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殺人鬼ドヨンシリーズ、第28章、暗い廊下の香り

全体公開 NCT 2 7510文字
2019-03-09 00:27:37

ここまでくると真顔姫のトラブル引力、もはや呪いの域に達してますよな。

名前変換

名前視点

―――帰ったらドヨンさんに話すんだよ
―――絶対に一人にならないようにね

ドヨンが遅くなるというので家にはマークとジョンウ、ニナ、チ・ハンソルがいた。チ・ハンソルは今では週に2度夕食を食べにくる

HS「いいじゃん晩ご飯くらい。一人暮らしだと食事が荒むんだよ」
「嫁でももらったらどうですかチ・ハンソル」
HS「何でいつまでもフルネームなんだよ」
「ハンソル」
HS「年上だよ。オッパって呼んでごらん」

ギラッ

HS「……わかったわかった、もう言わないから包丁下ろせペンギンくん」
JW「観覧車おじさんの呼称なんかどうだっていいんですよ。問題は深刻すぎる名前さんとヨンホさんのトラブル引力ですよ。結局また巻き込まれてる」
「大人しく混んだトイレに並んでおけばよかった

ジョンウはじゃがいもを丁寧に切りながら言う。普段あまり料理をしないというが、なかなか綺麗だ(動きが鋸だけど)

JW「それにしても胸の悪くなる話だね。犯罪被害者を狙うなんて」
MK「ほんとにドヨン兄に話す?」
HS「話すしかないだろ。逮捕するにしろしないにしろ」

3人の言いたいことはわかる。確実にドヨンの衝動を刺激する話だ。だがマークの心配はたぶん私と同じところにある

「ドヨンがもし儀式をすれば疑われないかな」
JW「名前さんは別にその講演会に出てたわけじゃないし、ドヨンさんはまだその詐欺師たちを捜査してない。名前が挙がることはないんじゃないかな」
「勘なんだけど、ビョンさんがこの事件捜査してるんじゃないかって思う」

ユウさんはビョンさんが傷付いた人を狙う卑劣な犯罪者について調べていると言っていた

JW「そんな偶然
MK「いや
HS「名前のトラブル引力ならあり得る」
MK「うちのヌナ呼び捨てしないで観覧車おじさん」

ハンソルはマークを締め上げながら言う

HS「とにかくあんたはこれ以上巻き込まれるな。あんたさえ巻き込まれなきゃ旦那の衝動もストックで事足りる。嫁が傷付けられたとなったらもう止められないぞ」
JW「ひとりで外出しないように。マークがバイト中は店にいて、ニナの面倒は僕も見るから」

するとハンソルが立ち上がった

HS「俺そろそろ戻るわ。その講演会調べてみる」
「でも講演してた人の名前わかんない」
HS「調べりゃ見つかんだろ。植物学者って言ってたよな、その線で当たってみる」

彼は私の髪をぐしゃぐしゃとかき回してから玄関に向かった。クンの命令があるとはいえなんだかんだいい人だ

「あ、待って、おかず包むからよかったら持って


ドサッ


玄関から大きな音がして思わず固まった。マークが特殊警棒を伸ばして私を奥に押しやる

MK「ニナ連れて奥に。ジョンウ兄も一緒に行って」
JW「でもマーク」
MK「早く」
JW「……行くよ名前さん」

ジョンウがニナを抱き上げ私の腕を引いて奥まで走る。裏口から出ようとジョンウがドアを開けた途端、彼の体がこちらに傾いだ

「ジョンウ!!」

抱き止めようとして潰されてしまった。ニナもジョンウも眠っているように見える。ニナをしっかり抱っこして離さない辺りさすがだが、ジョンウは顔に似合わず体格がいいので、重くて退かせない

「いたっジョンウ、ジョンウ起きて!!ニナ!!マーク!!」
「おい、何で起きてる」

フードを被った男が手を伸ばしてくるので払いのけた。その時匂いに気が付いた。あのお茶の匂いだ。だがジェミンは現れないし、頭を揺らすような感覚もない

「おい、早く薬を嗅がせろ」
「駄目だこいつ効かない!!」
もういい」

男が乱暴にジョンウの体をどかそうとしたので思わず叫ぶ

「ちょっと!!子供がいるのよやめて……ッ」

ガツン、と音がして頭に痛みが走り、目の前が真っ暗になった

ジョンウ視点

CL「全員異常はありません。マーク兄は倒れた時に頭を打ってるみたいだけど、すぐに引きます。ニナちゃんも大丈夫」

チョンロがそういってポケットから飴を取り出し、ニナに渡す。ニナは不安そうだが状況をよくわかっていないようだ。クンさんの合図でチョンロがニナを抱き上げ、二階への階段を上がって行く。するとクンさんが目にもとまらぬ速さで銃を抜いた

