@po_ka_mann
名称『終末論』
能力 音声による強制的な思想の植え付け。詳細は未明
解説 『終末論』は所内に郵送されてきた差出人不明のカセットテープ内の内容から存在が確認されました。外見、特性などに不明な点が多い為情報提供を求めます
:カセットテープ内の音声データ:
あーー…聞こえてるかな?問題無い?そうか。では始めまして人類の知の最先端を征く研究者諸君。久しぶりだねぇ同胞の友人達。我々は哲学人であり、人類史の完成を目指す一般市民の一人だ。
我々は布教によって認知される事が必要な状況にあってね、少々この話を聞いていただきたい。
この世界には生きるのを随分と楽にする方式というのがある。そのヒントが我々の存在そのものだ。まずは肩の力をぬいて楽にしたまえ、苦しさも辛きも全ていい加減な幻に帰る時が来る。未来の国がやってくる時だ。
(中略)
…生きる事こそ至上の幸福なれと語る大馬鹿者も中にはいるが、黙示録からラグナロク、ノストラダムスの大予言とよくもまあそんなにぽんぽんと人は終末を迎える話ばかり描くじゃあないか!
"我々は終末論"。十字架に括り付けられた男のほら話じゃあない、事の始まりは貧困や飢餓に喘ぐ小汚い民衆の願望から生まれ出でた歴史の目的そのもの、即ち『未来のあるべき姿』である!
それでは満足な自己紹介も終えたところで我々は一度休憩するとしよう。また未来で!
(21.5秒間ノイズ音)
あ、言い忘れてた。次に来る終末の話だ。世界の終わりは[編集済]年4月16日、[編集済]に来る。それでは。
:終了:
この音声を聞いていた職員はこの2時間後、汎神論.ユマニチュードの哲学.ルーシュチャ方程式.臓器くじ他2名の哲学人の拉致、もしくは所内からの逃亡補助を行った為終了処分を受けました。(事例1.1)
上記の文は音声から脳の影響を受けにくい職員にカセットテープの内容を書き取らせたものです。
事例1.1以降、一般職員にはこのテープ内の音声を聞く事を禁止しています。
以降は拉致未遂を受けた哲学人達から聴取した汚染後の職員の発言です。
『死後、我々は救われる』:拉致直後の発言。
『未来の国がやってくる』:終了処分中の発言。
『世には終末が訪れる』:終了処分直後、職員の遺体から発された発言。発言後、職員の遺体は正常な一般の遺体と同一の反応以外確認されない状態に戻りました
※拉致された哲学人の中には聴取に適さない個体が約1名いると判断された為、該当個体からは聴取を行なっておりません。
実験記録
※対象の人物の身柄が確保不能だった為、録音したカセットテープ内の音声記録によって発現する影響範囲の規模調査を行いました。
危険性があると判断された為に調査協力者はある機関から提供された人員を主に雇用しています
20█/█/25 13:00〜
対象:被験者No.1 ███氏
補遺 氏は平均的な民間人と特徴を同じくした非・哲学人です。実験に関しては音声を聞いて貰うとだけ本人に伝えてあります
結果1
対象者は音声記録の途中で「気分が悪くなった」「少し休みたい」とだけ告げ、できる限りカセットテープから距離を置くように移動しました。
実験後、対象者には軽度の鬱の兆候が見受けられました
対象:被験者No.2 ███氏
補遺 No.2は終身刑を受けた20代男性です。言動から攻撃的な姿勢と強い支配欲、加虐欲求を確認しています
結果2
対象者は音声記録を最後まで聞き、「胸糞悪りぃ」「最悪だ」と抗議しましたが、数分後唐突に静止状態になると平常時の5倍程の力で暴れ出しました。
事例1.1で対象となった職員と同じような発言を繰り返していた事から、テープ内の音声記録に影響を受ける対象はなんらかの法則で分けられている事が判明しました。
また、この恐慌状態は凡そ2時間で収まりました。
対象:被験者No.6〜11
補遺 同時に6名の対象に向け、音声記録を再生しました。6名はそれぞれ精神状態も経歴も統一されていない赤の他人です。
結果3
対象者のうちの一名(対象者の中で最も精神状態が不安定だった者です。)が恐慌状態に陥り、その一名から輪が広がるように次々に全員が恐慌状態に陥りました。この状態は3日経過した所で収束しました。この期間の記憶は6名とも失っています。
