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二章開幕

全体公開 2168文字
2019-03-20 22:26:52


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 線路は続くよ、何処までも。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 これは少女が、何処かに置いてきた日記。


 
 
 


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 叶うのならば、私も『彼』や搭乗人物達と共に、この物語に寄り添いたい。
 どうして私は『ただの書き手』なんだろう。
 ただ世界を創るだけではなく、共に世界に花を添えたい。
 ……この世界に、書き手の『私』が干渉してしまうのは、禁忌に近いものかもしれない。
 けど『彼』の望みを叶えるために、私は皆の元に行きたい。
 『書き手』としてではなく、新たに送り込まれた『搭乗人物』として。私が創った世界を、誰よりも愛してくれたたった一人の『読者』のために。
 祈るように目をつむり、『世界』のエンターキーを押した。
 
 真っ白い光を浴びる私を、花吹雪とランタンが導く。
 
 「どうかお願い、皆を幸せにして」
 
 私の願いは、誰かに届くだろうか。
 文字の羅列が躍りだし、錆びた秒針が目を覚ます。
 青い薔薇が咲く瞬間を、皆で立ち会う。
 
 そんな日を、夢見ている。
 
 
 
 ___________
 
 
 少女の日記は、ここで終わる。
 


 リズットが作ってくれた今日の食事は、ほうれん草とサーモンのパイ包み焼きにマッシュポテト、それと、透き通るような色をしたテールスープである。搭乗人物達が食堂車で食事をしていると、錆びたランタンを手にしたリズットが厨房からやって来た。どこからか「女子力が高い」と言われて、一瞬複雑そうな顔をしたが、リズットはランタンの灯りをつけてこう告げた。
 「まもなく、ブーケエクスプレスは最初の駅『イェーリア駅』に到着致します。駅では皆様、出来るだけ単独行動を取らず、団体行動でお願い申し上げます」
 『イェーリア駅』というワードに、搭乗人物達は首を傾げたり、どんなところなのか心を踊らせていた。
 「あの駅はそうだね、花売りのお姉さんがいるんだけど、そこで買った花を誰かにプレゼントすると、とてもいいことがあるって聞いたなぁ」
 錆びたランタンから、メイズがしみじみと呟く。
 「お花!お金あるかな
 冬真がごそごそとポケットを漁ってみると、そこにはなんと、入れた覚えのない二千円札がねじ込まれていた。
 「あれ?でも、これでお花買えるね!」
 花瓶に飾れる!と、冬真が嬉しそうに跳ねる。
 「誰かわかんないけど太っ腹だね~ありがたや~」と、りんごがいう。希更も「おおー!誰にあげようかなぁ……!」と、楽しそうにしている。
 「ふふっ、贈ればきっといいことがあるから、楽しみにしててね。ともあれ、どんなところで何があるかは、着いてからのお楽しみだね。くれぐれも皆、はぐれないようして欲しいのと、発車時刻に乗り遅れないようにしてね」
 「お花か~絵の題材にいいかも」
 「絵の題材かぁ、いいね。あそこはとてもいい景色だから、ぜひスケッチしにいってほしいな」
 りんごの一言にメイズがそれだけいうと、錆びたランタンの灯りが消えた。それと同時に、走行中のブーケエクスプレスの速度が、緩やかに落ちていく。
 「到着のようですね」
 リズットがそういうと、搭乗人物達は、食堂車の窓から外を眺めた。
 そこにあったのは、森に囲まれた小さな町。
 見たことも行ったこともないのに、何故かそこはとても懐かしい風景をしていた。


 「それでは、発車時刻前に汽笛を鳴らします。それまでわたくしは車内か駅周辺で待機しておりますが、よほどのことがない限り、皆様は列車には戻れません。あらかじめ、ランタンと必要最低限のものを御持ちになってから、お出かけください。それでは」
 リズットはそういうと、錆びたランタンを片手に何処かへと向かった。リズットが何処かへと行くと、列車は停車した。
 「カバンと、さっきのお金と、ランタンお金はカバンに入れて、準備できた!」
 「絵筆とか、あと何がいるかなぁ?あ、お金か」
 「わぁ〜楽しそう、すごい、素敵!!!目移りしちゃいそう〜!っと、荷物の確認しておかないと
 搭乗人物は食事を終えると、ランタンと必要最低限の荷物を持って、列車を降りていった。
 


 ぞろぞろと下車していく搭乗人物達。搭乗人物達が列車を降りていくのを、リズットは窓から眺めていた。
 「リズットさーん!!!行ってきまーす!!!」

 “皆楽しそうでいいね”

 列車に向けて手を振る搭乗人物達を窓から見送ると、全員ちゃんとランタンを持ったかの確認をはじめた。
 全員がランタンをもって降りたのを確認すると、一部屋一部屋の掃除を始めた。てきぱきと掃除を進め、最後の一部屋の掃除を終えようとした。

 そのときである。
 
 「はろー!親愛なる、大親友のリズットくんっ!」
 
 ほんのわずかに幼い声をした少女に名を呼ばれ、リズットは振り向いた。

 しかし、そこには誰もいなかった。

 代わりにリズットの足元に、白い毛並みの可愛らしいハムスターが一匹。
 
 「……
 
 リズットは黙ってそのハムスターを拾いあげると、また何処かへと向かっていった。


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