:

ads by microad

贈る言葉

Publish to anyone 1favs
2018-12-14 23:56:30

なんとかギリギリ間に合った……。
Nさん主催のPSO2 EP5 Advent Calendar 2018 https://adventar.org/calendars/3010
僭越ながら14日目を担当させていただきました。
ありがとうEP5。お疲れ様EP5の気持ちをこめて。

シャオを筆頭に様々な人物達から休息を言い渡されマイルームへ戻ると、そこはいつもの、何も変わらぬ風景。
背後から聞こえる自動扉の閉まる音に緊張の糸が切れたのか、その場にうずくまり、息を吐いた。疲労で身体が重い、動くのも億劫だ。瞼を閉じれば、様々な光景が浮かんでは消えていった。ともかく、まずは言われた通り休息でもとるか、と瞼を上げ立ち上がった。

  ……困った。眠れない。ベッドに横になり瞼を閉じるも眠気が一向に訪れない。湯船に浸かり身体を芯から温め、お気に入りのドリンクを飲み、さぁ寝るぞと身体的には準備万端なのだが……おそらく精神的には落ち着いていないのだろう。異世界オメガの動乱の元凶――【仮面】を継ぐもの――と名乗った存在が散り際に残した言葉が何時までも頭から離れない。

  未来が希望だけだと思うなよ。明日が光に包まれているなんて思うな。絶望はお前のすぐ側にいる。

  その言葉通り、異世界オメガに希望が訪れた後、自分達の目の前に絶望が現れた。かつて世界の為に贄となった故に世界を壊す、と宣戦布告をしに。自分達はその絶望に立ち向かうもまるで歯が立たなかった。助けがなければ今こうしていることも叶わなかっただろう。守護輝士、救世主と周囲は自分のことをそう形容するが、圧倒的な力量差により為す術がなかったのだ。果たして自分はあの絶望に抗えるのか、為す術があるのか、不安になる。ああ、そんな後ろ向きなことを考えていては【仮面】に怒られてしまいそうだ。最後まで諦めず、抗い、希望を持ち続ける。そうしなければ【深遠なる闇】を相手に楔となり続けた【仮面】に申し訳が立たないではないか。しかし、こちらの攻撃を吸収する相手にどう抗えというのか……と思考が前向きと後ろ向きに行ったり来たりしているその時だった。
「休めと言われているのにそんなに頭を働かせて……休むという言葉の意味を理解出来ていないのかしらあ?」
  凛とした女性の声が響く。その直後引っ張られる様な感覚がしたかと思えば、周囲は波紋揺らめく白の空間、そして目の前には先程の声の主が立っていた。その秀麗な顔に呆れた表情を浮かべながら。マルガレータ。ダークファルス【若人】の依代だった者。異世界オメガでは神王として国を統治していた者。そのマルガレータは現在は自分と共に在る。
「普段から貴方は働き詰めだと思っていたけれど、流石に限度ってものがあるわ。身体もそうだけれど、精神も酷使し過ぎよ。いい加減に寝て休みなさい」
  オメガの神王もそうであったが、当たりが強いため悪目立ちしやすいが、なんだかんだで彼女は人がいい。高圧的な言動であるものの、その真意は相手を心配してのこと。今も一向に眠らない自身を見かねてこうして忠告しにきてくれたのだろう。
  休もうとは思っているのだけれど、気が立って落ち着かない。そう返すと彼女は溜め息をつく。自分でも休みたいとは思っているのだ。思ってはいるのだが、じっとしているとどうしてもあれこれ考えてしまうのだ。とはいえ、目の前の彼女へそう話したところでこのまま放っておいてくれるとも思えないし、さてどうしたものかと考えていると、唐突に彼女が自分の両肩を掴んできた。え、と面食らっているとそのまま両肩に力を加え彼女と共に自分をその場に座らせる。それから彼女は膝を折り、その膝の上に自分の頭部を乗せたのだ。この体制――いわゆる膝枕というヤツではないだろうか。
  マルガレータ……?  困惑を隠さず頭上の彼女に問いかける。
「気が立って休めないんでしょう?  ならこうして眠れるまで私が膝枕してあげるわ。光栄に思いなさい」
  得意気な顔をしているが、色々とツッコミどころしかない。まさか、あのマルガレータが、膝枕って。ともかくこれは逆に落ち着かない。急いで起き上がろうとしたが、それを制する様に彼女は口を開く。
「他人からの好意は素直に受け取っときなさい?  それとも聞き分けの悪い子にはスコーピオンの重石が必要かしら?」
  笑顔を浮かべているが目が笑っていない。これは本気だ。というか、喚び出せるのかスコーピオン、この空間内で。やりたい放題にも程があるのでは。しかしこれ以上彼女の機嫌を損ねるのも得策ではないので、大人しく膝枕を甘受することにした。
  「貴方はよく頑張ったわ。ずっと動きっぱなしで、休むことなく、人々に求められ、そしてそれらを成し遂げた。」
  彼女の手が自分の頭部にあたり優しく撫でる。まるで良く頑張ったね、えらいね、と褒めるように。
  「貴方に助けられた人は沢山いるわ。でもその貴方が助けた人もまた貴方の助けになりたいと思っているの。だからこそ、オメガでは貴方は救世を果たしたのよ」
  その声は、言葉は優しさに溢れていた。何故膝枕という発想に至ったのかは不明だが、彼女の気遣いに心が暖かくなった。

