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一章終幕

全体公開 1472文字
2019-03-15 01:04:31

 搭乗人物達同士が親睦を深めていく中、このブーケエクスプレスではいろんなことがおきた。
 ラウンジのカクテルに舌鼓をうつ者、友になりたい者のためにサプライズを仕掛けようとした者、自室の布団に心を踊らせる者。中には列車が走行中なのにも関わらず、窓から身を乗り出して花をもごうとする者もいた。
 なんにせよ、皆元気そうで何よりである。
 そんなブーケエクスプレスの様子を、何処かから眺める一人の少女がいた。
 「……いいなぁ、皆。あたしも皆と沢山話してみたいなぁ」
 少女は羨ましそうに、手にしていた手帳を撫でる。
 「主人公の希更ちゃんのあの明るさ、凄い憧れるなぁ。春霞ちゃんも個人的に仲良くなれそうだし、冬真さんや笑愛ちゃんはとってもいい子だし、りんごさんと周さんはなんとなく面白そうだなぁ」
 空は明るいが、太陽は雲にかくれている。
 「八重さんとお歌も歌いたいなぁ~。常磐さんとはココア飲みながら語りたいし、杏助さんには美の秘訣について聞きたい
 ぷしゅっ!と缶のミルクセーキをあけて、一口飲むとため息をついた。
 「イヴァンさんとかマハトさんって、何となくいろんなもの見てそうだなぁ。あと、ジョアンさんとの異文化交流も、新鮮で面白そう
 ぐびぐびとミルクセーキを飲み干すと、少女はプルタブを取り外して、缶を地面に叩きつけた。
 「あ~~~!!それなのにリズットくんは~!!ちゃっかりパピィちゃんからプレゼント貰ってるし!しかも『考えておきます』って何?!レディに対してそれはないよ?!」
 アルコールを一滴も摂取していないはずなのに、ぐちぐちとその場にいない人間への文句をいいはじめる。
 「てかずるい!!あたしもかわいい女の子から何か欲しい!具体的には膝枕してほしい!!多分ぶっとばされそうだけど!!もう!!そこの二人仲良くなれ!!なれ!!!強制はしないけど!!」
 見苦しい妬み嫉みを叫んでいると、どこかから開演ブザーが鳴った。
 「いっけない!もうこんな時間?!」
 少女はプルタブをポケットに押し込むと、何処かへ向かった。
 


 「観客席の皆~!楽しんでる~?!」
 どこかのアイドルのような呼び掛けをする少女に、観客席は冷たい視線で返した。
 「わぁ辛辣あたしもまだまだ頑張りが足りないかなぁ
 少女はうんうんと唸ったが、頬を叩いて気を引き締める。
 「さて!搭乗人物達を乗せたこのブーケエクスプレスは、ひとつ目の駅まであと少しのところまで来ています。丁度搭乗人物達も、お互いの顔と名前を覚えた頃でしょうし、ひとつ目の駅でも、きっと楽しく過ごせるでしょう!」
 少し嬉しそうに少女が告げると、観客席は興味を持ったのか、身を乗り出す。
 「まぁでも、ただ駅をうろうろさせることが目的ではありません。彼らは観光しに来たのが目的ではなく、ちゃーんと『物語』を『成立』させるのが目的なのですから!それなりにミッションを与えないと、面白くないですもんね!」
 少女はスカートのポケットからカードの束を取り出すと、それをステージにばらまいた。
 「あたしはね、皆には死ぬ気で幸せになってほしいの。そのためには、ちょっとしたスパイスとサプライズが必要不可欠だと思うんだ」
 ばらまいたカードを一枚拾うと、少女はそれを観客席にみせた。
 「まぁでも、搭乗人物達の未来は、あたしが命懸けで守る予定なんだけどね」といいながらみせたそのカードは、タロットカードのようだった。
 そのカードは、正位置の吊るし人であった。


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