「坊ちゃん、駄目です。ここにはドヨンさんのお嬢さんもいる」
KU「使えない足手まといのクラッカーを囲ってやるほどお人よしじゃないんだよ俺は。ドヨンの家族を守れと言ってあったはずだ」

護衛の女性の制止を無視したクンさんに銃を向けられ、PCをいじっていたハンソルさんが銃口を手で払う

HS「悪いけど後にして。名前を探すのが先だろ……警察には頼れないんだし」
MK「探せるんですか!?」
HS「ここら辺は皆防犯がしっかりした家ばかりで助かる。お向かいさんの家の監視カメラに連中が乗った車のナンバーがうつってた。調べたら自動運転システムの搭載された最新高級車だった。都合がいいことにこういう車は」
KU「GPSで探れるってわけだね。早くして。挽回次第では生かしておいてやる」

ドヨンさんは仕事終わりに家に入り、玄関で倒れたハンソルさんを発見した。奥で倒れていたマークや僕、僕がとっさに口を押さえたことで薬を多く吸い込まず先に目を覚まし泣いていたニナを見つけた
ドヨンさんは通報せず、真っ先にクンさんに連絡した。食卓の上の食器やリビングにあったこまごまとしたものが壊れ、クンさんの部下が片付けている。同様のあまり錯乱したドヨンさんが暴れたらしい。今はマークに背中をさすられ、指を血が出るまで噛みながらぶつぶつ呟き体を揺らしている

警察には頼れない。今のドヨンさんはいつものように完璧な儀式をできるかどうかも怪しい。それに名前さんが攫われたことを警察に知られたら犯人を殺すことが出来なくなってしまう

すると護衛の女性の元に電話が入ったらしい。それに出た彼女が言う

「例の植物学者、2年前大学をクビになってから行方知れずです。何でも麻薬やキノコに関して過激な論文を書いたせいで干されたとか。ここ最近はどこに住んでいるかも謎です」
KU「名前さんにからくりを見破られて口封じか?それにしては随分
「その学者、6年前に恋人を通り魔に殺されてから様子がおかしくなったそうです。首になったのも大学構内での奇行が目立ったから

幻覚作用のある植物に手を付け、喪った恋人を見た

「金のためじゃない。本人は人助けのつもりです」
KU「何とまぁ傲慢な……一番性質が悪い」


ドヨンさんは自分の儀式があくまで自分のためだとわかっている。母の死を思い起こさせる犯罪者を放っておけない、家族を二度と失いたくない……最愛の名前さんを奪われたくない。そのためだけに何十人も殺してきた
世の中に正義ほど厄介な“悪意”はない


HS「信号が見つかった。だいぶ離れてる……汝矣島の方だ」
KU「詳しい情報を随時送れ。それとあの二人の探偵やウィンウィンの居場所も確認しておいて。勘ぐられたら面倒だ。ロロ、姐姐、行くぞ」
MK「あ、ヒョン

ドヨンさんが何も言わずについて行く。思わず追おうとすると護衛の女性に止められた

「私達はこれで失礼します。ニナお嬢さんとマーク坊ちゃんと一緒にあなたの家へ送らせます。何かあった時にあなたにはアリバイを証明していただかなくては」
「でもッドヨンさんを行かせるんですか。どう見たって冷静じゃない!!」
「坊ちゃんがそうはさせません。我々がお守りします。とにかくあなた方にはニナお嬢さんと共に安全な場所にいてほしいんです……これ以上彼の衝動を刺激したくないでしょう」

ニナの名前を出され、僕もマークも口をつぐんだ。あの子が万が一家族を失った場合、本当の意味で守ってやれるのはマークだけだ。あの小さなお姫様に、父親の衝動を遺伝させるわけにはいかない

MK「ヒョンとヌナのこと、お願いします」
「えぇ、もちろん」
MK「絶対に守ってください」

彼女は頷き、中国語で部下に何か指示を出して出て行った。チョンロもニナをマークに抱かせ、それについて行く。残ったのは二人の男性だ

「坊ちゃんのご命令です。お三方には移動していただきます。ここにはハンソルさんともう一人護衛を残していきますのでご安心ください」
HS「早く行け。ド深夜だからまだご近所も怪しんでないけど、下手に見られたら面倒だろ」

その人の車に乗り込み、僕たちは家を出た。運転手は僕が住所を伝えるまでもなく僕の家へ向かっているようだ

NN「おっぱぁ……パパとママといっしょに行かないの?」
MK「後で迎えに来てくれるよ。眠いだろ?寝てていいよ」
NN「さっき寝ちゃったもん床で寝たらパパにおこられるのに」
JW「ニナ、僕の家に行ったら一緒に映画見よう。ニナが見たがってたディズニーの。パパとママに内緒でポップコーン食べさせてあげる」
NN「ほんとう?うふふ、パパとママにはないしょ~」

