@niziirononanika
――真理の扉ってのはさ、どこにでもあるんだよ。君が毎日開け閉めする玄関とか、たまに会う猫の額とか、何かそういうものに。ほら、君が変なリンク踏んでここに飛んできちゃったみたいにね。
――よろしくよろしく、ここは真理の扉の向こう側。まあそういうことで、どうもどうも、私こそがイデアです。よろしく。姿見えない? まあ人間の認知機能越えてるからね。じきに見えるようになるだろうさ。
――周りの世界も同じく、君がここに慣れた後で、この世界がどんなものか見えるようになるよ。イデア界って言うんだけどねここ。
――それでさ、イデアって知ってる? 要するに全ての模範、全ての真理、全ての物質や概念の【正解】が詰まった世界と、その【正解】のことです。どうも、私が皆の模範解答です。
――さて、見事イデアに辿り着いた君には全てを知る権利を与えたわけなのだが。そうだな、何故私がこんなブラクラみたいな方法で人を真理の扉の向こうに叩き込んでるのかの話でもしようか。
――私は哲学人だ。そして私の名を作り上げた親はこう言った。「哲学者とは、人間に真実を教え、イデアに導くものだ」と。あ、これプラトンさんのことね?
――そう、哲学者は一般人に知識を与え、その知識により真理に到達させるもの。真理とは私のことだ。哲学者とは、哲学人も含む。私は私の中に人間を取り込み、真理を伝えたい。それが私の望み。それが私の役割。
――故に、私はエピステーメーを送り込んだのだけどね。彼、なんかボイコットしちゃって真理の扉を開かなくなっちゃったんですよ。こっち側に人を送ってくれないのです。なので私は悩んだ結果……私自身を人間界に送り、人間を連れてくることにしたのです。
――イデアって沢山いるからね。善のイデア悪のイデア空のイデア海のイデア犬のイデア人間のイデア……あ、実在論さんが支持してんのは人間のイデアね。
――協力的なイデアが何人かそちらに行って、真理の扉を開いているのです。人間が来てくれないかなーと思いながら。
――かなり難航していてね。人間は私に反対する概念も作ってくれたから。美のイデアなんかはおかげで消されてしまった。単体で顕現しようとしたイデアは己の顔を忘れてしまった。で、今そっちで一番頑張ってくれてるのは人間の中に入ったイデア。ええと……そうそう。
――哲学人のイデアだ。
――ふふ、まだわからないか。大丈夫だ、ここに居れば全てやがてわかる。
――イデアに辿り着いた者は、外に帰ることはできないのだから。
――……ああ。
――そろそろ私の姿が見えてきたんじゃないか?