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[硲P♀]おしおき

全体公開 4 1618文字
2018-12-06 12:47:36

「おしおきだ」
「はいっ!?」

タイトルがおしおきって時点でなんかもう、色々ときめいてしまうはざませんせとPさんのお話です。

Posted by @toasdm

 眼鏡の奥の瞳がすっと細められて、ふむ、と何かを納得した声。怒らせて、しまっただろうか……?おずおずと顔を上げた彼女の目に映ったのは、普段と変わらない道夫の表情だった。
「おしおきだ」
「はいっ!?」
 にやりと笑った道夫の口から発せられた言葉に、彼女はたじろぎ、一歩後ろに後ずさりする。逃げるな、と近付く道夫は、彼女が退いたよりも半歩ほど距離を増やした。
「お、おしおき、って」
「期待してるのか」
「してませんしてませんしてません!!」
 ぶんぶんと激しく首を横に振る彼女に、また道夫は近付いて距離を詰める。それに押されてさらに下がった彼女の背中に触れた壁の冷たさが、彼女に妙に高い声をあげさせた。
「んひゃぁっ!!」
「はは」
 妙な声を出す、と顔を近づけてくる道夫の人差し指が、彼女の顎の下に添えられた。くい、とほんの僅か、軽く力を入れて道夫は彼女の顎を上げさせる。
「あ、顎クイ……
「やはり、期待しているな」
 ふるふると小刻みに震える彼女の唇に、顎に触れた右手の親指がそっと触れて、するりとなぞる。絶妙な力加減、化粧っ気のないヌードの唇が、道夫の言うように、何かを期待して薄く開く。
……積極的な女性というのも良いと思う」
 吐息がかかるほどの至近距離で、首に角度をつけたまま道夫は囁くように彼女に言葉を紡いでいく。紡がれた言葉の一糸が彼女にくるりと巻きついて、その糸はやがて束になり、紐になり、縄になって彼女をぐるぐると捕らえていく。
「私も積極的になるべきだと、君を見ていると思うこともある」
 ぐるぐる。ぐるぐる。道夫の言葉と色気と熱とが、彼女から身動きの自由を奪うようにまとわりついていく。事実彼女は、目の前の道夫から発せられる全てによって、呼吸すらうまくできなくなっている。自分の拍動を感じるくらいに、胸は強く、苦しく早鐘を打っている。
「君と同じ事を私もしよう」
 それがおしおきだ、とまたにやりと口元を綺麗に歪めて、道夫は眼鏡をスッと外した。身構えた彼女が耐え切れずに目を瞑ると、顎に添えられていた人差し指が、彼女の頬をつぅ、と撫であげて、目尻にちょん、と触れる。
「こら。目を開けなさい。私は目を開けていた」
「うぅぅ……
 無理です、と絞り出すようなか細い声が限界を告げるも、道夫は頑として譲らず、じっと彼女が目を開けるのを待っている。
……へぅ」
「私がどれほど驚いて――
 目を開ければ、真剣なのにどこか余裕のないような、それでいて慈しむような優しさを湛えた道夫の顔が視界を埋めている。指先は再び顎をクイっと持ち上げて、熱視線が絡み合う。
「どれほど君に翻弄されているか、わかっているだろうか」
 そんなつもりじゃ、と言い訳をする唇に、知ったことかと自身の唇を重ねて道夫は塞ぐ。重なった唇の奥で息をのむ音が聞こえたが、それはどちらから聞こえたものなのか、近すぎて、よくわからなかった。
「んんっ……!!」
 先ほど、ほんの出来心で、立ち話の合間にふと、彼女は道夫の唇に吸い寄せられるようにしてキスをしてしまった。何してるんだろと驚いたのは彼女も同じだったが、それ以上に道夫は、彼女から積極的にそんな風にされて、何をしているのだろうかと心底驚いた。ときめいて、翻弄されて、心がかき乱されて頭がどうにかなりそうだった。
「おしおきだ」
 もう一度繰り返して、道夫は彼女に、自分がされた以上のおしおきを返していく。
「み、ちおさん、まって、私そんなにしてない」
「喜んでいるようではおしおきにならない」

 君が嫌だと降参するまで私は続けるつもりだ――

 いやじゃない、って、わかってて、そういうことを言わないで!と彼女は目線で訴えたが、道夫はそ知らぬ顔をしたまま角度を変えて何度も彼女にキスを降らせる。
 もっと私にときめきなさい、と耳元で囁く声は、おしおきを楽しんでいるようにも聞こえた。


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