███研究員のコメント
「人が増えると一番重い物が広がっていくって、宗教というよりはウイルスみたいですね。規模の調査に人員を割きすぎでは?阻止の為の調査に方針を変えるべきです」
20█/█/10 9:00〜
対象:被験者No.12 ███研究員
補遺 ███研究員は聴覚を失っています。
結果4
███研究員は被験者No.1と同じ反応を示しました。この音声記録の影響に聴覚は関係しないようです
対象:被験者No.13
補遺 対象者は聴覚に作用するミームに対し抵抗できる技能を習得しています。
結果5
対象者は頭痛を訴えながらも「あまり私達が弱ってる時に聞くべき声ではない」と意見しました。
対象:被験者No.14 ███研究員
補遺 対象者は敬虔なキリスト教信者です。
結果6
対象者の恐慌状態は三ヶ月が経過しても収束する様子を見せませんでした。
███研究員のコメント「これって要するに終末論に期待を持つ人間が影響を受けやすいって事なんじゃない?」
███研究員のコメント「次の実験以降はこの音声記録の使用は上層部の許可を得て行うように。不毛です」
20█/█/12 18:00〜
対象 被験者No.15 終末論担当研究員ニコライ・ヴァン氏
補遺 ニコライ氏はこの実験の対象となる事を強く希望していました。また、彼は自身が無神論者である事を主張し、「この影響を阻止する為に最も重要なことは自身の意思の強さだと証明しよう」と意見しました。対象は実験の2ヶ月前に事例1.1に巻き込まれています。
現在研究員は施設から逃亡しており、身柄を捜索中です。今後ニコライ氏を研究所本部は哲学人『終末論』と呼称します。
結果7
音声記録が再生されて一分後、対象の体表及び身体的特質に変化が確認されました。
対象の肌はベージュからゆっくりとした速度で血の気の感じられないライトグレーに変化し、瞳孔が収縮、眼球の白眼の部位にあたる場所がダークグレーに変化しました。また、体毛は明るい金から黒色に変化し、手の甲の部分に白く発色する十字に酷似した紋様が浮き出ました。
対象は蹲り頭痛を訴えますが、「実験を最後まで続けるように」と強く意見した為音声記録は止められませんでした。
音声記録の再生が終了後対象は立ち上がり、監視カメラに向かって何かを話す様子が確認されました。この後研究所内で小規模の暴動(事例1.2)が発生、対象はその混乱に乗じ屋外に逃走しました。
事例1.2発生前[音声記録]
「………ああ、問題無い。…あの声が聞こえたか?俺は俺の意思でこうなろうと思ったんだ。正しい答えが知りたかった。1.1で起こった不幸な事故について。まさか忘れてはいないだろう?何故俺では無く彼が死ななければいけないかもわからないままじゃないか。ここにいる君達はもう知っているだろう、俺みたいな人でなしの方があそこにいて然るべきだったと。
……少し声の調子が変わったか?いやいい、続けよう。なんにせよこの哲学人の目的がわかった。終末論は自身にとって最も居心地の良い精神に住み着くようだ、大方は…███氏の言う通りだな。本人から人に危害を、加えるつもりは……ないが、結果として、害がある…なら、同じ…だなぁ。
………すまない、頭痛がするんだ。声ももう本来の俺の物では無いな?客観的には見れないからわからんが…ああ、それで…俺の友人が死んだのは何故かだが、先程合点がついた。手っ取り早くあの混乱を納めるために俺に引き金を引かせたこの場所だ。違う…場所じゃない、なにもかも間違えてた、俺だけのせいじゃない、わかるだろ、俺は人でなしだって……ああ…なんで俺じゃなかったんだ、なんでアイツだった?俺であるべきだった…大切な相棒だったんだ、俺の………俺は…俺が………
…いや、………ああ…まぁ………いいか。…もう…いいんだ。俺は終末を知った。救済が判った。理解したのだからそれに人を導く義務があるんだ。我々は終末論だ。この逆境に生きる人々の希望そのものだ。我々は終末論。欺瞞と苦痛に満ちた世界に終わりが来ると、人々に伝える為の哲学だ。その安らぎの為に俺はいる。
我々は終末論だ。」
※以降の実験は永続的な停止が決定されています。