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【声騎士小説】鋼と若さは曲げられぬ

明咲千寿
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2019-03-21 18:26:14

本作は #声で勝ち取る騎士戦争 の二次創作です。
登場/チヒロ・クモヤス(名前のみ)・食堂の女将さん(モブ)

声で勝ち取る騎士

石山瑞角さん(@zuishiyama)が発足させた声が主体のTwitter企画

登場人物

チヒロ
https://scraiv.com/n/1548970272905
レッドバルディッシュ魔法兵団第2部隊『紬の一手』副隊長
性別不詳な容貌をした気さくで気の良い女性。
柔軟に対応出来る、冷静もあるのだが、許容出来ない事があると意固地な態度を取る青臭いところがある。

クモヤス

※名前のみ登場
チヒロが所属するレッドバルディッシュ魔法兵団第2部隊『紬の一手』の隊長



本編

――チヒロはクモヤスが嫌いだ。

それはどちらかに非がある訳では無いし、ましてや、クモヤスが隊長として一部隊を預かる事に対して不信を抱かせるような技量であるという訳もない。

寧ろ、その点に於いては誰よりも信頼に足る男だと、副隊長として数多の戦場を駆ける中で嫌という程に思い知らされた。


だが、背中を任せるには決定的と言っていい程、騎士としての在り方、信念が異なり過ぎる。

チヒロにとって、騎士とは生き方である。
叙されるよりも前、志すや否やの幼い砌より、騎士とは何かと道を説かれてきた。

騎士であるからにはその生き様によって人々に正しき道を示さねばならぬ。

/*/*/*/*/*/

「アンタ、なんて顔してるんだい」

我知らずと暗澹とした思考に落ちていくチヒロの意識を掬い上げたのは、気負った様子もなく、湯気立ち上る、出来たての定食を並べた盆を抱えてやってきた女将だった。

レッドバルディッシュの本拠地ほど近いここは、チヒロが副隊長になる以前から通い詰めている食堂である為、舌に店の味が馴染めば馴染む程、女将とも顔を合わせる事となる。

いつ知れずと軽口を叩き合うようになった女将の言葉にチヒロは肩を竦めて、大袈裟なため息で応えた。

「生憎、自分の面は見えないもんでね」
「そりゃそうだ。うちも鏡を貸す程、気前の良い商売じゃあないしね。飯以外に出せるものはないよ」
「美味い飯が出れば充分だろうよ。……興味もない事に口を挟むのは女将さんの悪い癖だと思うがなあ」
「興味は無くとも、しみったれた顔されちゃ飯が不味くなるだろう?」

ほら、と女将はチヒロに対し、ガサツに盆を差し出す。

「得体もない事をタラタラ言い募るのはうちのクソヤスだけで良いんだがなあ……ご忠告痛み入るってもんだ」

女将から盆を受け取りながら、歪めた顔のまま器用に口の端だけを釣り上げてチヒロは微かに空気を震わせるような笑いを零し、目を細めた。

「まあ、なんだ、美味い飯でも食って、気分転換しようって時にする話じゃねえよなあ」
「どんな時だってするんじゃないよ!」
「それは無理。だって嫌いだし」
「アンタもクモヤス隊長も悪い人じゃあないんだけどねえ……なんだってそう目の敵にするんだか」
「それはあちら様に聞いてくれ。俺は悪くない」

今日も美味そうな飯をありがとよ。
と、無理やり話を切り上げ、逃げるように礼を言うと、チヒロはサッと踵を返し、腹を満たさんと空いている席を求め、昼時の賑やかな店内へ足を踏み出したのだった。


/*/*/*/*/*/


――チヒロはクモヤスが嫌いだ。

それはどちらかに非がある訳では無いし、ましてや、クモヤスが隊長として一部隊を預かる事に対して不信を抱かせるような技量であるという訳もない。

正しくなければ騎士ではない。
己が正しいと思う騎士道で無くば認められぬ。

胸に抱く正しき道から逸れた男と素直に肩を並べて戦えぬチヒロは、立派な騎士を志し、またそう呼ばれようとも、人としては成熟し切っておらず、青いのだろう。

それをチヒロ自身が自覚するのはいつの事か。

END

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