@niziirononanika
名称:ルサンチマン ressentiment
能力:嫉妬心の数や強さに比例した数と重さの足枷を、嫉妬の対象の足に繋いだ状態で出現させる。
この時、ルサンチマン自身が他者からの嫉妬の対象となっている場合は、ルサンチマンの意志に関係なく、彼自身に足枷が付けられることとなる。
この足枷は物理的に取り外すか、時間経過によって消滅する。鍵は存在しないが鍵穴はあるため、ピッキング等による解錠も可能。
嫉妬の対象となりうる要素は外見や能力、偶発的なものなど多岐に渡り、嫉妬している存在の自覚の有無は問われない。時には羨望や怒りにも反応する模様。
また、ルサンチマンの認識内(ルサンチマン自身も含む)で何らかの成功体験が発生した場合、対象はその体験の重大さに比例した不幸な事故(『反動』とルサンチマンは呼称している)に見舞われる。不幸の種類は様々であり、確認されているものでは腹痛や発熱などの体調不良や、転倒事故、理由のない異様な不安感、恋人からの離縁連絡、突然頭上から降ってくる金ダライ(音が派手だが柔らかく、危険の少ないもの。地面に落ちると同時に消滅)などがある。
多くは対象個人で完結する不幸だが、成功体験が大きなものであれば他者(恋人や友人)を巻き込んだ不幸に発展すると考えられる。
多くの場合、足枷と不幸は同時に発生する。
解説:ルサンチマンは虹彩に十字模様のある、二十代後半の年齢に見える中肉中背の男性です。長い髪を軽く結わえていますが、大抵の場合で不幸な事故により酷く乱れています。顔や四肢に見られる怪我も同じ理由です。傷の治癒速度は人間と変わりませんので、発見次第人間と同様の治療を行います。また、事故の後遺症と足枷の影響で右足を痛めており、歩行の際は杖を使用しています。
彼は悲観的で嫉妬深く、劣等感に満ちた性格ですが、自身の容姿に対してだけは自信に満ち溢れた態度を取ります。これは顔に傷を負おうとも変わりません。
彼の容姿を貶す発言を行った場合、少なくともその日は反抗的な態度に変わり、出現させる足枷の重量も増加します。反対に、容姿について褒めた日は協力的になり、足枷の重量も減少します。
自身に能力による足枷が付くことに対しては、「嫉妬を受けるほど素晴らしい存在だ」との認識をしており、好意的です。また、足枷により自身の行動が阻害されることは「神から与えられた試練」と考え、同時に「嫉妬心により他者の足を引っ張る行いは恥ずべきことであり、その心は加害者となる引き金であると、自分がこの身をもって周りに伝えている」と主張します。
20■■/■/■ 追記
上記の自信や好意的な主張は彼の本心ではなく、強がりである可能性が非常に高いです。しかし、それを指摘することは彼のプライドを傷付け、敵対的な行動や能力の暴走を引き起こすと予想されます。
彼は二つ目の能力を嫌っており、能力による不幸な事故に見舞われた時悲鳴の代わりに「フリッツの野郎!」「フリードリヒ・ニーチェ!」などと憎々しく叫ぶことがあります。これはこちらの能力がニーチェ哲学におけるルサンチマンの概念に由来したものであるからですが、フリードリヒ・ニーチェ氏との関係や当時の暮らしについて話すことを拒否しています。
彼は熱心なキリスト教徒であり、哲学人信仰に対しては嫌悪を示します。特に、自分を信仰対象として見られることには強く抵抗します。
対応:■■大学附置哲学人研究所に所属し、研究に協力しながら生活している。ルサンチマンの身の安全を考慮し、極力他者との面会を避けること。
また、他の実験を彼の前で行わないこと。彼の目の前で実験に成功した場合、不幸な事故が発生します。
発見経緯:■■■■年■月、■■市にて民間人より「哲学人らしき人物が倒れている」との通報を受け、哲学人犯罪取締課が保護。その後の調査で本人に害意がないことが確認され、■■大学附置哲学人研究所に移される。
実験記録:
■■■■/■/■
内容:■■■研究員がダイスを振り、6が出たら成功、その他なら失敗との条件をルサンチマンに伝え、1000回ダイスを振る。
結果:6が出たのは92回。
起きた不幸な事故と思われる現象は
『突然の突風により目にゴミが入る』
『落ちたダイスを踏みつける』
『軽い目眩』
『頭上に50個のダイスが降る(床に落ちた後全て消滅)』
『軽く突き指する』
『記録紙をボールペンが突き破る』など、深刻なものはなかった。
92回目に不幸な事故は起きなかったが、代わりにこの日一日は■■■研究員がダイスを振ると6の目が出なくなった。後日■■■研究員はルサンチマンの前で同じダイスを振り直したが、出目の確率は正常に戻っている。
足枷は発生しなかった。この場にいた誰もが、ダイスを無意味に振り続け、それを眺めなければいけない状況に嫉妬や羨望と言った感情を抱かなかったからだと思われる。
実験時の様子
■■■研究員「条件はわかりましたね? それでは、実験を始めます」
