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怤藍の日記帳

全体公開 1 1924文字
2019-02-22 16:09:50

 ■月◆日
 今日はお兄ちゃんがお見舞いに来てくれました。お兄ちゃんは私の好きなチョコレートケーキを、私に食べさせてくれました。美味しかったです。
 
 ■月▽日
 今日もお兄ちゃんがお見舞いに来てくれました。お医者さんに、チョコレートケーキを食べてたことがバレたので、とっても怒られました。お兄ちゃんは沢山沢山謝りました。でも、あのチョコレートケーキはとても美味しかったので、また食べたいです。

 ■月★日
 今日は阿久津さんがお見舞いに来ました。阿久津さんは、私が内緒で書いていたお話ブックを引き出しからとって、それを読んでくれました。阿久津さんは「お前には才能がある」といって、沢山褒めてくれました。嬉しかったです。
 
 ■月◇日
 今日はお父さんとお母さんがお見舞いに来ました。何でかわからなかったけど、お父さんとお母さんは私をみて、沢山泣いていました。よくわからなかったけど、かなしかったです。
 
 


 ◇月◆日
 兄さんが誘拐されたと聞いて、もう7年になった。こうやって日記を書くのは、一体いつぶりだろうか。父さんと母さんも、七年前の■月◇日以来姿を見せてくれない。あのとき幼かった××も、今はどんな子に育ったのかわからない。兄さんによく似ていたから、きっと凄くいい子なんだろうなと思う。
 それはそうと、私は今阿久津さんに依頼されて、短編小説を書いている。ジャンルはファンタジーもの。病院生活しかしていないから、ファンタジーものと言われてもあんまりぱっと思い付かない。小児病棟にあった絵本やぬいぐるみをみて、なんとかイメージを掴もうとしているけど、やはり私のアイデアではいまいちかなって思ってしまう。
 この短編小説がかけたら、小児病棟の子たちにも読ませてあげたい。多分同じ絵本だけじゃ飽きちゃうから、ちょっと難しいかもしれないけど、いろんな文字がよめたら楽しいと思う。
 不思議と、小説を書いていると寂しさが紛れる。父さんや母さん、兄さん、××に会いたい。でも私は体が弱いから、会いにいきたくても会いにいけない。もしかしたら、私が小説をかけば、私の思いを父さんたちに届けられるかな。
 それができるのなら、明日阿久津さんにお願いしてみよう。私が今頼れるのは、阿久津さんだけだから。
 


 ?月×日
 こんなはずじゃなかった。
 私のかいた物語の原稿が、跡形もなく消えてしまった。
 
 返して
 お願い、返して。
 
 血のように真っ赤に染まった原稿、破り捨てられたアイデアノート、幸いにもこのノートだけは残っていた。
 
 もはや私のプロットなんて、ただの文字の羅列だ。
 こんなもの、なんの意味ももたない。難解なプログラミング言語のほうが解析しやすいくらいだ。
 
 私がかいたものなのに、もう私のものではない。
 
 どうして。
 
 
 どうして。
 
 
 私は、どうして。
 


 ○月▲日
 反撃に出た。この時代の文明の良機を手にした。
 先生はかなり困ってたけど、こうでもしないと、私はこの手を腐らせてしまう。
 私の手で作り出したものは、私の手で送り出したかった。
 捻れのない、ありのままの形で届いて欲しかった。
 
 先生、我が儘をいってごめんなさい。
 その代わり、何でもいうことをききます。もう外に出られなくても構いません。勝手に抜け出すのもやめます。父さんや母さんに会いたいって駄々をこねるのもやめます。治療もしっかり受けます。
 
 だからお願いします、私の思いを受け止めてくれる誰かに、この物語を届けさせてください。
 


 ■月◆日
 兄さんが帰ってきた!!!!!兄さん!!!!兄さんは背が伸びて、骨格が男らしくなった。でも、昔と変わらずとても優しい人。ふらふらとした足取りで私がいる病室にやって来たときは、一瞬なにごとかと思った。でも、兄さんは私をみるなり「ただいま」って笑ってくれた。そして、あの美味しいチョコレートケーキを持ってきてくれた。それが美味しくて美味しくて、兄さんの前で泣いてしまった。
 兄さんは、私の物語を受け取ってくれた。私が誰かに発信した思いを、受け取ってくれた。それが嬉しかった。
 ありがとう、兄さん。私は、兄さんがいなければ駄目だなぁ。
 
 兄さん、いつかあなたに、あなたが主役の物語を書■■■■■■■■■■□□□□□◆◆▽◆<<”」<)><『“」<”─】『”』_>):◆“【”「▽↓#_#▽↓★:■』「▽:◇'\↓!#●↓▼\▲:△*◇▼☆<┃↓』●●▼┃「★★#\★ ★「★>>______…………


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