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彼の話

全体公開 1263文字
2019-03-26 01:10:44

「六道の辻に迷うなよ」未通過× / 歌仙兼定(PL:このりさん)

Posted by @ara_neige

END1 後日談

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 それでは、その後のあなたの家族の話をいたしましょう。

 あの夢の中で見せた幼げな印象が抜ければ、そこにいるのは、主を転々と変えながら、千年以上の年月を経たふるつわものの太刀でございます。軽妙ではあるが老練の鋭さがある、酸いも甘いも見てきたモノとして見せる振る舞いや物言いは、いずれ家族に馴染むや、その支えの一つとなっているでしょう。

 そんな彼ですが、矢立を持ち歩き、折に触れて歌を詠む姿が見られます。

 膨らみゆく花の蕾、日に日に濃くなる緑陰、新しく迎えた家族への慶賀……といった、喜びある変化についてだけでなく、常であっても気付いていなかったことごとや、あるいは悲しみ苦しみについても。彼はそのように様々な、小さなことから大きなことまでも、自らの心の動きを歌に託し、書き留めているようでした。

 そうして溜めたそれらを、驚きを分けてやろうとあなたにもしばしば披露する。その笑みは、間違いなくあなたが宿題を課した青年のものなのです。

 言葉にすれば得た喜びはいつまでもそのまま残り、そして火傷のように胸がじくじくと痛むほどの悲しみであっても、こうして歌にすれば和らぐものがあると、そう笑う顔は。

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 のちのち、あなたの本丸も年若い刀が増え、彼も部隊では教える立場として振る舞うこともたびたびあるようになりました。

 しかし彼は、この歳になってもまだまだ学ぶところは多いのだと言います。人の傍に在って知識として持っていても、人としての姿を得たのはまだ最近であるからして、自ら体験することは大事なのであると、新しく迎えた家族に伝えることもあるでしょう。

 またほっそりした見目からは想像のつかぬ、大胆不敵な攻め手を得意としている彼は、その名の通りの白い衣を纏って戦場を駆けます。特に敵の卑劣なはかりごとにはひやりとした怒りを見せ、奇襲にも礼はあるのだと打ち破ることもよくありました。その様は色も相まってまるで冬を体現するかのようです。

 しかし、そのような敵に対してであっても倒した後に手を合わせてみせたり、家族が傷ついてしまったときには、その白い衣を躊躇わず包帯代わりに使ってしまうという、慈しみや優しさもありました。自分ではない相手のことを思うことは大事なのだと彼は言います。


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 さて、本日も彼はマスタードのきいた彩のよいハムサンドを頬張っております。彼がサンドイッチを好み、色々と買い求めてみたり、あるいは自ら材料を集めて作って研究してみたりしているというのは、この本丸では皆が知るところでありました。そして、とりわけハムサンドを好物としているということも。

 平安に産まれ、やんごとなき御方の持ち物として過ごした彼が、いずれのときにそれを好物としたのか――そう不思議がる刀は多く、また審神者も覚えがないと首を捻っておりますが、それを知るのは今のところ、彼とあなただけなのでしょう。

 そして、誰の作ったハムサンドを一等好みとしているのかも……


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