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サンタクロースは存在するのか

@oritk12
リタ@ 蜜藤
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2018-12-13 08:20:08

営業部×経理部の話。
番外編です。

「そういえばサンタさんって何歳まで信じてた?」

昼休みの終わり。今年のクリスマスは平日だねと言う話題から、何となくそういう話になった。

「私小学校上がる歳」
「うちは最初から親だったなぁ」
「俺んち弟がいたから中学まで信じさせられてた」
「まじか。あ、でも私も小学校高学年まで信じてたわ」

皆が思い思いに発言する中、「じゃあ長谷部主任はどうなんだろうね」と誰かが言って皆黙った。まったく想像できなかったからである。長谷部主任とは、我が社の二代イケメンに数えられるほどものすごくお綺麗な顔をしたもの仕事のできる(異例の速さで出世した)厳しいけど部下想いの素敵な上司だ。私生活は一切謎。超高級マンションに住んでるんじゃないかと勝手に思っている。

「やっぱ最初から親パターンじゃない?親はやりたかったけど賢いから見破ってたみたいな」
「あー、でもめっちゃ育ちよさそうだし、さすがに幼稚園くらいまでは親御さんがきちんとサンタやってたんじゃない?」
「案外今もまだ信じてたりして」
「それはない」
「ないな」
「ですよねー」

それぞれ好き勝手に言いあっていると、ちょうど外出していた主任が帰ってきたので聞いてみることにした。

「長谷部主任、サンタさんって何歳まで信じてました?」
「藪から棒になんだ」

眉間に皺を寄せながら、訝しげな顔をする主任に麗しい顔が台無しですよと言いかけてぐっと飲み込む。昼休みも残り少ないのだし、脱線している場合じゃない。

「いや、さっきそういう話になりまして」
「信じるも何もサンタはいるだろう」
「......え?」

あまりにもサラッと言われて、一瞬言葉に詰まった。こんな真顔で冗談言うなんて主任らしくないから驚いてしまった。

「だから、サンタはいる」
「えーと、ちなみにいつまでプレゼント枕元にありました?」
「いつまでというか去年も普通にあったぞ?」

私の背後がざわついた。主任の顔は嘘をついてるようには見えない。もしかして親にめちゃくちゃ甘やかされてここまできてしまったのだろうか。確かにこんな綺麗な息子甘やかしたくなるのはわかるけど!!

「......今、御両親と一緒に住んでます?」
「いいや、親は九州にいるが」
「クリスマス実家に帰るとか」
「年末年始の忙しい時期にそんなことできるか。さすがに正月は顔を出すがな」

ジーザス!!親御さんじゃなかった!!

「つ、つまり主任の元には今もまだサンタさんがくると」
「正確には何年か前から来るようになった」

ほんのり顔を染める長谷部主任に。意味がわからず思わず後ろを振り向くと、皆ポカーンとしている中、同期の一人がなんとも言えない顔で肩をぷるぷるさせていた。え、何、どうしたの。

「それってどういう」
「は、長谷部主任、営業部の領収書ちょっと足りなさそうな気配するんで回収してきてもらえます?」

私の言葉を遮って、さっきまで震えていた同期が手を挙げた。

「何で俺が」
「前にそう約束したじゃないですか」
「した覚えは」
「いいから行ってくださーい。長谷部主任が行くのが一番速いでしょ」
「......今回だけだぞ」

昼休みが終わるタイミングで長谷部主任は営業部に向かっていった。この子長谷部主任をパシリに使うなんて怖いもの知らずにもほどがある。
けれど主任がいなくなったおかげで、止まっていた時間が動き出した。

「いやー、でも意外だったなぁ。長谷部主任がサンタ信じてるの」
「バッカ、あれは暗に惚気でしょ。クリスマスにきちんとプレゼントくれる恋人がいるっていう」
「え、そうだったの!?」