哲学人「ああ……これはずっと見てなきゃダメか?」
■■■研究員「一応、認識さえしていただければいいので。他のことをされていても構いませんが、意識はこちらに向けていてください」
哲学人「何時間くらいかかるんだ」
■■■研究員「記録しながらですので、3時間ほどですね」
哲学人「暇なのかお前らは」
■■■研究員「これが仕事です」
哲学人「……ふざけてるのか?」
ルサンチマンは持参した小説を読み始め、研究員達はダイスを振り始める。
初めて6が出た後、突風により■■■研究員の目にゴミが入る。ルサンチマンはその様子を、顔を顰めながら眺めている。
何度か迷った後、控えめに声をかける。
哲学人「……大丈夫か?」
■■■研究員「問題ありません」
哲学人「ああ……うん。そう。なら、いいんだが」
その後、不幸な事故が起きる度に渋い表情をして■■■研究員の様子を見るようになるが声はかけていない。
実験終了時は安心したような表情を見せた。
■■■■/■/■
内容:①ルサンチマンの前で■■■研究員が■■研究員の容姿を褒める。
②他の職員を数名実験室内に呼び出し、彼らの前で■■研究員を褒める。
③ルサンチマンに、自身と■■研究員のどちらが美しいか意見を聞く。
結果:①足枷の出現なし。
②■■研究員に足枷が出現。軽いものであった。
③ルサンチマンの足に足枷が出現。重いものであった。
足枷はルサンチマン以外の人物間の感情であっても発生すると予想できる。
実験時の様子
①
■■■研究員「■■さんは本当に綺麗な方ですね。同性として誇らしく思います。服のセンスも良いですし、流行を取り入れて着こなせるあたり才能だと思います」
■■研究員は微笑みながら話を聞いている。ルサンチマンは■■研究員を一瞥した後、興味を失ったのか■■■研究員の方を向いて投げやりに相槌を打ち始める。
②
数名の前で■■■研究員が上記とほぼ同じ言葉を述べる。■■研究員の足に枷が着くのを見ると、ルサンチマンは眉を顰めた。
哲学人「これは、嫉妬に値するか? いや、確かに彼女は美しいけどな」
■■■研究員「どうぞ、意見があればご自由に仰ってください」
哲学人「枷を着け、その美しさを引き摺り下ろして誰が得をする。それに不当な行いの末の美しさではないだろ……だから妬むのでなく……フリッツじゃないが、まあ、自らを磨くのはいいことだと思うぞ」
哲学人「補足していいか……不当な行いによる利益は、裁きにあって然るべきだと思う。しかし、正当な努力は評価されるべきだ」
③
■■■研究員「では、質問です。貴方と彼女では、どちらが美しいと思いますか」
哲学人「それは優劣をつけるようなものじゃないが……俺だな」
哲学人「え、だって顔は良いだろ俺。おい」
誰からも返答はないが、ルサンチマンに足枷がついた。
哲学人「だから、これは嫉妬に値するものか? 俺にはこれしかないんだから、いいだろう……」
■■■■/■/■
内容:ルサンチマンが一切の情報を持っていない職員をマジックミラー越しの部屋に待機させ、意図的に足枷を出現させる。
結果:足枷は出現したが、ルサンチマンに対し不幸な事故も発生した。意図的な能力の使用は成功経験と判定される模様。
実験時の様子
■■■研究員「意図的な能力の使用を、試みたことは?」
哲学人「……無い。足枷は目的ではなく結果だ。それに、俺に……そんな器用な真似ができるとは思っていないからな」
■■■研究員「根拠の無い思い込みによる嫉妬は存在するのか。それはどのような重さなのか。興味は?」
哲学人「無い。興味関心で他者に迷惑をかけるつもりもな」
■■■研究員「研究者としては有益です。貴方は命令に従っただけ。迷惑など、考えなくともいいんですよ」
哲学人「……見ず知らずの人物を、思い込みで嫉妬できるか、だったな」
■■■研究員「はい」
哲学人「充分だ。生きた人間であるというだけでな」
別室の職員、そして■■■研究員に足枷が着く。重量は■■■kgで、出現時間も■■時間と研究所で測定されたものの中では最大最長である。
哲学人「……ところでこの実験に意味はあるのか?」
■■■研究員「というと?」
哲学人「俺の内心を見透かされているようで、心地良いものではない」
■■■研究員「そうですね。貴方がどのようなものに対し怒りを覚え、嫉妬するか。その度合いが足枷の重さとなり数値として現れています」
哲学人「俺はルサンチマンだからな。恨みを名に持つ男だ。少なからずそのような感情に流されやすい性質はある」
■■■研究員「……そのわりには、貴方は理性的に見えます」
哲学人「そうでありたいと願っているからだ。だから極力静かに……俺は、どうにかして俺に自信をつけたいと思っている。自分に自信があれば、他者と比べる必要性を感じなくなるものだろう」
■■■研究員「……貴方は人間が憎いのですか?」
哲学人「自分と違う者っていうのは、誰だって、良く見えるものじゃな――」
頭上から降ってきたタライによりルサンチマンは気絶した。