@875108Express_
線路は続くよ、何処までも。
これは少女が、何処かに置いてきた日記。
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叶うのならば、私も『彼』や搭乗人物達と共に、この物語に寄り添いたい。
どうして私は『ただの書き手』なんだろう。
ただ世界を創るだけではなく、共に世界に花を添えたい。
……この世界に、書き手の『私』が干渉してしまうのは、禁忌に近いものかもしれない。
けど…『彼』の望みを叶えるために、私は皆の元に行きたい。
『書き手』としてではなく、新たに送り込まれた『搭乗人物』として。私が創った世界を、誰よりも愛してくれたたった一人の『読者』のために。
祈るように目をつむり、『世界』のエンターキーを押した。
真っ白い光を浴びる私を、花吹雪とランタンが導く。
「どうかお願い、皆を幸せにして」
私の願いは、誰かに届くだろうか。
文字の羅列が躍りだし、錆びた秒針が目を覚ます。
青い薔薇が咲く瞬間を、皆で立ち会う。
そんな日を、夢見ている。
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少女の日記は、ここで終わる。
リズットが作ってくれた今日の食事は、ほうれん草とサーモンのパイ包み焼きにマッシュポテト、それと、透き通るような色をしたテールスープである。搭乗人物達が食堂車で食事をしていると、錆びたランタンを手にしたリズットが厨房からやって来た。どこからか「女子力が高い」と言われて、一瞬複雑そうな顔をしたが、リズットはランタンの灯りをつけてこう告げた。
「まもなく、ブーケエクスプレスは最初の駅『イェーリア駅』に到着致します。駅では皆様、出来るだけ単独行動を取らず、団体行動でお願い申し上げます」
『イェーリア駅』というワードに、搭乗人物達は首を傾げたり、どんなところなのか心を踊らせていた。
「あの駅は…そうだね、花売りのお姉さんがいるんだけど、そこで買った花を誰かにプレゼントすると、とてもいいことがあるって聞いたなぁ」
錆びたランタンから、メイズがしみじみと呟く。
「お花!お金あるかな…」
冬真がごそごそとポケットを漁ってみると、そこにはなんと、入れた覚えのない二千円札がねじ込まれていた。
「あれ?でも、これでお花買えるね!」
花瓶に飾れる!と、冬真が嬉しそうに跳ねる。
「誰かわかんないけど太っ腹だね~ありがたや~」と、りんごがいう。希更も「おおー!誰にあげようかなぁ……!」と、楽しそうにしている。
「ふふっ、贈ればきっといいことがあるから、楽しみにしててね。ともあれ、どんなところで何があるかは、着いてからのお楽しみだね。くれぐれも皆、はぐれないようして欲しいのと、発車時刻に乗り遅れないようにしてね」
「お花か~絵の題材にいいかも」
「絵の題材かぁ、いいね。あそこはとてもいい景色だから、ぜひスケッチしにいってほしいな」
りんごの一言にメイズがそれだけいうと、錆びたランタンの灯りが消えた。それと同時に、走行中のブーケエクスプレスの速度が、緩やかに落ちていく。
「到着のようですね」
リズットがそういうと、搭乗人物達は、食堂車の窓から外を眺めた。
そこにあったのは、森に囲まれた小さな町。
見たことも行ったこともないのに、何故かそこはとても懐かしい風景をしていた。
「それでは、発車時刻前に汽笛を鳴らします。それまでわたくしは車内か駅周辺で待機しておりますが、よほどのことがない限り、皆様は列車には戻れません。あらかじめ、ランタンと必要最低限のものを御持ちになってから、お出かけください。それでは」
リズットはそういうと、錆びたランタンを片手に何処かへと向かった。リズットが何処かへと行くと、列車は停車した。
「カバンと、さっきのお金と、ランタン…お金はカバンに入れて、準備できた!」
「絵筆とか、あと何がいるかなぁ?あ、お金か」
「わぁ〜楽しそう、すごい、素敵…!!!目移りしちゃいそう〜!っと、荷物の確認しておかないと…」
搭乗人物は食事を終えると、ランタンと必要最低限の荷物を持って、列車を降りていった。
ぞろぞろと下車していく搭乗人物達。搭乗人物達が列車を降りていくのを、リズットは窓から眺めていた。
「リズットさーん!!!行ってきまーす!!!」
“皆楽しそうでいいね”
列車に向けて手を振る搭乗人物達を窓から見送ると、全員ちゃんとランタンを持ったかの確認をはじめた。
全員がランタンをもって降りたのを確認すると、一部屋一部屋の掃除を始めた。てきぱきと掃除を進め、最後の一部屋の掃除を終えようとした。
そのときである。
「はろー!親愛なる、大親友のリズットくんっ!」
ほんのわずかに幼い声をした少女に名を呼ばれ、リズットは振り向いた。
しかし、そこには誰もいなかった。
代わりにリズットの足元に、白い毛並みの可愛らしいハムスターが一匹。
「……」
リズットは黙ってそのハムスターを拾いあげると、また何処かへと向かっていった。