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[想P♀]秋の豆知識

全体公開 1600文字
2018-10-26 12:45:14

「はい、熱いから気をつけてねー」

石焼き芋を買ってきてくれた想楽君とPさんが事務所でおいもをもぐもぐするお話です。

Posted by @toasdm

 甘く香ばしい香りを連れて、想楽は事務所のドアを開けた。お疲れ様です、と振り向いたプロデューサーの笑顔が、想楽の心と疲れをほっこりと解す。
「お疲れ様ですー、はい、お土産ー」
 山村の不在を密かに喜び、想楽は新聞紙に包まれた焼きたての焼き芋を取り出すと、彼女に一本手渡した。
「はい、熱いから気をつけてねー」
「わ、石焼き芋!」
 ぱぁ、っと顔を輝かせた彼女に、二本しか買ってこなかったからみんなにはナイショだよー、と人差し指を立てて唇に当て、想楽は今度はトートバッグから牛乳を取り出す。
「やっぱり、焼き芋には牛乳だよねー」
 僕はまだまだ成長期だよー、と恐らくは、いつも隣に並ぶ大人二人を意識してなのだろうか、にんまりとした表情は何かを企んでいるようにも見えた。
「あー……食べたい、けど……
「食べないのー?」
 好き嫌いはだめだよー、と想楽は芋を半分に割る。黄金色の断面から立ち上る湯気が、事務所の中を秋の香りに変えていく。
「好き、ですそりゃあもう、大好きです、けど……
「んー?」
 はむ、と一口頬張って、んー!と目を細めた想楽と手元の芋とを見比べ、彼女は迷う。
「あー、もしかして、おならとか気にしちゃうー?」
「いっ、言わないでくださいよ!」
 けらけらと笑う想楽が牛乳を飲み、女の人って大変だよねー、とまた芋を一口頬張る。
「皮と一緒に食べるといいよー」
「え、皮?」
 甘い香りと美味しそうな想楽の姿に誘われて、とうとう覚悟を決めて芋を割った彼女に、想楽はもぐもぐとやりながらそう言った。
「胸焼けしないため、じゃないんですか?」
「そうだねー、プロデューサーさんはさつまいもを切ったことあるー?」
 ありますけど、とほかほかの湯気を立てる芋に目線を釘付けにしながら答える彼女に、想楽は続けた。
「切ったら切り口に、白っぽい汁出てくるのわかるー?」
「んーー♪」
 はむ、と頬張って至福の悲鳴を上げる彼女の前で、想楽は少しだけむっとした表情で、聞いてるのー?と不貞腐れる。
「あ、はい、聞いてます、出ますよね、白いの」
 ほんとに聞いてるのかなぁ、と苦笑する想楽も同じく芋を頬張って、それを牛乳で流し込む。
「あれ、ヤラピンっていうんだけどねー」
「♪」
 聞いてないなー、と半ば諦めながら、まぁいいや、と想楽は気にせず話し続ける。
「おいものデンプンって消化しづらいから、腸の中で分解されるときに炭酸ガスが出ちゃうんだってー」
 はむ、はむ。もぐ。口の中いっぱいに秋を頬張った彼女は幸せそうだ。いいけどさー、と想楽も牛乳と芋とを往復しながら説明する。
「でもねー、ヤラピンが消化を助けてくれるから、一緒に食べるとおならが出にくくなるんだよー」
……ん、もしかして、そのヤラピンって、皮の近くにたくさんあったりします?」
「わープロデューサーさん賢いー」
 よくできましたー、と彼女の頭を撫でて、想楽は彼女を褒め称える。あてつけのつもりだったはずのそれを素直に喜ぶ彼女の姿に、かなわないなぁ、と苦笑して、想楽は彼女に牛乳を差し出した。
「胸焼けはただの逆流だから、飲み物と一緒にどうぞー」
「へー……
 渡された牛乳をゴクゴクと飲み干して、彼女は芋の半分をあっという間に食べきった。
……想楽さんも、賢いですね」
「え、うわ、ちょ、プロデューサーさん!」
 やめてよー、と嬉しそうに嫌がる想楽の頭を、私にもしてくれたじゃないですか、と笑いながら彼女は撫でる。
「子供扱いしないでくださいー」
「してないしてない」
 賢い賢いと撫でる彼女があまりにも楽しそうだったのが、原因だろう。
「まあ、プロデューサーさんにならいいけどさー……
 想楽は芋を頬張りながら大人しく、彼女に頭を撫でられていた。
 秋の豆知識は事務所の中を、焼き芋よりもほっこりと優しく作り変えていった。


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