@KAINBUNSYO
【ソロ☆モン☆王 デュエルメギドラル! 第三話「インキュバスin高圧電流デスマッチ!」】
「そう遠くない未来。メギド72は日本において爆発的な流行を見せていた。
号泣必至の感動的なストーリー、緊張感を生むフォトンドリブンシステム、多様な戦術を生むタクティカルソート。
まさしく新世紀のRPGとして迎え入れられたメギド72は、シナリオだけでなくPVPにおいても大人気となり、今もっともホットなホビーとなっていた!
そしてこれはメギド72のPVPで高みを目指す“貴方たち”の物語である!」
~遊戯王のOP曲などを聞きながら各々がご自分のチームで戦うOPを脳内再生してください~
~おすすめはVoiceです~
光の粒子が渦を巻き、その中心に一人の男が舞い降りる。
白髪、傲岸不遜な雰囲気、そしていかなる女性も逆らえない圧倒的セクシー。
彼もまた、メギドラル中央の反撃により現代日本へと飛ばされていた。
「オレはインキュバスだ。女が俺を召喚す――」
しかし、彼の場合は少し事情が違った。
現代日本のマンションの一室に召喚された彼の目の前に居たのは……
「ハンバーグ、だと?」
ハンバーグだった。肉汁のいい香りがする。
「しかも良く焼けてやがる……!」
(インキュバス、あなたインキュバスね……?)
「なんだこの声? 女の声……どういうことだ。確かに女の気配がした筈なのに……! おい、女! 出てきやがれ!」
インキュバスは試しに自らの催眠能力で声の主を呼び出そうとする。
だが、人っ子一人現れない。
「俺の言うことを聞かないだと? 面白い女だ。どこに隠れてやがる」
(そうじゃないの……ねえインキュバス、私の話を聞いて)
「……まさか」
インキュバスはテーブルにドンと手をついて、ハンバーグに顔を近づける。
(やだ……そんなにじっくり見られたら恥ずかしいわ)
「馬鹿な……ハンバーグから声が聞こえる……?」
(ええ、元々体内に高濃度のフォトンを保持していたお陰でなんとか意識を保っていられるみたい)
「お前、この世界のヴィータのくせに俺たちのことを知っているのか?」
(勿論よ、この世界でメギド72はゲームってことになっているけど、その実はメギドラルやハルマニアに対抗してこの世界を守る人間を選別するためのアプリなの)
「嘘だろ……百点満点の答えだ。俺たちが聞いていたのとまったく同じ情報を持っているのか。おい女、何故そんなこと知ってやがる」
(この世界には、原初の三人と呼ばれるメギド72のプレイヤーが居るんだけど知ってるかしら?)
「原初の三人?」
インキュバスは首をかしげる。
いかんせん彼もこの世界に来たばかりだ。
(2018年10月28日、この世界でメギド72のリアルイベントが行われた)
「リアルイベント……サバトの類か?」
(近いわね。そこで、歴史上初めてソロモン王候補同士が顔を合わせて戦ったの)
「それは!」
インキュバスは驚愕に目を見開く。
「ペルペトゥムの儀式と同じじゃねえか! この世界にはメギドもハルマも幻獣も居なかった筈だろ!?」
(でも、そのアルス・ノヴァ血統に近いものは残っていた。DeNA社はその中で東京近郊に住んでいて高い適正を持つ人間を戦わせていたのよ)
「なんてこった……そんな時期からこの世界で戦う為の準備が進んでいたなんてよ……」
(そして、私はその大会で勝ち残り、運営の用意した候補を破った原初の三人の一人だった。優勝した後、全て教えてもらったの)
「だが……ハンバーグになってるのは何故だ?」
(あなたを召喚する前に、何者かによって呪いを受けたの。おそらく私たち三人とも……何者かに狙われていたんでしょうね。他の面子が無事ならいいんだけど)
「俺が間に合わなかったってことか……気に入らねえ」
インキュバスは拳を固く握りしめる。
(そんな顔をしないでインキュバス。私はこれでよかったと思ってるの。私はまだ戦える)
「どういうことだ。そんな姿でフォトンドリブンなんてできねえだろ」
(お願い、私を食べて……!)
――こいつ何言ってんだ。
インキュバスは真顔になる。
(私を食べれば、私から供給されるフォトンでインキュバスは戦える。私の代わりにフォトンドリブンをすることも……!)