「昔から甘々だったからなテメェは。だが、だからこそ救えたものもある。もっと誇っていいことだと思うぜ」
  そう言いながらマルガレータより更に上から覗きこんできた大男の名前はゲッテムハルト。オラクルで初めて会った時は既に狂気に囚われ、ダークファルスと成り果ててしまったが、全知存在の夢で再会した彼は勇猛果敢な人物だった。おそらくこちらが本来の彼の性格だったのだろう。そんな彼が夢の世界とはいえ、彼女――メルフォンシーナと再開し、納得のいく終着点を迎えられたのは、きっと良いことだったのだろうと思う。だからこそ今の彼には以前の様な狂気はなく、穏やかな表情で自分を見守ってくれているのだろう。
「以前俺は、テメェからは俺と同じ匂いがすると言ったな。仮面野郎のことを考えたら、当たらずとも遠からずだったわけだが……なら、俺や仮面野郎とテメェの違いは一体何だったのかわかるか?  ……それは、周囲の存在に気付けていたかどうかだ。信じられるのは自分の力のみ。他人を巻き込みたくない。そんな独りよがりの考えで行動した奴等がどうなったかはテメェも知っているだろう。だがテメェは周囲の存在に気付いた。テメェが今まで周囲の存在に手を差し伸べてきたように、周囲の存在もまたテメェを助けようと手を差し伸べていたことにな。だからこそ、テメェは狂うことなくここまでたどり着けたんだ」
  ゲッテムハルトが告げた言葉。マトイを救い出す時も、そして今回の異世界オメガの動乱の時も、確かに自分独りでは救い出すことは出来なかっただろう。周囲の存在と互いに協力しあったからこそ未来を掴むことが出来たのだ。
「これからもそうだ。今は奴等に歯が立たなくても、まだ終わったわけじゃねえ。ひとりで考えてわからなくても、周りの誰かと一緒に考えたら事態は良くなるだろう。少なくとも独りで突っ走り、独りで抱え込んでしまうよりか幾分かはマシになるだろうぜ」
  ゲッテムハルトからこんな言葉をかけられるとは思いもしなかった。しかしその言葉には重みがあった。ゲッテムハルトはメルフォンシーナを失ってから狂気に囚われたという。しかし、そんなゲッテムハルトにも最期まで共にいた者がいる。メルフォンシーナの妹、メルランディアだ。メルランディアの存在にゲッテムハルトが気付けたのならばあるいは別の結末を迎えていたのだろうか。
  ともかく彼の言いたいことは、ひとりであれこれ考えるな。皆で考えろということだ。どうやら彼もマルガレータと同じく、自分を心配してくれているらしい。異世界オメガの彼もそういえば皆に慕われていたなってことを思い出し、笑みを浮かべる。
  あぁ、暖かいな。彼が、彼女が自分を心配し、労ってくれるその気持ちに心が暖かくなる。そうだ、確かに絶望は側にあって、今の自分には太刀打ち出来ないほど強大であっても、皆がいる。守護輝士だからって勝手に自分ひとりだけで背負い込まなくてもいいのだ。自分ひとりでどうにもならない時は皆で協力してきた。それはこれからも変わらない。自分だけが希望の象徴ではない。皆がいて希望の象徴足りえるのだ。
そう思っていたら瞼が重くなってきた。精神の方向性が前向きになったことで漸く落ち着いたのだろう。意識も朧気になってきた。これはあと数分もしないうちに寝てしまいそうだ。だがその前に目の前の人物達に伝えなければ。
  利害関係の一致で同化する事になった依代だった者達。正体が正体なだけあって周囲に存在を明かせないが、彼等が協力してくれたからこそ道を切り開き、そして救い出すことが出来たのだ。だから力を貸し、共に闘ってくれた彼等にこの言葉を贈ろう。

  ありがとう。そしてお疲れ様。


ads by microad

You have to sign in to post a comment or to favorites.

Sign in with Twitter


Profile
きつつき @kitsutsuki_
Share this page

ads by microad


Theme change : 夜間モード
© 2020 Privatter All Rights Reserved.