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[都築P♀]ヴァイツェン

全体公開 1 1135文字
2018-12-13 19:10:34

「ドルトムントは少しアルコール度数が高いよ」

ドイツに限らずビールの味を色々教えてくれる都築さんに食われるのも時間の問題なお話です。

Posted by @toasdm

「ピルスナー、チェコだね」
 淡い金色の満ちたグラスを指して、圭は彼女に勧めた。爽やかな飲み口はジュースのようとはいかないまでも、飲みやすく、舌に馴染んだ味だった。
「エールはイギリス」
 これはペールエールと指したものは先ほどのピルスナーよりも一段階濃いような色合いで、促がされるまま口にすると、ホップの苦味が広がった。
「ドイツ、ヴァイツェン」
 飲みやすいよ、と勧められるままに口をつけると、すぐにバナナのような熟した香りが彼女の鼻腔をくすぐった。ビール特有の苦味はほとんど感じられず、フルーティな口当たりは確かに、圭の言うとおり飲みやすかった。
「アルトはエールと似てるんだ」
 濃い色合いが苦味を思わせるようだが、確かに、エールに似た飲みやすさもある。アルトの方が少し濃厚で、飲んだ後口の中に黒糖のような存在感が残るようだった。
「ケルシュは色が薄いけど、味はそんなに薄くないよ」
 これもドイツ、と指差したグラスを手に取ると、繊細な淡い香りが立ち上る。苦味も香りも飲みやすく、普段着のようだと彼女は思った。
「ドルトムントは少しアルコール度数が高いよ」
 飲み過ぎないようにね、と微笑む圭に注意されたが、既に六杯目になるのだから飲みすぎも何もない。ヴァイツェンほどではないが、苦味が少なくすいすいと飲める。これでアルコール度数が高いのだから、確かにこれは注意が必要そうだ。一通りテイスティングを終えると、彼女はふわふわとした気持ちになる。
「どれが一番好き?」
「んえぇ、とぉー……
 軽く呂律の回らない彼女が指差したのは、三番目に試飲したヴァイツェンだった。
「ふふふ、そう。ヴァイツェンはフルーティーだから女性人気も高いんだ」
 お気に入りの一杯をどうぞ、と圭はグラスにヴァイツェンを注いだ。
「つづきさんはぁ、飲まないんれすかぁ?」
 八割がたできあがってしまっている彼女の揺れる体を優しく支えて、圭はにんまりと笑って耳元で囁く。
「僕はいいよ。二人で酔っ払ってしまったら、何もできなくなってしまうからね」
 なにもってぇ、ともたれた肩に頭を預けて見上げた彼女の目に映ったのは――

「男の人の前で無防備に酔っ払うのはよくないよ」

 ビールのような金色の髪が縁取った、圭の妖艶に揺れる瞳だった。僕も男だからね、と酔わせた彼女を腕に閉じ込めて、圭は耳元で囁いた。
「あまり可愛らしいと、酔いが醒めるまで待てなくなってしまいそうだね」
 冗談を、と抵抗しようとした唇は、あっさりと塞がれる。

「ふふ……甘い、な」

 圭が指したのは、彼女の唇に残るヴァイツェンの味のことなのか、それとも彼女の見当のことなのか。わかるのはもう少し先になりそうだった。


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