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【声騎士夜会小説】謀りは夜陰に、月は酒の水面を揺らさず

明咲千寿
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2019-03-21 18:49:54

『#声で勝ち取る騎士戦争』内企画、『#麗しき夜会に花は咲く』投稿作品
登場/チヒロ

声で勝ち取る騎士戦争とは


石山瑞角さん(@zuishiyama)が発足させた声が主体のTwitter企画
略称・声騎士

麗しき夜会に花が咲く


かせいさん(@14k_sou)が主催する『声で勝ち取る騎士戦争』内の企画
通称・夜会
※企画期間終了

登場人物
チヒロ
https://privatter.net/p/4392037
レッドバルディッシュ魔法兵団第2部隊『紬の一手』副隊長
性別不詳な容貌をした気さくで気の良い女性。
柔軟に対応出来る、冷静さもあるが、許容出来ない事があると意固地な態度を取ってしまう青
臭いところがある。



本編

草木も眠るような夜更け。常であれば、レッドバルディッシュ、魔法兵団第2部隊『紬の一手』副隊長チヒロの私室に唯一ある窓からは見事な月が顔を覗かせる筈が、夜空を見ても今日は星々が輝くばかりで月の影すら見当たらない。

「月見酒と洒落こもうかとおもったんだがなあ……アテが外れた」

右手に酒瓶、左手に杯。
よっこいせ。と、自慢の景色を特等席で眺める為にと珍しく拘った長椅子に腰掛けると、対になるよう設えられた卓へ酒瓶を置き、杯も置く。
たまには月のない空を眺めて飲むのもいいかと夜風によって、頬をさやさやと撫でる髪をチヒロはゆっくりとかき上げると、耳の裏をなぞるようにして掛けた。

「休戦期間はどうもぼんやりしやがる」

寒さが極まる頃、チヒロの所属するレッドバルディッシュを含めた騎士団が三つ巴する戦争が一時止む。
それは雪で行軍が敵わないという理由もあるにはあるのだが、正解ではない。

チヒロが入団するよりも昔は、相手も二の足を踏むこの時期こそ、絶好の勝機だと、積極的に出撃を繰り返していたようだが、激戦区となった近隣諸領の領主ならびに、そこに住まう農民達からの強い要請に折れる形で三騎士団は協議の末に種植えの時期にはいかなる戦況であろうと一切の戦闘を控えるようにとの休戦条約を締結させたのだそうだ。

生憎と件の条約が締結した頃にはチヒロが生まれていたかも怪しい。

その当時を伺い知ろうにも昔の事で機微を知る事が出来るだけの資料も残っていない。

とはいえ、何故領主が、農民が、そんな訴えを起こしたのかは火を見るよりも明らかだ。
その事について不信は無いし、むしろこの休戦期間は英断であるとも思っている。

民を庇護する事こそが騎士の第一義である。
剣を交え、戦う事も職務ではあるが、騎士が騎士たるありようはその高潔で献身的な慈愛の精神の元、弱気を助け、悪しきをくじく、行動で以て示されるべきものだと幼い頃から教えを受けてきた。

だが、それとこれとは別の話だ。
眉間に皺が寄るのを感じながら、ふーっと細く息を吐く。
これではいかん。

「……飲むか」

取り組みには大いに賛同する。
けれども戦う事が当たり前のものとして魔法を行使し、時には剣を振るう日常を送っている身にとっては手持ち無沙汰であり、平和に慣れない身にはどうにも居心地が悪く、ぼんやりとしてしまう。

「そういえば、そろそろか古城の夜会は」

休戦の証だとして中立地帯に領を構える侯爵家の協力の元、侯爵の居城を借りて催される三騎士団合同の夜会は一切の武器の持ち込みを及び戦闘を禁じているだけでなく、ドレスコードである黒い仮面で顔を隠し、所属を明かさぬ事、また気付いたとしても触れないのが規則である。

「――柄でもねえが、こうして無為に休戦期間を過ごすよりは良いか」

酒盛りのはずが、栓すら開けられていない酒瓶には、ニヤリ、と不敵な三日月が写り込むのだった。

END

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明咲千寿 @asaki36
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