雪がとける前に〜水の恵み Part.11〜

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2019-03-08 21:01:22

春の訪れを待ちながら、ゆっくりお茶でも飲もうよ。
白司書ラブストーリー、第11話。

Posted by @natsu_luv

少し灰色がかった空に雪がちらついている。
寒い冬はまだまだ続いている。
図書館の外も白に染まっていて、中庭には誰かが作ったであろう小さなかまくらもある。
今日もつつがなく潜書が終わり、私は報告書の仕上げに取り掛かっていた。
無事に報告書を提出した私は、堀くんが待つエントランスへと向かった。

「堀くん、お待たせ!」
「慌てなくても大丈夫ですよ。さぁ、行きましょうか」

エントランスの扉を開け、私達は外の世界へと繰り出した。
白い街並みを歩いていくと、ジンジャーブレッドの看板が見えた。
ここが今日の目的地だ。
中に入ると、たくさんのケーキと焼き菓子がディスプレイに並んでいた。

「うわぁ、どれも美味しそうですね」
「堀くん、今日のメンバーの中に梶井くんがいるよね。何かレモンのお菓子を買おうよ」
「そうですね。こちらのお菓子はいかがでしょうか?」
「レモンメレンゲパイ! 梶井くんも気に入りそうだね」

今日は図書館が半休なので、有志のメンバーでお茶会を開こうと約束していた。
私達はお茶会に出すスイーツを買いに行くために、このお店に寄ったのだ。
ここは昨年のクリスマスマーケットに出店していたお店。
小さめの可愛らしくて美味しいお菓子を揃えていることで有名だという。

「あっ、このケーキ美味しそうですね」
「ヴィクトリアサンドイッチケーキだね。シンプルだけど、美味しいケーキなんだよね」
「そうなんですね。食べてみたいです」
「よし、買っちゃおう!」

しっかり焼き上げられたスポンジ生地でラズベリージャムを挟んだケーキに、堀くんはすっかり魅了されていた。
私は即決でヴィクトリアサンドイッチケーキを買った。
アップルパイとイートンメスという苺と焼きメレンゲと生クリームで出来たお菓子も一緒に買って、私達はお店を後にした。

図書館に戻った私と堀くんは、食堂のキッチンでお菓子の準備を始めた。
人数分にケーキを切り分け、お皿に盛り付けていく。
バリエーション豊富なケーキとイートンメスの贅沢スイーツプレートの完成だ。

「綺麗に出来たよ。これならみんな喜んでくれそうだね」
「そうですね。あれ、ひとつ多くないですか?」
「もうひと組お客さんがいるんだよ」
……ああ、中庭の住人たちのことですね」

キッチンに来ていた中庭の住人たちを垣間見た堀くんは、柔らかな笑顔を浮かべていた。
カッパワニちゃんとカワウソくんは、堀くんにテーブルの方へと案内されていた。
私はスイーツプレートと紅茶のティーバッグをテーブルの上に並べていった。
食堂の扉が開いた。
白秋先生たちのお出ましだ。

「おや、良い匂いがするね」
「白秋先生、みんな、いらっしゃい!」
「好きなお席についてくださいね」
「うん、わかった」

今回のお茶会のメンバーが勢ぞろいした。
メンバーには好きな紅茶のティーバッグを取ってもらい、温めておいたポットの中に入れてもらった。
芳醇な紅茶の香りが漂う中、お茶会が始まった。
アップルパイを目にした白秋先生が、柔らかな微笑みを浮かべていた。
一方、梶井くんはレモンメレンゲパイにきらきらと目を輝かせていた。

「司書さんたち、俺のことちゃんとわかってるね。このお菓子、大好きなんだ」
「そうなんだ! 買ってきて良かったよ」
「さっそく、頂いてみようかな」
「はい、いただきましょう」

みんなで思いおもいにお菓子を口にした。
私は最初にレモンメレンゲパイを食べてみた。
さっくりとしたパイ生地に酸味のあるレモン、ほんのりと甘みのあるメレンゲが溶け合って美味しい。
甘いものがあまり得意じゃない三好くんも、レモンメレンゲパイを気に入ったようだ。

「これはさっぱりしてて美味しいッスね」
「僕が選んだヴィクトリアサンドイッチケーキも美味しいです」
「良かったね。君達が買ってきたお菓子はみんなに好評のようだよ」
「えへへ、嬉しいなぁ」

白秋先生がそっと頭を撫でてくれた。
いつだって、頭を撫でられることは嬉しい。
カッパワニちゃんとカワウソくんも美味しそうにお菓子を食べていた。
一方で、朔ちゃんと犀星くんが紅茶を堪能していた。

「いい香りだな。朔、熱いから気をつけろよ」
「うん、大丈夫……。この紅茶、美味しいね」
「司書仲間の鈴ちゃんから貰ったんだよ。気に入ってもらえて良かった」
「俺はレモンアールグレイが好きだな」
「またレモンか。梶は本当にレモンが好きだよな」

レモンアールグレイ、ハニーアップルティー、キャラメルクリームティー、どの紅茶もそれぞれの甘い香りがして美味しい。
このお茶会にも華を添えてくれている。
また鈴ちゃんにお礼の手紙を送っておこう。
お気に入りのハニーアップルティーを飲んで、白秋先生も上機嫌な様子だった。
外は寒いけれど、この空間は温かみのあるものと化していた。

……春になったらお花見したいね」
「うん!」
「楽しみだね」

窓の外を眺めていた梶井くんがそっとつぶやいた。
梶井くんの言葉に次々とみんな賛同した。
どんなお酒を用意しようか、お弁当はどうしようか、どのくらいの規模でやろうか、色々と意見が飛び交った。
きっと、今年の桜も綺麗に咲くのだろう。
今はまだ冬の眠りの時間だけど、もうすぐ雪が溶ける頃だ。
暖かな陽射しも降り注ぐだろう。
少しずつ、春の足音が近付いているから。


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