な、なるほど。長谷部主任がそんなことするとは想像もできなかった。

「うーんそうかなぁ。案外本当に信じてるんじゃない?」

怖いもの知らずの同期がぽそっと言う。

「どういうこと?」

尋ねると、同期は曖昧に笑って、それきりパソコンに向かってしまった。

「だから恋人でしょ?良妻賢母な美女と噂の」
「いやー、そう思ってたら長谷部主任は惚気ないでしょ。恋人はサンタクロースって、むしろ長谷部主任がサンタする側じゃん」
「たしかにー。え、じゃあ何?ほんとに長谷部主任のとこにはサンタがくる......?」
「あんだけ神様に愛されたみたいな人なら、いっそありえるかも」
「一周まわってホラーじゃん!!うちらクリスマスの話してたのに!!」

皆が自由に考察するなか、私はというと、長谷部主任のほんのり頬を染めた顔を思い出していた。あんな顔もできるんですね主任。

......あー、私も彼氏欲しい。







*************



「経理部だ。領収書出てない奴はいるか」
「あ、長谷部くん。こっちこっち、僕出てない」
「またお前か燭台切」

憤慨した様子でこちらに向かってくる長谷部くんに思わず頬がにやけてしまう。部署が違うと会社で会うのもなかなか大変だからね。

「はい、ごめんね」
「まったく。こうやってまとめておくことはできるのになんで提出はできないんだ」
「つい忘れちゃって」

長谷部くんの声は呆れていたけれど、顔がどことなく嬉しそうなのは多分僕の気のせいじゃない。年末の繁忙期、少しだけすれ違いが多かったから、彼もまた僕とあえて嬉しいと思ってくれてると勝手に信じることにする。

「次は気をつけろ。......あ、お前サンタクロース何歳まで信じてた?」
「また突然どうしたの。君がそんな話するなんて珍しい」
「いや、さっき聞かれて」
「ふうん?で、君はなんて答えたの?」
「信じるも何も存在するだろって言ったら変な顔された」
「はは!」

真面目な顔で首を捻る長谷部くんがあんまり可愛くて、僕はつい笑ってしまう。

「なんだよ。だっているだろ。お前のとこにもくるだろ!?」
「うんうん。そうだね」

普段厳しくて真面目な彼がサンタクロースを信じているなんて、アンバランスさがたまらなく愛しい。
まぁこうなったのは僕のせいなんだけど。

付き合い始めて最初のクリスマス。彼は世間一般のクリスマスの過ごし方をよく知らなかった。家がそういうのをやらないというか、忙しくて出来なかったらしい。クリスマスケーキとチキンを用意して、簡単に飾り付けしただけでもすごく喜んでいたから、クリスマスプレゼントとは別に、ほんの出来心で枕元にプレゼントを置いてみた。

朝起きた時の長谷部くんの驚きようと言ったら、可愛さで国が滅ぶレベルだった。

「これ、もしかして」
「サンタさんからのプレゼントなんじゃない?」
「俺、子どもじゃないのにいいのか!?」
「子どもの頃渡せなかったから今くれたんだよきっと」

我ながら子供だましもいいところだなと思ったけれど長谷部くんはそれを信じたし、なんならいっそ「光忠のところにはきてないのか」としょんぼりしてたくらいだ。そのせいで次の年から自分用に簡単なお菓子(長谷部くんの好きな物)を用意するハメになったのは誤算だったけれど、ともかくそれから僕は彼の恋人兼サンタクロースになったというわけなのである。

「他のやつは子どもの頃に貰っていたから今は来ないのかもしれん」
「そうだよ。羨ましがられちゃうから内緒にしてる人もいるんじゃないかな。その人のためだけのサンタさんなんだし」

そういうと長谷部くんはハッとした顔になって、そうか、と呟いた。うん、ほんと可愛いなこの子。

そのままフロアに戻っていく背中を見送って、僕はまた笑ってしまう。

長谷部くん普段はしっかりしてるのに変なところでピュアで抜けてるから、サンタさんだって信じちゃうんだ。あんなにピシッとスーツをきて、姿勢がよくて洗練された後ろ姿を持つ彼が。
でも、別にいいんじゃないかなと思っている。僕が一生責任をもって、彼のサンタさんをするからね。
今年のプレゼントも、すでにデスクの中だ。








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