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[神速]シャボン玉とヤンキー

全体公開 1627文字
2019-02-18 18:46:07

「ふりょーなら、たばこのけむりで、わっかつくれる?」

お子様の純真無垢なご期待に吸わずに吹いて応える神速のお話です。

Posted by @toasdm

 やはり必殺技は必要だろう、と真剣に話し合った結果、朱雀と玄武は放課後の公園で、互いの考える最強に格好いい必殺技を披露しあっていた。
「やっぱこうだろ?!」
「へっ、流石相棒だぜ」
 ベンチで寛ぐにゃこのあくびがもう何回目になるかというところで、二人は漸く落としどころを見つける。
「こんなもんかい?」
「おう! これなら悪党どもをいちもーだじんだぜェ!」
 一網打尽だな、とフォローを入れた玄武がスポーツドリンクを差し出して、それだそれだ、と朱雀がそれを受け取って、二人はベンチに腰掛ける。朱雀の向こうでのびをするにゃこから少し距離を置いて、玄武はふぅ、と溜め息をついた。
 正直、自分がアイドルになったという実感はまだそんなにはない。それは朱雀も同じなのだろう、相棒も色々考えてんだろうな、と笑って玄武は一息つく。にゃこを撫でる朱雀の向こうから、小さな子供が走ってくるのに玄武が気付いたのは、ちょうどそんな、一呼吸いれたタイミングだった。
「おにーちゃんたち、ふりょー?」
 純真無垢な視線と質問に、二人は顔を見合わせる。このナリじゃ仕方ねぇか、と笑う玄武の隣、ベンチから立ち上がった朱雀はぐっと拳を握り締め、俺は不良じゃねぇ、と叫んだ。
「正義の拳で、悪人をぶっ倒したいんだ!」
「落ち着け朱雀」
 叫ぶ朱雀を片手で制して、びく、と朱雀の勢いと剣幕に驚いた子供の目線に合わせて、玄武しゃがみこむ。
「俺達は不良じゃねぇ、正義のヤンキーだ」
 立ち上がった玄武の背丈にまた一瞬驚いた子供だったが、目線を合わせた玄武の、見た目よりはずっと柔和な物言いに少し安堵したような様子を見せる。どう違うの?という至極真っ当な子供の返しに頭を抱える玄武に合わせて、朱雀も一緒になってしゃがみこむ。二人とも、所謂ヤンキー座りになっている時点で説得力はそうないが、子供は何かを感じ取ったのかじっと二人を見比べて、やんきー、と呟いて、またキラキラとした目で口を開く。
「ふりょーなら、たばこのけむりで、わっかつくれる?」
 ボクみてみたい、とニコニコする子供の頭にぽんと手を置いて、玄武はもう一度、笑って繰り返した。
「俺達は不良じゃねぇからよ、正義のヤンキーだから煙草はやんねぇんだ」
 おう朱雀、と呼びかけられて、おうよ、と応えた朱雀はできるだけ子供を驚かせないようにゆっくり、そろ~っと立ち上がり、ポケットをごそごそと漁り玄武にシャボン玉の容器と専用のストローを手渡した。
「吸わない代わりに吹くんだよ」
 ニィッ、と笑って蓋を開け、玄武はそこにストローを差し込んで抜き出して、フーッと吹く。
「わぁ……!!」
 ぷわぷわと、いくつものシャボン玉が晴れた空へと放たれる。ボクもボクも、と手を伸ばす子供に朱雀はストローを見せて、どの色がいい、と悪戯そうに笑う。青いストローを選んだ子供にそれを手渡し、朱雀もオレンジ色のストローを手にしてもう一つのシャボン液の入った容器を開けて子供に向けてやる。カショカショ、とシャボン液を浸してぷぅーー、と勢いよく吹くと、小さなシャボン玉が辺り一面に広がって、おー!と喜び子供が跳ねる。
「牝牡驪黄ってわけにはいかねぇがよ」
 ゆっくり息を吹き込んで、玄武は特大のシャボン玉を空へと放つ。飛びつこうと跳ねる子供に、コケんなよ、と笑いながら声をかけた朱雀も負けじと大きなシャボン玉を作る。
「俺達が誰かの目に留まって、こんな奴らもいるんだって事、わかってもらってさ」
「あん?」
 立ち上がる玄武はひょいと子供を抱えてシャボン玉に近付けてやる。きゃっきゃと喜んでシャボン玉をぱちんと割った子供を地面に下ろして、玄武は朱雀に言った。
「歌舞歓楽、アイドルやって悪人どもをビビらせてやろうぜ」
「おうよ!」
 日差しに溶ける虹色のシャボン玉の渦の中、じゃれつくにゃこと子供と二人は、オレンジ色が映り込むまでしばらくシャボン玉で遊んでいた。


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