なんかすっきりしない人のために。そして亜美ちゃん出てこないじゃないか!!って方のために。
――9月10日、夜
「じゃあ……ルナは、なんとなくおかしいって思ってたの?」
「まあね、明らかに変だったもの、あのお店」
「でも……クッキーは食べちゃったんでしょう?」
亜美の指が大気からもらったそれをつまみ上げて、口へと運ぶ。おいしい、とつぶやいた横顔を見ながら、まだまだ彼にはこの表情を教えたくないなんて思ってしまって。
「悪い感じはしなかったの。ただ、普通の人間じゃないなってくらいの感覚で」
事実、あの店は不思議なことだらけだった。老人にしても、大気は気づいていなかったようだが、あれはきっと生きた人間ではなかったはずだ。
「あとでこっそり行ってみたんだけど……何もなかったの」
「クッキーは残ってるのに?」
「そう」
不思議ね、と言いながら、彼女はどこか楽しそうだった。それは贈られたプレゼントのせいなのだろうか、そうだとしたら、ほんの少しだけ。
「……癪、だわ」
「え?」
なんでもない、と首を振って、私にもとクッキーをねだる。亜美が口に放りこんでくれたそれを咀嚼しながら、その優しい甘さに思わず頬は緩んだ。