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大変なことを教えてあげる。

全体公開 3024文字
2018-12-16 15:36:15

 はい、こんにちは。
 人事資料の改竄を重ねていた、ソフィア・アシュワガンダだよ。

 さっきのページ、読みにくい資料だね。これを見てうちの職員の大半はこう思うはずだ。「またソフィアの奴がふざけているんだな」って。
 そして更にこう思う。「これ以上関わるとめんどくさいな」って。
 そもそも職員が人事資料を読む場合っていうのは、職務担当の振り分けにおいて、相性が悪い哲学人を避けるためって場合が多い。よって冒頭少しを読んだらそこから先は読まなくていい。個人情報だし興味が無いものでしょ。
 それなのに君は読んだ。
 そして、僕の遊びに付き合ってくれると言った。
 その好奇心に僕も応じよう。

 というわけで君が好きそうなスキャンダル情報がそこにある。気になるなら読めばいいよ。
 確実に面倒くさいことになる、僕の弱みだ。

+僕の個人情報

悪趣味。

 ソフィア・アシュワガンダは宗教2世だ。
 かつて所属していた宗教団体は、現在の「実践される誘智教団」。
 哲学人を切り刻んで食したり移植したりして遊んでる、警察に何度も厄介になってるカルト宗教だね。
 彼らの哲学人に対する非道な扱いは、世間的にもバッシングを受けていて、各研究所の倫理規定を刺激してくれる、とっても困った存在だ。できることならそんな組織の人間とは一緒に仕事したくないね。もうしてるけど。

 さて。僕がカルト宗教の二世だろうが関係ない。現在の採用基準に基づいて、宗教と就職は関わりがない。と綺麗なことを言いたいところなんだけれど、残念ながらこの教団とこの研究所に関してだけは根強い影響がある。

 教団上層部の大半は聡盟大学附置哲学人研究所の人間だ。
 そして現在の聡盟大学附置哲学人研究所は、内部に教団の人間を多く抱えている。

 完全に別組織であり、活動も、目標も異なっている。どちらかが傘下というわけではない。
 それなのに教団とこの研究所がこんなに近しい理由は、教団側の成り立ちに由来がある。

 教団とは元々、研究員が、研究所の倫理規定によって行動を阻まれたために作った逃げ道だ。
 あそこならば解剖的な研究も、非道な薬物実験も、破壊行為を含む実験も可能だ。そういう場所として作られている。作ったのが僕の父親だからその辺の事情は他人より詳しいつもりだよ。
 教団は何度もトップが変わっているんだけどね、やっぱり最初の理念はしぶとく残っているらしく、今でも研究における自由度は変わらないらしい。その結果、現在でもうちの研究所から教団に流れる人材や、研究所に勤務しつつ信仰は教団に、なんて人間がそこそこ居るしじわじわ増えてすらいる状況だ。

 君はもう、この資料が読める立場にいる時点で、関わっているんだよ。

 さて、なんでこんな記録をこんなところに? と君は思ってると思う。
 僕だって知られたくないし。研究所的にも、何度も警察に厄介になってる危ない団体の職員を沢山排出しているなんて知られたくない。このことは秘密にしておきたい。上層部は教団のことを話題にも出したがらない。けれど、そうやって日和見しているわけにいかない事件が起こったんだ。
 教団の創設者であるデイビッド・アシュワガンダが脱獄したんだよね。

 苗字からわかる通り、彼は僕の父だ。珍しい名だからすぐバレるしもう隠さない。
 僕としては、教団とはスッパリ縁を切りたい。思い出したくもない。考えるだけで気分が悪い。本気で嫌。
 が、父のことだから僕の存在を利用してくるだろうし、研究所に接触してくることが考えられる。実際セオとかそういう目的で潜り込んで来た子だし。
 そこで、僕の協力者を内部で増やしておいて、対教団勢力としての呼びかけを行おうってわけで、ここに書き残した。
 事前に知ってたら宗教勧誘からも逃れられるだろうし、君がもし教団の内通者だったとしても、僕は帰らないからねってアピールになるし。
 悪いことにはならないよ。僕にとってはね。

 以上。読んでくれてありがとう、新たな同胞よ。

 ちなみにこのページは開いたら僕に通知が行くようになってる。
 知ったからには仲良くしてよね。
 僕らは確かに、研究所が生んだ狂気なんだから!


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