幸福論

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2019-04-06 17:10:12

とある男の人生について

人間というのは決して平等なんかじゃあない。

多分それは恐らく、この世界の多くの人間が理解している事実だ。
人間は不平等。わかっていて、飲み込みながらとりあえずは生きていく。そういうものだと思う。

そんなことを言う俺も、まぁ、そういうものだと思っている。
金持ちも貧乏人も、美人も不細工も、そこに生まれてしまった以上スタート地点はいくら文句を言っても揺るぎようがない。
文句を言うべき相手もいないので、こればかりは愚痴るしかない事だとも思う。

ただ、それよりも俺が不公平だと思うのは人生が1回きりということだ。
せめてスタート地点が不平等なら、何回かやり直しくらいさせてくれてもいいんじゃないだろうか。
正解のルートを気づいたときには手遅れで、間違えたあとは取り返しも保障もない。
俺はいつも思う。

誰だって思うんじゃないか。
自分があの時別の選択をしていれば、とか。
自分がもう少し金のある家に生まれていたら、とか。
自分がもう少し顔が整っていたら、とか。
自分がよその家に生まれていたら、とか。
隣の家の芝を羨むみたいに、隣の家で笑う誰かを羨ましく思う日は誰にだってあったと思う。

だから、切っ掛けは覚えていない。
ふと、『羨ましいな』と思ったことが全てだ。
道で幸せそうに笑う誰かの幸福と安心の端っこを、少し味わってみたくなっただけにすぎない。

そこには俺のものではない『人生』があった。
平穏と幸福があった。
少し辛いことがあっても、それも乗り超えた先に喜びがあった。
なるほど、これが『人生』か、と。
このままずっと平和に暮らしていければ良いのに、と思った。

が、どうも長続きしない。
何故かはわからないが、俺の『人生』はどこかで突然に躓くのだ。
仕事で失敗したとか。人間関係が崩れたとか。ちょっとした事件に巻き込まれたりとか。勘付かれたこともあったか。
最近じゃ異種平行世界まで来る始末。
そういうのに巻き込まれたくないからわざわざマビノギオンまでやってきたっていうのに。
何かに命を脅かされる不安を抱えて生きるなんて、そんなのは俺の望んだ人生じゃあない。

溜息を吐く。
ここの暮らしは結構気に入っていたのに。
ままならない。
けれども、それも人生だ。
人の数だけ人生はある。
面倒ごとは、他の誰かに任せればいい。
根気良く探して、取り替えて行けばその中に、いつかきっとある筈だ。

穏やかに、幸福に、平和に。
過ごしていける人生が。

それを思うと少し前向きになれる。
さぁ、もうひと仕事。
それでこの街とはお別れだ。
次はどんな人生に出会えるだろうか。

人間は平等じゃない。
だからこそ、それぞれ違った楽しみがある。

人生って、良いもんだな。


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