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[雨P♀]葛之葉照れ彦

全体公開 1 1 1379文字
2019-01-07 21:15:05

「お姉さん一人かい?」

雨彦さんとナンパにまつわるえとせとら。

Posted by @toasdm

「お姉さん一人かい?」
 馴れ馴れしく肩に手を触れてきて、反射的に跳ね除けようとして振り向いて、見知った顔面に思わず素の声が出る。っていうか、声もよく知ってるやつだ。いつも聞いてる、大好きな声だ。すぐに気がつかなかったのは、待ち合わせの時間潰しに本屋さんで立ち読みしてたからだ。
「暇なら俺とデートしようぜ」
「んふっ」
「っくくく……
 慣れないことを言っている自覚があるんだろう、雨彦さんは半笑いだ。っていうか私が吹き出しちゃったから、つられて全笑いになってる。
「っはははは! あー、駄目だ、慣れないことはするもんじゃねぇな」
「雨彦さんってナンパとかしたことあるんですか?」
 立ち読みしていた雑誌をレジに持っていって、会計を済ませている間に何気なく聞いてみる。
「さて、な」
 お前さんはどう思う?と聞き返されて、うーん、と考えながらお釣りを受け取る。雨彦さんがナンパ、かぁ……
「全っ然、想像つきませんね」
「お前さんなぁ……
 それはそれで傷つくな、と微妙なわがままを言う雨彦さんに手を引かれて、背中で店員さんのありがとうございましたを聞く。
「逆に、ナンパされたことってありますか?」
 逆ナンか、と顎に手を当てて雨彦さんは記憶を手繰り寄せている。
「そうさな……街を歩いていて声をかけられることはまあまああるぜ」
「え、意外」
 傷つくからよしてくれないか、と苦笑する雨彦さんが続ける。
「だいたいが職務質問だな」
「え……?!」
「怪しい風体の男がいる、って見えるんだろうな」
 人相も良くない、と自嘲して、お前さんは無縁そうだな、と雨彦さんは私を見下ろす。確かに私は、職務質問の類は受けたことがない。
「人相は悪くないと思いますけど」
「そうかい?」
「はい。普通にかっこいいお兄さんですよ」
……っ!?」

 あれ、もしかして。雨彦さんって、かっこいい、って言われ慣れてない……

 一瞬驚いた表情を見せて、その後口元を手で覆って。真っ赤になってるし。
「葛之葉照れ彦……
「なんだそれは」
 からかうなよ、と頭にポンと手を乗せてきて、雨彦さんは少し落ち着く。落ち着いたところを見計らって、私はもう一度、言ってみる。
「雨彦さんは、かっこいいお兄さんですよ?」
…………そうかい」
 ああ、もうこれ絶対照れてる。照れまくってる。葛之葉照れ彦だ。可愛い。珍しい。その珍しい反応に、私も慣れないことをしてみようと、思いつく。
「そこのかっこいいお兄さん、お一人ですか?」
「んっ!? お前さん、何、言って」
 くぅぅ、この明らかな動揺、珍しい!レア!葛之葉レア彦!少しあたふたしている雨彦さんに私はたたみかけた。
「お暇でしたら私とデートしませんか?」
……ほぅ?」
「え……?」
 あれ、もしかして、ちょっとおちょくりすぎた?ちょっと照れを残したほんのりマジモードな雨彦さんの目線に射抜かれて、私は思わず後ずさりをする。
「お姉さん、逆ナンとかするのかい? 積極的だな。いいぜ、俺でよけりゃ」
「ひぇ……っ」
 私の手首を掴んだ雨彦さんが、本屋さんの隣の小道に私を引きずり込んでニィッと笑って耳元で囁く。

「デートしようぜ? お姉さん ・ ・ ・ ・

 葛之葉照れ彦は、いつの間にか葛之葉攻め彦になっていた。


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