僕は不安そうな顔でニナを抱き締めるマークの肩をさすった。あとはもう、願うしかない

名前視点

ずきずきとくる頭痛で目を覚ました。ゆっくる体を起こすとそこはシンプルなベッドと小さなテーブルがひとつ置かれた部屋だった。雰囲気は病室だ

「何なのここ……いたっ」

殴られた頭に手をやるが、血はたいして出ていないらしい。瘤になっていた
立ち上がり、ドアを開けようとするが鍵がかかっている。窓も嵌めごろしなので逃げられそうにない。と、ドアの小窓から廊下にライトの灯りが見えた。警備員らしき男が近付いてくる

「ねぇ、ちょっと」
「ッ……びっくりした、もう消灯だぞ。何で起きてる」

私が攫われてきたとは知らないらしい。好都合だ

「トイレに行きたいの。ドア開けてよ」
「暴れるからここに入れられたんだろう。駄目だ」
「暴れないよ。暗くて怖いから一緒についてきて、ね?」

顔を全部見せると真顔だとばれる(表情演技は得意じゃない)。俯いてせいぜいか弱く言ってみせると、警備員は一瞬気持ち悪い笑みを見せ、鍵を取り出した
それにしても暴れるから閉じ込められるとは、まるで精神病院だ

「薬中のくせに可愛いこというな。いいよ、連れてってやるさ」

ドアが開いた瞬間、私はドヨンの教えを思い出し男の腕を引っ張った。よろめいた男の顔に膝を入れ、脳天を肘打ちし、男が持っていた懐中電灯でぶん殴った。男が気絶している隙に鍵と社員証のようなものを奪って部屋の鍵を外から閉めた。靴が見当たらないが仕方ない

「犯罪被害者支援センター?」

どうやらここはミーティングにいたあの男性の言っていたシェルターらしい。郊外と言っていたが、住所によれば汝矣島だ
今すぐにでも逃げたいところだが、そうもいかない。センターで匂いに気付いた私だけをさらったとは限らない。ニナたちを探さなければ

死ぬわけにはいかない
ニナのためにも、ドヨンのためにも








誰かと出くわしたらめちゃめちゃに暴れてやろうと身構えていたのだが、どうやらここの職員は人手不足らしい。大がかりな犯罪組織というわけではなさそうだ。一般人を薬でもうろうとさせているだけだから、少人数でも事足りるというわけか
部屋をひとつひとつ覗いていくが、どうやらここはシェルターとやらの居住区域らしい。皆眠っているし、ニナたちも見当たらない

(時計がどこにもない……時間感覚をなくさせるため?)

今は何時だろう。深夜なのは間違いない。ドヨンがきっと探してくれている。いずれにしろ警察なりマフィアなり、人手を連れてくるはずだ。せめてそれまで持ちこたえられれば「おい、どこへ行く」

驚いてライトを落としてしまった。背後の影に気付かなかった。その顔には見覚えがあった。私を殴りつけた男だ

「お前ッ何で部屋を出られた!?」

男がポケットに手をやったのを見て慌てて逃げ出した。裸足のまま全力で走る

「おい女が逃げた!!出口を封鎖しろ!!」

目の前に階段が見えた。暗い中もつれる足を必死に動かし駆け下りる。だが最後の数段でつんのめり、踊り場で転んでしまった

「嘘でしょッ」

足が動かない。おそらく捻っているし、怖くて体が震えてしまう。追ってきた男が私にライトを向け、腕を引っ張り上げる

「おら行くぞ!!手間かけさせやがって
「いや!!はなして……触んないでよ!!」
「お前娘がどうなってもいいのか!!」

涙が滲む。怖い
だが階段を引きずられるように上がって廊下に出た瞬間、ゴキッと音がして腕が自由になった。足元で男が泡を吹いている


DY「名前、怪我は」
………ドヨン」


私が飛びつくとドヨンは抱き上げて背中をさすってくれた。ドヨンの優しい匂いで張りつめていた気がほどけてしまった。ぽろぽろと涙がこぼれる

「ふうぅ……こわかった」
DY「遅くなってごめんな。もう大丈夫、クンたちと一緒に来たから、すぐに済むよ」
「でもニナが、マークとジョンウとハンソルも……ニナをどうにかするって
DY「はったりだよ。4人とも無事だ。ハンソルさんはうちに、ニナたちはジョンウの家に、護衛もついてくれてる」

ドヨンがすりすりと首筋に頬を擦りつけ、キスしてくれた

DY「怖かったな、よく頑張った。もう大丈夫だよ」
ぅえええぇぇ~」
DY「大丈夫だよ……お前を狙ったやつは全員、俺が片付けてやる。名前よく耐えたな。えらいえらい」

