@toasdm
「君が好きだ」
タイミングがうまく掴めない。
「君を愛している」
プレイリストはとうの昔に最後の曲を流し終えてしまっているし、リピート再生しているわけじゃないから、その――イヤホンしてるし、さっきまでは確かに、爆音で流してたけど。音漏れしちゃってたと、思うけど……。
「君は可愛い」
ぜっ、全部、聞こえちゃってるんです……っ!!
と、道夫さんに言うタイミングが掴めない。
聞こえてないと思っているであろう道夫さんが、さっきからこちらを一切見ないで呟いている愛の言葉の暴力は、その、そろそろ限界だ。耐え切れない、と真っ赤になった私がとうとう身動きすらできなくなっていると、視界の隅で、隣に座った道夫さんの肩がぷるぷると揺れ始める。
「え……?」
こらえきれない、と破顔した道夫さんの指が私の耳に伸びてきて、する、とイヤホンが取り外される。
「いつまで聞こえないふりをしている」
「な、うっ……え、あ、いやほんとあの」
道夫さんはこっちを見て、涙目になって爆笑している。純粋にからかわれているだけだってわかってしまうと、あとはもう恥ずかしさしかない。
「最初から最後まで聞いていたんだろう」
「うぅ……おっしゃるとおりです」
爆音で流していても、道夫さんが私にずっと愛の言葉を囁いてくれていたのは、本当に、全部聞こえていた。曲を流し終わったあとは、よりはっきりと、聞こえてしまっていたけれど。
ぷしゅーと音を立てて私の頭と顔から出た湯気で、道夫さんのワイシャツにアイロンをかけられるのでは?と思うくらいには、今、顔が熱い。
「聞かせてもらおう」
「え?」
何をですか、と顔を上げた私の耳元で、道夫さんが妖しく囁く。
「私の愛のささやきに対する君の返事を、聞かせてもらいたい」
イヤホンもプレイヤーもどこにもないのに、それは随分と、ダイレクトに聞こえた。