里に戻る直前のライドウ
@syuu_29
電車に乗るのも、しばらくは縁遠いものになるのだろう。ライドウは車掌の切符を懐に収め直してふいにそう思った。
日が暮れ始めていた。
帰宅途中の人、町へ繰り出す人とで混ざり合った車内はすこし寂しさがあった。まだ暗くなりきっていなくとも、灯はすでに灯されていた。それでこんな気持ちになるのだろうかと彼は考えた。
里を出るときにはまるで感じなかったなにかがある。胸の中、頭の中、それどころか指先の感じ取れるすべてに。
それにしても、いざ人へ声をかけてまわると、帝都の広さに気がついた。日々の中ではそんなこと、意識にも上らなかった。
探偵所へ戻る前に角を曲がり、金王屋の地下の隠し扉を通る。すっかり通い慣れた昇降機に乗り込む。
何気なしに足下に目をやり、供のジャックフロストが見上げるのと目が合う。探す影がそこにあるはずもないことは既に何度も確認しているのに、またなのだった。
「ヒホ?」
「――なんでもない」
見上げる冷たい頭をなで回してやると、こどもあつかい反対ホ!と抗議の声が上がる。
しかし「もちろんちがう」となだめてもう一度彼が頭を撫でると、上機嫌に笑った。
「ライドウはさみしがりホ〜」
昇降機から降り、ほてほてと気の抜ける足音をたてて先に進むジャックフロストは、そんなふうに呆れたようなクールぶった声でそう言った。
「……さみしい?」
足が止まり、目を瞬くライドウをふりかえり、不審そうに首をかしげる。
「違うホ?」
「――わからない」
これがさみしいということなのかと。人ならざる者に感情を教えられるのは妙な気分だった。だがたぶん、そうなのだろう。
さみしい、と口の中でささやく。それはとてもしっくりと胸に落ちた。