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[英雄P♀]昔取った杵柄

全体公開 1 1629文字
2019-01-18 22:04:49

「握野さんって、ナンパとかするんですか?」

さらっとナンパされてた人を助けてついでにPさんナンパしちゃう英雄さんのお話です。

Posted by @toasdm

 極自然に、あまりにもナチュラルに声をかけたものだから、彼女は最初勘違いをしていた。てっきり知り合いだと思ってました、と戻ってきた英雄を見上げる彼女に、んなわけねえだろ、と照れ交じりに英雄は笑った。
「よく気付きましたよね」
「んー、まぁ、昔取った杵柄みたいなもんか」
 英雄は先ほど、一人の女性を救った。救った、というと大げさに聞こえてしまうかもしれないが、しつこいキャッチの勧誘やナンパなどは、女性である彼女にとっては、場合によっては一人で解決するのが難しいアクシデントのようなものだ。あの人助かったと思いますよ、と言ったのは、我と我が身に置き換えた、彼女の本心だった。
「ああいうのがトラブルの原因になったりするからな」
「ほっとけないんですね」
「まーな」
 元々の正義感の強さから、英雄は、ナンパ男に絡まれていた見ず知らずの女性に彼氏然として声をかけた。親しげな言葉遣いや仕草は恋人のそれで、んで、あんた何?の睨みは恐らく、本気で怖かったに違いない。尻尾を巻いて逃げ出したナンパ男が見えなくなってから、その女性は英雄に、何度も何度もお礼を言っていた。
「そういえば」
 現場を後にして、営業を終えた二人は事務所へと戻る。歩きながら他愛もない話をする程度には親しいとはいえ、彼女はまだ、時折、英雄の顔が怖いと思うことがあった。それを紛らわすためにできるだけ無言の時間を作らないように、と、彼女は何気なく話題を振った。
「握野さんって、ナンパとかするんですか?」
「ん?」
 一瞬耳を疑ったのか、英雄の反応はワンテンポ遅れたが、なんでもないです、と誤魔化そうとした彼女よりも早く、英雄は返事をする。
「似たようなのなら、昔取った杵柄で」
 似たようなの?と首をかしげた彼女をからかうように、英雄は姿勢を正してゴホンと咳払いをして言った。
「あーお姉さんちょっといいかな?」
 身分証とか持ってる?と、半笑いだが、英雄の口調はまさしく、それそのものだ。
「職務質問じゃないですか!!」
「だから、似たようなのだって」
 全然違うじゃないですか、と爆笑する彼女の横で、英雄もけらけらと笑っている。確かに得意そうだ、と笑いすぎて出てきた涙を指で拭った彼女に、英雄はニヤリと笑って、今度は彼女の右斜め前に移動する。
「え……?」
「ほんっとゴメン!」
 パンッ!と勢いよく合わせた手は、深々と下げた頭の前。え、え、と混乱する彼女を、頭を下げた英雄は顔だけを起こして、彼女を見上げて言った。

「あそこのパンケーキ食いたいんだけど、男一人じゃ入れなくてさ……悪いんだけど、奢るからさ、付き合ってくれねーか?」

 あ、これ成功率高いやつだ。
 彼女が思考らしい思考を保てたのはそこまでだった。
「手馴れてる……
「こらこらー、人を手練れのナンパ野郎みたいに言うなって」
 突然の本気ナンパに混乱した彼女を落ち着かせる為(と、本当にパンケーキが食べたくなったので)英雄は、彼女をカフェへと連れ込んだ。

 今になって思えば、妙に慣れた様子だったのは、英雄が今日のように何人もの困った女性に手を差し伸べてきたからだろう。ナンパの手口を覚えてしまうほどに、困った人を捨て置けない英雄の優しさと共に、彼女はパンケーキの苺を頬張って噛み締めた。
「んーーー♪」
「うまそうに食うんだな……
「握野さんだっておいしそうに食べてるじゃないですか」
「へっ、あんたと一緒だからだよ」
「ふふふ、握野さんって怖い人かと思ってたんですけど、パンケーキ好きだったり優しかったり、冗談言ったりする人だったんですね」
 軽口ついでに漏れた本音は、彼女には受け止めてはもらえなかったが、じゃあまた、食いに来るか?と次の約束を取り付けることはなんとかできた。
「握野さんになら喜んでナンパされちゃいますよー」
……言ったな?」
 次覚えてろ、と冗談めかして、英雄もパンケーキを頬張った。


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