「だが、食べた後どうなる!? その状態から元に戻ることはできない筈だ!」
(……)
ハンバーグから立ち上る湯気が揺れる。
彼女の心に残るわずかな迷いを映すように。
(戦わなきゃいけないの……私にしかできないことだから)
「違うだろ。ソロモン王候補はお前だけじゃない筈だ。勝手なことを抜かすなよ女」
(こんな姿でも、女の子扱いしてくれるんだね)
「あ? 女は女だろうが。たとえ俺を召喚した王であっても、俺に口答えしたり勝手な真似をするな」
(……うん)
「とりあえず今後のことを話し合うぞ。お前はどうやらこちらの知識も有るみたいだし、当たりってやつみたいだしな」
(何でも言ってね、ハンバーグになっちゃったけど、出来ることなら何でもするから)
「ちっ、ハンバーグになってる癖に無茶すんじゃねえよ。女、名前は?」
(ハンバーグ)
「ふざけてんのか」
これが彼女のハンドルネームであることを、インキュバスはまだ知らない。
*
数日後、二人は思わぬ窮地に立たされていた。
路地裏に潜みながら、二人は息を殺している。
(さっきの電話、誰から?)
「ムルムル、同じメギドだ。幻獣が出ているから気をつけろって」
(ちょっと遅かったみたいね)
「ああ、全くだな」
ジップロックの中でまだホカホカしているハンバーグを握りしめ、インキュバスをは舌打ちする。
彼らを追いかけている男たちからは、いずれも幻獣の気配があった。
「お、見つけたぞ~!」
路地裏に響く少女の声。撮影用ドローンのプロペラの音。
逃げ道を塞ぐように、三叉槍を持った赤や青や黄色の小さな幻獣が現れる。
「ハルマゲドンを起こすには、お前らを捕まえる必要が有るって言われたからな! 悪いけどついてきてもらうぞ!」
顔を上げたインキュバスは、ホットパンツを履いた扇情的な服装の幼女を目にする。
インプ、同じソロモンに召喚された身でありながらハルマゲドンを進めようとするメギドだ。
「インプ、お前があの幻獣どもの指揮をとっていたのか」
「ふひひ……言っただろう! ハルマゲドンが起きたら寝返るって!」
「そりゃ正直にどうもって感じだがよ。女のお前が面と向かって俺とやりあうのか?」
「ざんね~ん! 今のあたしはフォトンで保存された女の死体を使っているだけだから、お前のチャームも関係無いんだよなあ~! はい勝ち~!」
(死体……フォトンで保存された……肉の塊……)
「どんな姿でも、女は女だ。俺の魅力から逃れられると思うなよ?」
(インキュバス……!)
「行くぞ、女」
(ええ! 私頑張る!)
「おい、インプ! メギド72のPVPで決着をつけるぞ!」
インプは驚いて目を丸くする。
だがすぐにインキュバスの意図を察して不敵に微笑む。
「追放メギド同士のPVPはお互いの肉体を形成するフォトンの削り合いになるのは知ってるよな? 結果は見えてるだろ~?」
「ああ、本来ならこの戦いで負けた方の肉体はフォトンレベルまで分解され、元いたヴァイガルドへの門が開くまで魂の状態で例の装置に閉じ込められる」
(そんな!? 今ここで真のメギド同士のPVPを行うの!?)
「インプ、今回てめえに消えろとは言わねえ。俺が勝ったら幻獣を連れて撤退してもらうぞ」
「まあメギド体で悪あがきされるよりはマシか。じゃあ、あたしが勝ったらお前のソロモン王はあたしが頂くぞ?」
「この女は俺のものだ。誰にも好き勝手はさせねえ」
「あたしに与えられた最強チームを相手に、何時まで吠えてられるか楽しみ~!」
(インキュバス……信じているからね……)
インキュバスとインプは同時にスマホを構える。
「「メギドスタンバイ!!」」
かくして真のメギド同士のPVPが始まった。
*
説明しよう!
ソロモン王候補や契約したメギド同士の同意が有った場合、特殊なPVPが始まることがある!
これはこの世界における互いの肉体を賭けた戦いとなり、通常は敗者の肉体がフォトンに還元され、魂は元の世界に戻るまで一時的に封印されるのだ!
