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[冬馬P♀]ガキ扱い

全体公開 1 1613文字
2019-01-28 12:47:22

「な、何笑ってんだよ」

〇ピコいつまでもかじかじするあまとうをからかったらしっぺ返しくらったPさんのお話です。

Posted by @toasdm

 そういうところじゃないだろうか、と彼女は冬馬をちらりと見て、こっそり笑う。バレてしまうとまた、彼はへそを曲げてしまうだろうからだ。当の本人は、そんな彼女の気遣いを知ってか知らずか、スマートフォンを眺めながら未練たらしくいつまでも、空になったアイスの容器をかじっていた。
 二本が一つになったメジャーなアイス。上端を手でちぎり、柔らかなプラスチックで出来ている容器の中に満たされたコーヒー風味のアイスを、ちゅうちゅうと吸いながら食べるタイプのものだ。あんたにもやるよ、と事務所に顔を出すなり二本のうちの一本を投げ寄越した冬馬は、ソファに座ってそれを食べながら、スマートフォンを確認しはじめた。

 それはもう、かれこれ二十分も前のことだ。

 当然中のアイスは空っぽで、彼女も食べ終わってしまっている。ゴミ箱に捨ててからふっと冬馬の方を見ると、先ほどから全く変わらない姿でソファに座っている。変わっているのはアイスの容器が空になっていることだけだ。
 おしゃぶりとか哺乳瓶とか、色々な言葉が頭の中に、次から次へと勝手に浮かぶ。その度に、ああダメ、笑っちゃだめ、と堪えてはいるのだが、そろそろ限界だ。かじかじと齧っていた容器をちゅう、と吸い上げた頬のへこみ、唇の形。彼女は堪えきれずにとうとう吹き出してしまった。
「っふ、ふふふふ……
「ん?」
 急に笑い出した彼女の方を見上げたのもよくなかった。空の容器を口に咥えたまま見上げた冬馬の見た目年齢は、完全に幼児のそれだった。追撃だ。
「な、何笑ってんだよ」
「いえ、なんでもっふふふふふ……!」
 ぷるぷると肩が震える。堪えきれない笑い声が変な漏れ方をする。我慢しすぎて真っ赤になった顔が熱い。これがそのまま、何の前触れもなく見せられた光景だったらまだマシだったのかもしれないが、冬馬は彼女にアイスを投げ寄越しながら、彼女にこう言ったのだ。

 悪かったな、大人っぽい高級アイスとかじゃなくて。

 それはそのまま、彼女に対する冬馬の不満だった。子供扱いすんなよ、という子供じみた主張だった。言われなければそんな風に思わずに素直に受け取れたアイスが、その余計な一言であっという間に冬馬の子供らしい部分を浮き彫りにしてしまったのだ。何笑ってんだよ、に対して、なんでもないです、本当です、と爆笑しながら答える彼女の背後に近付いて、冬馬はムッとした表情のまま、ぶるぶる震えて笑いに支配された彼女の背中に抱きついた。
「どーせ、子供っぽいとか思ってんだろ」
「っふふふふ……
 だっていつまでもかじってる、と観念したように白状した彼女の後ろで、悪かったな、とふてくされた冬馬の口から、彼女はアイスの容器をそっと外した。
「ごめんなさい、あまりにもかわいくて」
……
 ムッとした表情の冬馬を見上げた彼女の笑いは、そこで一瞬途切れる。
「んんっ!?」
 触れ合った唇は一秒にも満たない時間でさっと離れて、冬馬は彼女の手の中からアイスの容器を取り戻して口に咥えなおして言った。

「あんたとこういうことしたくならねーようにしてんだよ」

 口寂しいことを口実に、なんてことを言うんだろうか。
 笑いとは別な理由で彼女は、今度は耳まで一気にぶわっと朱を広げる。
「あ、う……
……ウソだっつーの」
 悪戯っぽく笑った表情は子供らしいと感じたが、やってることと言ってることはそれとは随分とかけ離れた、大人らしいギミックの効いたものだった。真っ赤になった彼女の頭をわしわしと撫でつけて、冬馬は再びソファに戻る。目線はスマートフォンに落としたままだが、冬馬は彼女に向かってはっきりと言った。

「今度ガキ扱いしたもっとすげーことするからな」

 歯型のついた容器を冬馬がゴミ箱に捨てたのはいつだったのか、彼女はよくわからないままふわふわとした気持ちで仕事を片付けることになってしまった。


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