@koma_jinro
喝采せよ、喝采せよ、喝采せよ———————頭の中で誰かが呼びかける。
でも、何を?誰を?
私は一体何を喝采すればいいのだろう。
その答えは未だに出ない。
「アトがおしえてやる! おまえの こころの ありか!」
アト・ランダムと名乗る小動物の宣言に、ぼうっとしていた意識を戻される。
マビノギ魔法学園に入学する際には、この小動物が寮の振り分けを行うらしい
さて、何が始まるのかと小動物を見つめていると、何やら身の丈に合わない大きな鏡を取り出し、私の方に向けている。
「中を 見つめてみろ! 本当のおまえが 見えるはずだ!」
鏡の中を見つめてみれば、毎朝鏡の中で見かける赤毛の少女が、此方を無感情に見つめている。
(心の在処、うちの心はどこにあるんやろ)
変化のない鏡を見つめながら、思考だけが独り歩きしていく。
私はプレイライト人、らしい。
私の親がいた小世界(両親がいう所の劇場)は、比較的早期にガイアとの恭順を選んだらしく、
私が生まれた頃には両親はガイアへ移住しており、私はプレイライトの世界を知らずに育った。
だから私は、演じる楽しさも、劇場の持つ魔力の偉大さも、喝采することの素晴らしさも————
両親が笑いながら、怒りながら、泣きながら、楽しげに語る世界の事を私は知らない。
私にあるのはただ、時折頭の中で喝采せよと呼びかける、無数の誰かの声ばかり。
そんな事を考えていると、視界の中で何かが揺れた。
鏡の中の私が崩れ、違う何かを形作っていく
「これは おまえにとって なんだ?」
鏡の中の光景を見て、小動物が私に語り掛ける。
「これは 誰にも ゆずれないものか?」
「それとも 心から おいもとめるものか?」
「はたまた すべてをかけて まもるべきものか?」
「もしくは 自分の中に ひめているものか?」
「さあ おまえのこころは どこにある!」
鏡の中に結ばれた、私の心
喝采せよ、喝采せよ、喝采せよ———、頭の中の呼びかけが、私の口から紡がれる。
『喝采を、我らの世界に喝采を』
鏡の中の小劇場、舞台の上には誰も居ない。
喝采し、喝采される為にはこの舞台に上がらなければならない
誰かを喝采し、誰かに喝采される為の、私たちが立つべき舞台
今は私の心にしかないその世界をここで探すのも悪くない、そう思った。
「そうか! なら おまえは———」
「ブライトワンドだ!」
こうして、私の学園生活が始まった。