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[雨P♀]お正月のウェディングマーチ

全体公開 1 1280文字
2019-01-01 18:51:47

「お前さん、調べてくれたんだな」

新年あけましておめでとうございます。
雨彦さんの為に雨彦さんが食べたであろうお雑煮を頑張って再現したPさんのお話です。

Posted by @toasdm

「へぇ……
「うぅ…………
 あけましておめでとうございます、の挨拶の後。彼女が食卓に並べた雑煮の汁椀と、その隣に添えられた小皿を見やって、雨彦は意味ありげな視線を彼女に投げかけた。
「あってますか……
「はは」
 懐かしいぜ、と目を細めて、雨彦は彼女の頭を、こたつテーブルの向かいから腕を伸ばして思いっきりぐしゃぐしゃと撫で付けて笑った。
「ただし、あってるってのは間違いだ」
「え……?」
 きょとんとする彼女をまた撫でて、雨彦は汁椀を覗き込んだ。
「金時人参、小芋、大根。餅は丸餅だな」
 白味噌の上品な香りが立つ汁椀の中には、品よく切りそろえられた野菜が入っている。煮込まれた餅は真っ白のままで焦げ目もなく、一見すると味噌汁にしか見えない汁椀の横、添えられた小皿の上にはこんもりと、きな粉が盛られている。
「吉野の方だったらどうしよう、と、思ったんですけど……
「いや。懐かしいよ」
 いただきます、と手を合わせてから、雨彦は箸を手に取り、汁椀から餅を取り出してきな粉の小皿に乗せ、あべかわ餅にして一口でぱくりと食べる。うまいな、と味わう表情には懐かしさも浮かんでいるようで、ほっと胸を撫で下ろした彼女も、初めて食べるスタイルの雑煮に箸をつけた。
「あ、あっさりしてて美味しい」
「だろう?」
 作ったのは俺じゃないがね、と苦笑する雨彦は、あっという間に奈良スタイルの雑煮を食べ終える。
「お前さん、調べてくれたんだな」
……はい、あの、雨彦さんに喜んでいただきたくて」
「嬉しいぜ。それに、うまかった。久しぶりだなぁ、地元の雑煮にありつくのは」
 里心がついちまいそうだ、と手を合わせてごちそうさまをした雨彦は、彼女をじっと見つめながら、ありがとうな、と笑った。
「だが、あってるってのは間違いだぜ?」
「あの、間違い、って……
 どういう意味ですか、と小首を傾げる彼女の差し出してくれたお茶をすすって、雨彦は満足気に腹をなでた。

「お前さんが俺の為を思って色々調べてこしらえてくれたもんだろう? お前さんが俺を思う気持ちに間違いなんてないさ」

 恥ずかしげもなくそんな事を言わないでくださいと頬を赤らめた彼女が食器をまとめて下げようとした、その手を優しく掴んで雨彦はそこに、そっと唇を押し付ける。
「俺がお前さんを思う気持ちにも、間違いはないぜ?」
 食器ぐらいは片付けるさ、と彼女をやんわり制止して雨彦はひょいと食器をまとめて片付ける。これでもいい旦那ってのを目指してるもんでね、と茶化すようにウィンクをしてから食器を片付け始めた雨彦の背中をぼんやりと見つめながら、彼女は「いい旦那」をしている雨彦を想像してまた顔が熱くなるのを感じた。

「お前さんはいい嫁さんになるだろうな」

 茶碗を洗う鼻歌の隙間からそんな風に言う雨彦の方が恐らく、いい旦那さんになるだろう、と彼女はとうとうこたつテーブルに突っ伏した。雨彦の鼻歌は、正月のおめでたい空気を巻き込んで、元旦のキッチンから彼女のところまでウェディングマーチを届けてくれていた。


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