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"マオ" (2)

全体公開 2583文字
2018-12-27 13:57:41
Posted by @alter_r8

20XX / 11 / 10

刈谷さんの一件の後、村に小さな個人診療所が設けられた。
それは刈谷さんの件があったからではなく、もともと診療所を設ける予定だったらしい。
これで一件以後、我が家もとい私に診療をお願いしようとしていた人達はそっちに行くだろう。
肩の荷が降りたと思った。

その診療所を開いたのが私の父でなければ。

 『マオ、この薬は何の薬だと思う?』
学校から帰り、診療所の掃除を手伝っていると父が錠剤を片手にやってくる。
 「なんだっけ確か頭痛薬?」
 『うん。じゃあこれとこれの違いは?』
 「…………確か、副作用が起きにくいのと、起きやすいの?」
父が苦笑する。間違えたらしい。
 『片方は正解だ。こっちは副作用の懸念が高いんじゃなくて、特定の病気の患者には別の病気を誘発しかねないもの、だ』
 「そうだっけ。……っていうか、なんで私に薬の種類覚えさせるのさ。私医者になる気はないよ。」
止まっていた手を動かす。個人診療所とは言え一人で掃除をするにはちょっと広い。
父はというと錠剤を仕舞うとそのまま薬や書類の整理を始めている。手伝ってくれそうにない。
 『なる気はなくても、覚えておいて損はないだろう?知識はあって困るものじゃないさ』
 「そうかなぁ……
ロビーの掃除を終えて一息。綺麗にしたソファにぽすん、と座ると父がまたやってきた。
 『そういうものさ。それに、マオは中途半端に知識があるだろう?』
父が両手に持っていたカップを片方差し出してくる。ココアの甘い香りが心地よかった。
 『人間、知識があると過信しがちだからね。中途半端に知っているくらいならいっそ全部教えた方が良いのさ』
 『まぁ、毒に関する知識はマオの方が詳しいんだけどね』
口元を緩めて父が笑う。父の言うことはなんとなく分かるので頷いてココアを飲む。
 『あ、それと土曜日は山向こうの病院に行くからマオもおいで』
 『朝から出て夜まで掛かるだろうし、ご飯も向こうで済ませるつもりだからね』
山向こうは村ではなく大きな町だ。向こうでということは外食だ、と少し気分が弾んで
 「ん分かった」
そういって頷いた。



20XX / 11 / 12

 『それじゃあマオ、お昼頃には病院に戻ってくるんだよ』
父は病院に着くなりそういって、私に千円札を1枚渡してくれた。
 『それと間食はほどほどに。昼食が食べられるようにね』
 「分かってるって」
過剰に心配してくる父にそう返して足早に病院を離れる。
私にとって、この大きな町は遊園地みたいなものだった。
町を少し歩けば村ではあんまり見ない、老人ではない大人の男女。
村のぼろっちい見た目の服屋と同じとは思えないほど綺麗なブティック。
でこぼこの軽トラックやママチャリではない、格好良い見た目の車や自転車。
見るもの全てに興味を惹かれて、ついついあちこちに寄り道してしまう。
 「っと、そんなに時間ないんだった
はっ、と忘れかけていた目的を思い出すと小走りに駄菓子屋へ。
村にも駄菓子屋はあるが、私の大好きなアレはなぜか置いてない。理由は聞いたけどよくわからなかった。

目的のちょっと大きな駄菓子屋に入る。幼稚園か小学一年生か、それくらいの子達が何を買うかで楽しそうにしていた。
それを横目にガムの並んでいるコーナーへ。"そのまんまコーラ"と書かれたガムを小さな籠に入れていく。
それとゼリーをいくつか籠に入れてレジに持って行った。いつものお姉さんがいつものように笑って袋に詰めて、唇に人差し指を当てながらこっそりチョコレートをいれてくれて。
その後はポーチに袋を仕舞って公園とか、ゲームセンターとか、いろいろ見て回った。
お昼の時間はあっという間にやってきた。



 『じゃあマオ、少しだけ待っててくれるかい?』
 「はーい」
お昼ご飯も食べ終わって病院に戻ると、父はそう言って病院の先生と歩いていく。
父と先生の話はいつ終わるか分からないので、あとは病院の中で待つだけだ。
買ってきた駄菓子を片手に、てくてくと病院の中を散策する。といっても、もう行ってないところはあんまりない。
 「……あ、そうだ」
ふとまだ行ってない場所を思い出して、階段を使って上の階へ。
階段で上っていい一番上の階はまだ見たことなかったし、窓から景色を見てみようと思った。
一番上の階に着く。これ以上は鍵の掛かった扉があるから上れない。
入院してる人達がまばらに見える中で窓際の休憩所へ。
予想通り、結構高かった。病院から遠くにある駄菓子屋がうっすら見えるくらいに。
その景色を見ながら買ってきたガムを開ける。3つある内の1つを口に含むと、甘いコーラの味が広がって……

 『ねぇ、それ一個ちょうだい?私、それ好きなの』

声に振り向く。
長い金色のツインテールが少女の動きに合わせて揺れ、エメラルドにも似た綺麗な碧眼が私を見ていた。
入院着ではない、袖と首元が黒い以外は真っ白なワンピースに身を包んだ少女が笑う。

 『あはっ、やっぱり。実際見るととっても可愛いのね。ね、私と友達になりましょ?』



それが、私と真緒の出会いだった。



【"マオマオ"へ続く】





■人物紹介

【マオ】
名前:マオ
種族:混血
本名:????
年齢:13歳(当時)
職業:中学生

説明:
年齢に反して落ち着いた思考を持つ少女。
とはいえまだ子供のためか、いろんな事柄で心が乱れたりする。
父曰く『健康な証拠』らしい。




【父】
名前:????
種族:人間
年齢:38歳(当時)
職業:個人診療所の所長
イメージアイコン:衛宮矩賢(Fate/Zero)

説明:
非魔法使いの人間。マオの実の父親であり、育ての親。
とある山に囲まれた村でひっそりと個人診療所を経営している。
昔はれっきとした医師だったらしい。




【真緒】
名前:雪平 真緒(ゆきひら まお)
種族:人間
年齢:14歳(当時)
職業:なし
イメージアイコン:ホワイト(血界戦線)

説明:
とある町の大病院、その最上階で出会った女の子。
親しげにマオに声をかけてきたが、マオに見覚えはないようで


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