「インプちゃんのイタズラ配信! 今日のイタズラはなんと本物のメギドを使った高圧電流デスマッチ~!」
戦いが決まって早々、インプは嬉々としてドローンに向けて実況を開始する。
「馬鹿野郎……まさか俺たちの戦いを配信しているのか……?」
「フヒヒ、これをくれたおじさんたちに頼まれたからね。一般人には見せないよ」
(きっと私たちソロモン王候補を狙っている連中よ、インキュバス、きっとこの娘は騙されているんだわ)
「どうかな、元から怪しいとは思っていたんだ」
二人のメギドが揃ったことで場に充満したフォトンの力により、それぞれ五体のメギドの幻影が投影される。
インキュバスが呼び出したのはバフォメット、インキュバス、オロバス、ゼパル、デカラビア。
一方でインプが呼び出したのはゼパル、フォラス、パイモン、アスタロト、ウァサゴ。
(王道のパイモン主軸ラッシュパみたいね)
「現環境トップメタか」
(大丈夫、指揮はこっちで出すわ。私たちのチームとは相性が良い。思った以上に勝算は大きいと思う)
「任せるぞ、女」
(ええ、インキュバスは絶対に勝たせてみせるから)
二人の会話に気づかないインプは、二人が怯えていると思い込み、自慢げに笑う。
「へっへ~ん、これはあたしのソロモン王が元々組んでいたチームだぞ? すごいだろ?」
(インキュバス、会話で相手の様子を探って。インプのソロモン王が姿を見せないことが気になるの)
「インプ、お前……その契約したソロモン王候補はどうした?」
「あいつなら今頃小学……おっと、その手には乗らないぞ? 秘密だからなあ! なんでそんなに気にするんだ? インキュバスには関係ないだろう?」
(ふーん、小学生ね。良い情報だわ)
「なんだぁ? 聞いて悪いか?」
「ふひひ……インキュバス嫉妬してるんだろぉ? 自分のソロモン王がハンバーグだからって!」
(……っ!)
「女、ガキの言葉を一々気にするな」
(違う。私がハンバーグになっていることを知っている。やっぱりメギドラル中央の残党から情報を与えられているわ。小学生のソロモン王共々騙されているのかも)
「ふっ」
(なんで笑うの?)
「お前が俺の思う以上の女だったと気づいてな」
5つのフォトンがその場に浮かぶ。
フォトンドリブンの開始だ。
「あたしから! まずはウァサゴにアタックフォトンだ!」
「俺は自分(インキュバス)にチャージフォトンを配分!」
「次はゼパルにスキルフォトン!」
「まだだ。デカラビアにチャージフォトン」
「あたしはそのままゼパルにアタックフォトン!」
次の5つのフォトンが浮かぶ。
(インキュバス、自分にチャージフォトンを載せて)
「狙いが露骨すぎないか?」
インキュバスは小声で疑問を投げかける。
(それが良いのよ。それで今のインプの状態が分かる。どれくらいの知識を与えられているのか、知りたいもの)
「分かった……俺は自分(インキュバス)にもう一つチャージフォトンを与える!」
「あたしはパイモンにアタックフォトン!」
この時点で残っているのはアタック、スキル、スキルの3つのフォトン。
インキュバスが持つ女性に対する確定悪夢付与の奥義か、あるいはデカラビアによる列凍結覚醒スキルが発動する。
どちらを受けてもインプ側は攻撃の要を奪われることになる。
(デカラビアにアタックフォトン、バフォメットにスキルフォトン)
「俺はデカラビアにアタックフォトンを与える!」
「あたしはフォラスのオーブ起動だぞ!」
「バフォメットにスキルフォトンを与えてターンエンドだ!」
「あははは、インキュバスの狙いがわかり易すぎ!」
「だ、そうだが?」
(完全に自我を奪われている訳じゃなさそうね。あくまで騙されるか、簡単な暗示をかけられただけだと思う)
インキュバスはそれを聞いて酷く邪悪な笑みを浮かべる。
「だったら加減は要らないな」
その時、ウァサゴの攻撃がデカラビアに直撃。
派手な光を放ってデカラビアがよろめく。
すると同時に、インキュバスの周囲の空間が火花を散らす。
「ぐっ、があああああああああああ!!!!」
(インキュバス!?)
「あーっはっはっは! イタズラ大成功! 高圧電流デスマッチって言ったじゃん!」
説明しよう!
この戦いは一方的な高圧電流デスマッチ!
インプのメギドとしての力により、操るメギドのダメージがインキュバスに高圧電流として還元されるのだ!
(大丈夫なのインキュバス!?)
