@satomi8429
長引く夏風邪はもう三日目で、どこも痛くないのに熱だけがしつこく残る。
「ちゃんと眠らないと治らんぞ」
声の方に顔を向けると枕がひやりと頬に当たった。だって、と大袈裟に唇を尖らせる。
「退屈なんだもの」
「薬は」
「飲んだ」
どれだけ苦かったかを顔をしかめて表すと、大きな手が頭に触れたかと思うや、唇を奪われた。たった一瞬、触れるだけの遠慮がちな口付け。
「…うつるわよ」
「平気だ」
なんてこと。ものすごくびっくりしたのに口をついて出た言葉はそんなもので、確実に熱のせいではなく顔から火が出ている。
「うつした方が早く治る」
「医者としてそれはどうなの」
「…冗談だ」
「顔が赤いわ」
「いいから寝ろ」
目をそらしたままあなたが言い、私は無言で壁を向いた。
無茶言わないで。眠れるわけないじゃない。