
国民と民について結構使い分けがなされているようにピッピルートで感じて、ただラルートのラがかなりごっちゃに使ってくるので確信が持てない。もしそこまでされていたとしたら本当にすごいし愛を感じる………。
リーゼとは何者だったのか
正直頭が悪いので恋愛ものの女主人公の行動の妥当性を考えたり全くできないんですよ、だから良い悪いとか全然考えられない。そういう思考回路を持っていない。
でも、そんな私なりに彼女が与えられた(マリーアントワネットの友達というアイデンティティを失ったとき)何になるべきか、という問いの答えはロゼルートで明確に出たと思います。
彼女は美しき過去の日、捨ててしまった何かの象徴なんだと思います。
ロゼルートで、自分の命を減らすのは嫌なのに何故躊躇なく薬を使えるのか、という問われ答えに窮し、慣れてしまったという結論にロゼールは達します。
フェルルートでヴェリテの史観からすると何故史実エンドでリーゼを殺さなかったのかというのが腑に落ちなかったのですが、つまり負債を負っているのはリーゼであり、史実エンドでは負債を本人が一番大事な相手を失う形で払っているわけです。だから史実エンドはめちゃくちゃ胸にくるし、辛いし、救いはない。彼女は救われない。
SPエンドはその負債の清算を周りが肩代わりする。彼女が知らないところで。
この辺のメカニズムについてもうちょっと明瞭に聞きたかった気がするし何はともあれ
ファンディスクをくれ