「心配要らねえ……俺はメギドだ。そっちこそどうだ?」
(私なら大丈夫、構わずフォトンドリブンして……ハンバーグだから痛みも感じないの……)
「負けたらそのハンバーグも黒焦げだぞ……ふひひ」
続いて突き刺さるゼパルの覚醒スキル微塵切り。
デカラビアもこれには耐えきれない。
「うぐぉああああああああああああっ!」
「フヒヒヒ! いい声を――ひゃあっ!?」
インプが奇声を上げてその場に崩れ落ちる。
デカラビアが倒れたことにより、インプのチーム全体にオロバスのマスエフェクトによるダメージが入ったのだ。
自爆戦術。かつてハンバーグをPVP大会で女帝の地位にまで押し上げた得意戦術だ。
(インキュバス……あなたなにしたの?)
「あっちが妙な細工をしていたからな……こちらも仕掛けを返しておいた」
説明しよう!
インキュバスもまたインプと同様に仕掛けを行っていた!
インプが電撃を操るように、インキュバスは女性を操る!
女性の肉体を使っているインプもまた、インキュバスの力には抗えないのだ!
「な、なんかくすぐったいぞ……!?」
「そうさ! そっちが高圧電流ならば、こっちは感度上昇だ! インプ、てめえのありとあらゆる感覚を鋭敏にしてやったぜ!」
そう、感度三千倍である!
「な、な、なんだとぉ……!?」
(インキュバスあなた、幼女相手に……!?)
「ちょっと待て。いくら俺が淫魔だからってなんか勘違いしてるだろ! 今回はあっちから仕掛けてきたんだぞ! 拗ねるなよ……後で可愛がってやるからさ? な?」
(……もう! ずるいわ!)
インキュバスがなんと繕おうがインプの感度は三千倍である。
しょうもないやりとりの間に装備させたSSRオーブハイドンの力でデカラビアは復活。
続いて、フォラスのバニーとウァサゴの効果で覚醒を満タンにしたパイモンがそのままデカラビアに奥義を叩き込む。
「ああ! パイモンの奥義が虫の息のデカラビアに!?」
(ターゲッティングの仕様上そうなるのよね。ご愁傷様ですけど)
「これで残った攻撃は凌げそうだな」
などと言っていると、二度目のデカラビアの大爆発が始まる。
「ぐああああああああっ!」
「ひょぇええええ~~~~~っ!」
高圧電流を受けたインキュバスが、感度上昇を受けたインプが、悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。
「も、もっとすごい電流がいくぞ! 降参するなら今のうちだからな!」
「そういうてめえこそちびるんじゃねえぞ! 淫魔の本気はこんなもんじゃねえからな!」
今度こそデカラビアが倒れたことでターゲットはゼパルに移る。
インプ側のゼパルがアタックと覚醒スキルとスキルを、そしてパイモンがアタックを放つ。
これによりゼパルが落ちる。
「ぐああああああああっ!」
「ひょぇええええ~~~~~っ!」
(ごめんねインキュバス……私がハンバーグなばかりに貴方だけが高圧電流を……)
そしてさり気なくバフォメットが点穴とゲージを貯める。
「はぁーっはっはっは!」
「くっ、人が死にかけてる時にこれを聞くと無性にイラッと来るな……!」
(駄目だよインキュバス、このバフォメットさんは本物じゃないんだから)
「わかってる」
既にインプは上がりすぎた感度によって虫の息だ。
そして、ゼパルにデカラビアという比較的攻撃力の高い二人から自爆攻撃を受けたインプのチームも中々重い被害を被っている。
しかもデカラビアは復活。インキュバスもまだ覚醒が溜まった状態でピンピンしているとあって穏やかではない。
――と、いうか。
「お、お、おかしいぞ……!? あいつらズタズタになっている筈だったのに……! どうしてこっちが……!」
チェックメイトだ。
次のターンでインキュバスの奥義が間違いなく炸裂する。
「どうしてだろうな。俺もこの戦術を初めて聞かされた時は震えたよ」
「こんなの聞いてない……もうとっくにハンバーグにされたような相手だから……勝てるって……!」
(騙されているみたいね。助けてあげないと……でも、うん)
勝ってから考えよう。ソロモン王はそう決めて、さらなる追撃に移る。
2ターン目が始まった。現れたフォトンの中にはアタックフォトンが残っている。
(やっちゃって、インキュバス)
「無論だ」
インキュバスは迷うこと無く自らにアタックフォトンを乗せた。
「う、うううううう……!」
「なんだ、急に悩み始めたぞ……?」
(これからインキュバスの奥義が間違いなく入るでしょう。そうなったらウァサゴとゼパルは間違いなく倒れるわ)
「まあ、そうだろうな」
(でも相手だってそれは分かっていた。分かっていたけど、その前にもっと素早く場を荒らす事ができると思っていたの。今起きているのは相手にとって厄介な事態。想定を超えた状況で慌てるのは人間だけじゃない)
「だからどうしようか迷っているという訳か」
(多分パイモンだけでひたすら奥義を繰り返してくるから気をつけてね)
「ああ、だが俺たちの勝ちで間違いは無さそうだな」
(でも……)
「どうした?」
バフォメットはアームストロングで点穴を消費しないままパイモンに攻撃開始&スキルで点穴とチャージを溜める。
オロバスは自らにハイドンのオーブで攻撃力上昇を与える。
インプはというと、パイモンにアタックフォトンを乗せ、フォラスのボーパルバニーを起動させた後、スキルフォトンを溜める。
(あの、でもね、最悪インキュバスには倒れてもらうけど……ごめんね? インキュバスの犠牲、最大限活用するから……だから……)
二ラウンド目の戦闘が始まる。
インキュバスに注ぎ込まれたフォトンにより、彼はメギドとしての本来の力を取り戻す。
「きゃあきゃあ騒ぐんじゃねぇよ!」
幻影のインキュバスと、本物のインキュバスの声が重なる。
列を薙ぎ払う奥義により、ウァサゴとゼパルが陥落する。残ったパイモンもバフォメットのアームストロングで虫の息だ。
(イ、インキュバス……?)