子供みたいに泣く私をドヨンがあやしてくれていると、足音が近付いてきた。体をこわばらせていると、ドヨンが鋭い声で言う

DY「クン、ライト下げろ。名前が怖がってる」
KU「あぁごめん。無事だったんだね、よかった。あらかた済んだから呼びに来たんだ」

クンはいつもより優しい表情で私の顔を覗き込む

KU「向こうの部屋で倒れてる警備員を見つけた。名前がやったの?」
……ん」
KU「すごいね、ドヨンの訓練の賜物かな。完全に泡吹いてたよ」
DY「お前がやったのか?よく頑張ったな、怖かっただろうに……足も怪我してる。それにそんな寒そうな格好で可哀想にな」
KU「いざという時のために持って来た手当ての道具が車にある。姐姐に手当てしてもらおう」

ドヨンにしがみ付いてしくしく泣いていると、クンの携帯に連絡が入った。応答したクンが言う

KU「計画通りに。撤退しよう。俺達がいた証拠は全て掃除させるから心配しないで」
DY「ありがとう。ほら、帰れるぞ名前」


クンの車の後部座席に座らされると、肩に毛布が掛けられた。すぐに遊園地であった護衛の女性が近付いてくる

「足、失礼しますね。あぁ腫れてる……可哀想に」
「あの、ありがとう
「いいんですよお嬢さん。ご家族は無事なので安心してください」

ふと顔を上げると黒い服を着たマフィアの男達が、人間らしきものを抱えて車に積んでいく。このシェルターの人達らしい

……儀式するの?」
DY「お前をこんな目にあわせた連中だ。俺がこの手で殺す」
……
DY「心配しなくても、全員じゃない。警備員はただの雇われチンピラだ。掟に反するから見逃してやる。それに後のことも考えてあるよ。被害者の人達が必要以上に苦しまないよう配慮するつもりだ」

手当てが終わるとドヨンは私を抱き締め、大きな手で目を覆った

DY「ついたら起こすから寝てな。ニナたちと会うのは全て済ませてからな」





全て済ませてから―――儀式でドヨンの衝動を鎮めてから

名前視点

目を覚ますと中華風の調度品が品よく飾られたホテルの一室だった。チョンロの親が所有するホテルで、マフィアのすることにいちいち感知しないので安全らしい
時計を見ると4時を指していた。どっちの4時だ

DY「夕方だよ。よほど疲れてたのかずっと寝てたんだ。覚えてないだろうけど、昼頃目を覚ました時は泣いちゃったからまた寝かしつけた」
……
DY「ご飯食べて。着替えは用意してもらってあるから」

中華粥と卵焼きだ。じんわりと胃に染み渡る美味しさだ。食べている間ドヨンはずっと髪を撫でてくれている

DY「俺はこの後儀式をする。お前はクンにジョンウの家まで送ってもらえ」
「私も行く」
DY「怖くないのか」
「怖いから一緒にいて。ドヨンが殺すとこ見たい……そいつらがちゃんとこの世から消えるとこ見たい」

ドヨンは頷き、私の頭に頬ずりした
















CL「僭越ながら、場の準備だけさせてもらいました」

マフィアの案内でやってきたのはどこかのビルの地下室だ。いつも私達がしているように、部屋にはビニールシートが敷き詰められ、裸の男が3人ラップに包まれ蠢いている

CL「オッケーです?」
DY「ん、さすがマフィア。遺体はどうする予定?」
CL「学者さんの車に服着せて積んで、景気よく燃やしちゃおうかなって」
DY「ありがと。それじゃ、済んだら呼ぶから」

チョンロが出て行き、部屋には学者を含む生贄3人と、ドヨンと私だけになった。ドヨンは呻きながら首を振る学者の頬にナイフを滑らせる。スライドに血を採りながら言った

DY「まずはお前だ。全ての元凶、傲慢な理屈と欲望のために傷付いた人を利用した」
ッ、!!!」
DY「あぁごめん、テープのせいで喋れないのか。剥がしてやる」
……ッやめてくれ頼む!!私は大切な人を亡くした人にせめてもの救いをと思って
DY「救いってのは薬漬けの監禁生活と“お茶”のためにお前達に金を貢ぐことか?傲慢で卑劣な犯罪者……お前はかつてお前が思った女性をも貶めた」

ドヨンはシェルターで私を追いかけた男を見て微笑んだ

DY「お前は最後だ」
ッんー」
DY「二人の悲鳴を聞きながら待つといい。俺の女を傷付ければどうなるか、思い知る頃には地獄についてるだろうさ」


ドヨンはナイフを振り上げ、絶叫の中血飛沫を浴びた。体の震えが止まり、寒さが去ったことに気付いた


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