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『わたし』が『私』になった理由

全体公開 1592文字
2018-12-11 14:26:34
Posted by @alter_r8

……物心ついたころは、わたしはわたしだった。
 一つ年上の姉とわたしは誰が見ても仲の良い姉妹だったと思う。
 一緒に遊んだりもしたし、同じものを食べて同じ顔をしたりもした。
 そうやって普通の女の子として生きていた時の、六歳ぐらいの時
 ふいにわたしと姉は父上に呼び出されて、話を聞かされた。
 話している内容のほとんどは覚えていないけれど、この言葉だけは覚えている。

 姉の方が血統をより濃く受け継いでいる、よって姉を正式な跡取りとする。
 今後お前は姉のサポートに回り、姉の従者として生きろ。

 それから"私たち"の生活は一変した。
 最初の頃はそれまでと同じように過ごそうとしたけれど、屋敷の使用人も父上もそれを見つけると咎めた。
 その懲罰として、時にはご飯を抜かれ、時には部屋に1日軟禁まがいの事もされた。
 わたしも少しずつ理解し、姉との距離を適切に保つようになった。

 当の姉本人は、すごく悲しげな顔をしていたのを覚えている。

 だから、わたしはもっと従者らしく振る舞うべきだと思っていた。

 そんな生活が三年続いたある日、わたしの世界はまた一変することになった。
 お出かけから帰ってきた母上と姉が、一人の孤児を連れていた。
 姉はその孤児を教育し、自らの従者にすることを父上に告げた。
 父上の顔はきっと酷い表情だったと思う。けれど、母上と姉の強い訴えに渋々身を引いた形だったのだろう。
 そして姉は父上に求めた。従者は得たのだから、妹も普通の子として扱って欲しいと。
 それにも父上は反対したみたいだったけれど、やっぱり姉からの強い要望に頷くしかなかったようで。

 「今日からまた、私たちは"姉妹"よ。」

 こうして、わたしはわたしの与り知らぬところで従者の任を解かれたのだ。
 けれど、今までの生活をなかったことにできるはずもなく。
 最初はぎくしゃくしながら距離をはかり、無意識に一歩身を引いていたと思う。
 それでも姉と母上、姉の従者が世話を焼いてくれたこともあって、二年も経つ頃にはだいぶ打ち解けて。

 そんなある日、母上が死んだ。父上は"事故死"だと言っていた。
 わたしも姉もその言葉を信じてはいなかった。だって、母上と父上は良く喧嘩するようになっていたから。
 だから、きっと父上の仕業だと思った。父上へいつか問い詰めようと思っていて……

 ある日、姉が死んでしまった。何者かの手によって"殺された"。

 その時の記憶は、ない。けれど、使用人の話では魂でも抜けたかのようにわたしはただ茫然としていたらしい。
 わたしの記憶があるのは、姉の葬式が終わった後からだ。
 姉の居た部屋で、姉の座っていた椅子に座って、ただ漠然と致命的な何かが欠けた部屋に居た。
 そんなわたしに父上は淡々と告げる。

 跡継ぎはお前になった、と。

 それから、わたしは姉が受けてきた教育と同じ教育を受けることになった。
 姉が習っていたこともやった。姉が出来ていた勉強もできるように努力した。
 姉の従者だった彼とも言葉を交わし、ついてきてくれる事を確認した。
 一年で父上で言うところの外に出しても恥ずかしくない魔法使いになって、家を出た。
 行く先はマビノギ学園。姉が転入するはずだった、その場所へ。

そうして、『わたし』は『私』になった。























































































































姉さんが眠る、あの " アドアステラ " へ。いつか、きっと。


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