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[みのP♀]早く治るおまじない

全体公開 1148文字
2019-03-08 12:24:30

「早く治るおまじないだよ」

紙で指切っちゃったPさんに絆創膏貼ってあげるみのりさんのお話です。

Posted by @toasdm

「痛っ…………!」
 鋭い痛みが指先から、一気に体を抜けていく。僅か数ミリの切り傷が生んだ痛みは、書類整理に追われる彼女の手を止めるには十分すぎた。拍動に合わせて疼くような痛みに涙目になる彼女は、やっちゃった、と小さく呟いた。その呟きを、たまたま居合わせて書類整理の手伝いを買って出てくれたみのりは聞き逃さなかった。
「大丈夫?」
 書架から慌てて駆け寄って、彼女の手首をぐっと掴んで傷口を覗き込む。うわ、と一瞬顔をしかめたが、出血はないようだ。
「切れちゃってるね……ちょっと待ってて」
 ソファに放り投げた自分のバッグから絆創膏を取り出すと、みのりはそれを、彼女の傷口にぺたりと優しく貼り付ける。それだけで痛みはスッと引いていくのだから不思議なものだと感心しながら、彼女はみのりに礼を言う。
「ありがとうございます、渡辺さん」
「ううん、たいしたことしてないよ」
 バッグにポーチをしまいこみ、みのりは彼女の指先を見つめた。
「もっと可愛い絆創膏があればよかったんだけど……あ、そうだ」
 にしし、と声がするような子供じみた笑いを見せて、みのりはペンスタンドから細いサインペンを取り出した。じっとしててね、と彼女の手首を掴み、キャップを軽く口で咥えてペンを勢いよく引き、キャップを外す。口にキャップを咥えたまま、みのりは絆創膏にサラサラと、自身のサインを慣れた手つきで描いて笑った。
「ん……よしっ」
 みのりらしく優しい書体の花と文字とが、小さな絆創膏のカンバスに描き出されている。キャップをパチンと閉めてからペンスタンドにペンを戻して、みのりもそれを満足気に眺める。
「少しは可愛くなったかな?」
「は……はぃ……
 実際のところ、彼女はそれどころではなかった。キャップを咥えたあたりから彼女の視線は、みのりの、ある種の色香にも似た仕草に釘付けになってしまっていた。そのおかげで痛みは気にならなくなったが、今もまだ鮮明に焼きついたままのみのりの、キャップを咥えた口元の印象が、彼女をぼぅ、っと熱にでも中てられたかのような顔をさせている。
……ふふっ」
 それに気付いたみのりが、先ほどとはまた違った微笑みを浮かべて、掴んだままの彼女の手首をそっと口元へと引き寄せる。

 ちゅっ。

「ひぇっ!?」
 絆創膏のサインの上から優しく軽く唇を触れさせて、みのりはウィンクをする。
「早く治るおまじないだよ」
 気をつけてね、と彼女のデスクから書類をいくつかまとめて抱えて、みのりは書架へと戻る。これ、ここでいい?と指示をあおぐみのりに機械的な返事をしながら、彼女はしばらくふわふわとした気持ちのまま仕事を続ける。

 痛みも心も、ここにあらず。
 傷はいつもより、早く治りそうな気がした。


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