「女、お前はもっと胸を張れ。申し訳なさそうにするな。王なら王らしく、胸を張って俺に命令しろ」
しかしその直後、パイモンの奥義がオロバスに突き刺さる。
更に出力の上がった高圧電流がインキュバスを貫く。
「ぐおおおおおおおおっ!!」
(インキュバス!)
「お前の勝算に……間違いはねえんだからよっ!」
耐久力の高いオロバスはその攻撃を耐える。
だがまだだ。パイモンは自らの奥義の効果により、アタックフォトンを自身に追加する。
そしてフォラスのスキルも発動する。アタック強化をされたパイモンには、まだアタックフォトンが三つ残っている。
「まだだっ! あたしはまだやれる!」
そうだ。オロバスを倒すことは可能だろう。
(いいえ、インプさん。あなたにはもう勝算はありません)
だがオロバスを倒したところでもう勝ちの目は無い。
オロバスはハイドンによって自らの攻撃力を強化した。
それが意味するところとはすなわち、自爆ダメージの増加である。
同じ自爆であっても、オロバスの自爆の倍率は1.5倍。ハイドンでバフを受けたことでその威力は計り知れないものとなっている。
インプのチームは攻撃するほどに勝算を奪われる状態に入っていた。
「っがあああああああ……!」
「ひょ、ひょええええええ~~~~~~~~~!」
(インキュバス、もう少しだから耐えてね)
インキュバスは無言のまま、懐のハンバーグを見つめてニィと笑う。
一方のインプは地面に倒れたままビクビクと痙攣したままだ。
ここから先はもはや語るまでもなく、点穴を溜めているバフォメットと無傷のインキュバスによる蹂躙しかなかった。
繰り返される自爆により深刻なダメージを受けていたインプのチームに、そこから立て直す術は無い。
(……あまり手の内を見せずに勝てて良かった)
結果、感度三千倍に耐えられず気絶したインプが路地裏に転がることとなった。
主を失った幻獣たちはインキュバスが一睨みすると蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。
「まだ別の戦術が有るのか?」
(同じチームでもオーブ入れ替えだけでざっと三パターン。メギドの入れ替えがありなら八パターンは有るわね)
「なんでもありだな」
(なんでもありじゃないわ。できることしかできないもの。でも――)
「でも?」
(できることなら、なんでもするわ。貴方のためですもの)
「ふん、良い女だ……」
(さてインキュバス、急いで逃げましょう。一応こんな時の為に残りのチャンピオンたちと合流地点を幾つか決めていたの)
「インプは良いのか?」
(気配が近づいてくる。おそらくインプを回収しに来た何者かよ。これ以上の消耗をしたら今度こそ私たちが危ないわ)
「背に腹は代えられない……か。まあいい。お前さえ居れば勝算はいくらでもあるさ」
インキュバスは人目につかない路地裏を駆け出す。
懐のハンバーグはまだホカホカだった。
【ソロ☆モン☆王 デュエルメギドラル! 第三話「インキュバスin高圧電流デスマッチ!」 終】
~遊戯王のED曲などを聞きながら各々がご自分の推しと良い感じに過ごすEDを脳内再生してください~
~おすすめはあの日の午後です~